【先取りベストセラーランキング】70年代ロックバンドの物語に注目! ブックレビューfromNY<第41回>

NY在住のジャーナリスト・佐藤則男が紹介する、アメリカのベストセラー事情と、注目の一作をピックアップするコラムの41回目。今回は、映画「ボヘミアン・ラプソディ」の大ヒットなど、70年代のロックンロールへの関心が高まっているなかで登場した小説を紹介します。

<第41回>70年代に人気絶頂で突然解散したロックバンドの「証言集」

Daisy Jones & The Six 書影1
Daisy Jones & The Six/ by Taylor Jenkins Reid
Ballantine, 2018.368ページ. US$27.00

今月のベストセラー事情

今月の「ニューヨーク・タイムズ ベストセラー事情」は、ハードカバー・フィクション部門のトップ10 (2019年4月7日の週)[1]を紹介する。

1.Where the Crawdads Sing

By Delia Owens
Putnam

1969年、ノースカロライナ州の静かな町でチェース・アンドリュースの死体が発見された時、地元の人たちは、湿地帯で一人暮らしをし、「湿地帯の娘」と呼ばれていた若い女性を犯人だと思った。
(ベストセラー29週目)


2.Run Away

By Harlan Coben
Grand Central

薬物中毒で、暴力的なボーイフレンドを持っていた彼女は姿を消した。セントラルパークでギターを弾いている彼女を偶然目にしたあなたは、親として、彼女を家に引き戻そうと追いかけ、そして危険な世界に足を踏み入れてしまった。
(ベストセラー初登場)


3.Celtic Empire

By Clive Cussler and Dirk Cussler
Putnam

エルサルバドルでの国連の科学者チームに対する殺人、デトロイトで起きた水路での事故、ナイルの遺跡への攻撃、これら一連の出来事は、関連性があるのだろうか? 答えは3000年前のエジプトの王女の物語の中に? 『ダーク・ピット』シリーズ25作目。
(ベストセラー初登場)


4.Wolf Pack

By C. J. Box
Putnam

禁猟区監視員としての職を取り戻したジョー・ピケットは、ドローンが野生動物を殺していることを知った。そしてそのドローンの背後にいる謎の富豪の孫と自分の娘のルーシーが付き合っていることを知った。『ジョー・ピケット』シリーズ19作目。
(ベストセラー2週目)


5.Cemetery Road

By Gleg Iles
Morrow

ジャーナリストになったマーシャル・マキューアンは父親が不治の病にかかったのでミシシッピーの故郷の町に戻ってきた。そして経済的に疲弊したこの町で、二つの殺人事件が起こった。
(ベストセラー3週目)


6.Daisy Jones & The Six

By Taylor Jenkins Reid
Ballantine

裕福な両親を持ちながら孤独で、ロックスターやバンドのグルーピーだったデイジー・ジョーンズと、駆け出しのロックバンドの「ザ・シックス」はユニットを組んだことで大ブレイク、一気にヒットチャートを駆け昇っていった。そして、その人気がピークに達した1979年7月、ユニットは突然解散した。なぜ?
(ベストセラー3週目)


7.The Silent Patient

By Alex Michaelides
Celadon

アリシア・ベレンソンは有名な画家で、今を時めくファッション・フォトグラファーの夫を持ち、ロンドンの一等地に住み、幸せの絶頂のように見えた。しかしある夜、帰宅した夫のガブリエルの顔面に、アリシアは5発の銃弾を撃ち込んだ。そしてその後、彼女は一言も話さなくなった。犯罪心療内科医のセオ・フェイバーはアリシアの治療をすることになった。
(ベストセラー7週目)


8.The Island of Sea Women

By Lisa See
Scribner

韓国済州島で子供の時から親友だった二人の海女。しかし、大人になるに従い、二人の友情にも亀裂が入るようになった。日本に支配されていた1930年代から、第二次大戦を経て現代にいたる時代背景の中を生きてきた二人の海女の物語。
(ベストセラー3週目)


9.Silent Night

By Danielle Steel
Delacorte

エマは強力なステージ・ママを持ち、9歳の時にはすでにテレビ・スターだった。しかし、不幸な出来事をきっかけに記憶を失い、しゃべることもできなくなっていた。精神科医の伯母の助けでエマは徐々に自分取り戻していった。
(ベストセラー3週目)


10.The Chef

By James Patterson with Max DiLallo
Little, Brown

ニューオーリンズ警察の刑事カレブ・ルーニーは、夜は移動式屋台の料理人として人気者だった。ところが、あろうことか彼は殺人犯の汚名を着せられてしまった。『カレブ・ルーニー』シリーズ第1作目。
(ベストセラー5週目)


ベストセラー29週目の“Where the Crawdads Sing” は今月も1位の座を保っている。その他は“The Silent Patient”が先月からベストセラー・リストに留まっている以外は、すべて1か月以内に出版された新しい作品ばかりだ。

今月は6位の“Daisy Jones & The Six”を取り上げたいと思う。映画「ボヘミアン・ラプソディ」の大ヒットなど、70年代のロックンロールへの関心が高まっているタイミングで、この作品は3週間前、ベストセラー3位で初登場した。

[1]“A version of this list appears in the April 7, 2019 issue of The New York Times Book Review. Rankings reflect sales for the week ending March 23, 2019. Lists are published early online.” (このベストセラー・リストは2019年4月7日のニューヨーク・タイムズ紙ブックレビュー欄に掲載。リストは2019年3月23日で終わる週の売り上げをもとに作成されている。)

HKT48田島芽瑠の「読メル幸せ」第12回
【祝・本屋大賞受賞/著者インタビュー】瀬尾まいこ『そして、バトンは渡された』