【NYのベストセラーランキングを先取り!】『ダーク・ピット』シリーズ最新作! クライブ・カッスラーの息子、ダーク・カッスラーが米中対立の世界を描く冒険活劇 ブックレビューfromNY<第73回>
NY在住のジャーナリスト・佐藤則男が紹介する、アメリカのベストセラー事情と、注目の一作をピックアップするコラムの73回目。今回は、2020年2月24日にこの世を去った作家・クライブ・カッスラーの息子が、父の跡を継ぎ、単独著者として上梓した壮大な冒険サスペンス小説を紹介します。
<第73回>米中対立の世界で、台湾、チベットを舞台に繰り広げられる冒険活劇
Clive Cussler’s the Devil’s Sea/ by Dirk Cussler
Putnam, 2021.432ページ. US$29.00.
今月のベストセラー事情
今月の「ニューヨーク・タイムズ ベストセラー事情」は、ハードカバー・フィクション部門のトップ10 (2021 年12月5日の週)[1]を紹介する。
1.The Judge’s List
By John Grisham
Doubleday
レーシー・ストルツは犯罪組織から膨大な賄賂を受け取っている判事を捜査中に襲われて殺されそうになった。3年後、彼女は、20年前の未解決殺人事件で父を殺され、犯人を追い続けている女性ジュリー・クロスビーと知り合った。Whistler(警鐘者)シリーズ2作目。
(ベストセラー5週目)
2.Mercy
By David Baldacci
Grand Central
FBI捜査官アトリー・パインは、6歳の時に誘拐され、その後消息がわからない双子の姉妹マーシーの行方をずっと探していたが、ついに生きている証拠をつかんだ。「アトリー・パイン」シリーズ4作目。
(ベストセラー初登場)
3.The Stranger in the Lifeboat
By Mitch Albom
Harper
船の爆破事故の後、救命ボートに乗って海を漂っていた9人は、海中から一人の男を助け上げた。その男は「私は神である」と言った。
(ベストセラー3週目)
4.The Wish
By Nicholas Sparks
Grand Central
1996年、16歳の時、マギー・ドーズは家族や友人と離れてノースカロライナ州の田舎の村で叔母と暮らすことになった。孤独だったマギーは知り合った青年ブライスの影響で写真の魅力に目覚め、2019年には有名な写真家になっていた。しかし、マギーはその年のクリスマス、深刻な病魔に侵されていることを知った。
(ベストセラー8週目)
5.The Lincoln Highway
By Amor Towles
Viking
図らずも殺人事件に関与してしまい、青少年更生施設で1年間働いた後、故郷のネブラスカに戻ったエメット・ワトソンは、乗ってきた施設の車のトランクに隠れて逃げ出してきた2人の友人と旅をする羽目に陥った。
(ベストセラー7週目)
6.The Dark Hours
By Michael Connelly
Little, Brown
ハリウッドで、大晦日のカウントダウンの大騒ぎの最中、男が銃弾に倒れた。この事件が過去の未解決殺人事件と関連していることに気付いたロス市警刑事ルネ・バラードはハリー・ボッシュと共にこの新旧の事件の謎に迫った。「ハリー・ボッシュ」シリーズ23作目。
(ベストセラー2週目)
7.Better off Dead
By Lee Child and Andrew Child
Delacorte
さすらい者のリーチャーは、消息不明の双子の兄(弟)を探しているFBI捜査官ミカエラ・フェントンを助ける羽目になり、危険な男デンドンカーを敵にしてしまった。「ジャック・リーチャー」シリーズ26作目。
(ベストセラー4週目)
8.Game on
By Janet Evanovich
Atria
バウンティ・ハンター(賞金稼ぎ)であるステファニー・プラムと同業のディーゼルは、国際的ハッカーのオズワルド・ウェンズデイを追跡した。「ステファニー・プラム」シリーズ28作目。
(ベストセラー3週目)
9.Clive Cussler’s the Devil’s Sea
By Dirk Cussler
Putnam
失われたチベット仏教の秘宝、海底に沈む極超音速ミサイルの残骸、そしてシージャックされた海洋調査船をめぐり、ダーク・ピットと相棒のアル・ジョルディーノ、そしてピットの双子の子供たちダーク(ジュニア)とサマーが大活躍する「ダーク・ピット」シリーズ26作目。シリーズの著者クライブ・カッスラーは2020年2月24日死去、息子ダーク・カッスラーは父の跡を継ぎ、単独著者として本書を上梓した。
(ベストセラー初登場)
10.Cloud Cuckoo Land
By Anthony Doerr
Scribner
コンスタンティノープルの防壁の中の女性の館で、13歳の孤児アンナは刺繡をするだけの退屈な毎日を送っていた。唯一の楽しみは、図書館で、鳥になってユートピアへ飛んでいくことを夢見たAethonのギリシャ神話を読むことだった。防壁の外には、侵略軍に徴兵された少年オーメイルがいた。そして、500年後アイダホ州の図書館では、80歳になるゼノが5人の子供たちにAethonの劇の稽古をつけていた。さらに近未来の宇宙船の中では、一人ぼっちのコンスタンスは父親から聞かされたAethonの物語を書き留めていた。時空を超えて、過去、現在、未来の4人の運命は絡み合う。
(ベストセラー8週目)
クリスマス商戦もたけなわ、プレゼント用や年末年始の休暇中の読書用に、本の売り上げ合戦が始まっている。ベストセラー・リストには、著名作家の作品や、人気シリーズ小説が勢ぞろいだ。ロングセラーのThe Midnight Library (50週目)やThe Last Thing He Told Me(29週目)がそれぞれ14位、15位にランクされているのも目を引く。
毎年12月、本を共有するソーシャルネットワーク・サイト(Social cataloguing site)のGoodreads[2] は、会員の投票で部門ごとにGoodreads Choice賞を選ぶ。本コラムで取り上げた作品も5作品が最終候補(2部門で候補になっている作品もある)に選ばれた。フィクション部門ではThe Paper Palace(9月)、ミステリー&スリラー部門ではThe Last Thing He Told Me (7月)、Harlem Shuffle (10月)、歴史小説部門ではThe Four Winds(3月)、サイエンスフィクション部門ではKlara and the Sun(4月)、 そしてデビュー小説部門ではThe Paper Palace(9月)が最終候補作品になった。12月9日に最終結果が発表され、The Last Thing He Told Meが今年のミステリー&スリラー部門のGoodreads Choice賞に選ばれた。
今月は、ダーク・カッスラーの「ダーク・ピット」シリーズ最新作Clive Cussler’s the Devil’s Seaを取り上げたい。
[1]“A version of this list appears in the December 5, 2021 issue of The New York Times Book Review. Rankings on weekly lists reflect sales for the week ending November 20, 2021.” (このベストセラー・リストは2021年12 月5日のニューヨーク・タイムズ紙ブックレビュー欄に掲載。リストは2021年11月20日で終わる週の売り上げをもとに作成されている。)
[2]Goodreadsは2006年にOtis Chandlerと Elizabeth Khuriによって設立され、2013年にAmazon.comによって買収されたSocial cataloguing サイト。2019年には会員数は9千万人に膨れ上がった。
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