【茨城県民マンガ】だっぺ帝国の逆襲 〈第5回〉そこはコーンフレークじゃなくて納豆でしょ!? 漫画/佐藤ダイン 監修/青木智也
茨城県の名物といえば、誰がなんと言っても納豆。ご飯にのせて食べる納豆だけでなく、酒のつまみにちょうどいい「そぼろ納豆」や、おやつがわりに食べられる「干し納豆」などがあり、茨城県人は納豆がなければ生きていけないのだ。とくに「水戸納豆」は全国に名をとどろかせており、「納豆は水戸から始まった」という誤解を生む事態に。そこでダイゴたち3人は、水戸納豆のルーツに迫っていく。
みんな、納豆食ってっけ?
ナットウキナーゼ、摂ってっけ?
血栓や高血圧が予防できて、
さらに美肌効果もあるっつーんだから
はっきしいって、そんじょそこらのサプリは裸足で駆け出すぐれーに
無敵の圧倒的完全食だっぺよ。
えっ、くさい?
人間の食べるものじゃない?
さすがに納豆嫌いで知られる四国や関西の人は遅れてんなやぁ~。
じつは健康寿命の短さと関係あんじゃねーの?
健康寿命ワースト11のうち、四国・関西[厚生労働省調べ。2016年]
男性――大阪(39位)、奈良(41位)、高知(42位)、
和歌山(43位)、徳島(44位)、愛媛(45位)
女性――和歌山(37位)、兵庫(39位)、奈良(41位)、
滋賀(42位)、徳島(43位)、京都(44位)
わりぃごどはいわねーがら、1回本場の納豆を食べでみでくろよ。
クセんなっから!
マンガ中の記号(※1)などは、マンガのあとに出てくる“県民も知らない茨城の秘密”「だっペディア」の番号と対応しています。
第5回
マンガに登場するローカルな用語などを、徹底解説!
これであなたもイバラキアン(茨城人)の仲間入りだ!
■(※1)納豆
朝食の定番・納豆。おいしいだけでなく健康食品として注目されていることはご存じのとおりで、免疫力向上、血栓や高血圧の予防、アンチエイジングなどの効果があるといわれている。そういえば健康番組で納豆を取り上げると翌日スーパーで売り切れ……なんてこともあったなぁ。
ところで、茨城では納豆を「なっとまめ」といったりするが、ま、待てよ!……漢字で書くと「納豆豆」。文法的に「ナットく」できねーなぁ(苦笑)
■(※2)そぼろ納豆(しょぼろ納豆、おぼろ納豆)
間違えねーでくれっか。「そぼろ」っつっても「鶏そぼろ」は入ってねーかんなっ! 醤油で味付けした「切り干し大根」が入ってんのよ。納豆だけとはまた違った食感になって、ごはんのおかずにも、酒のつまみにもなる、水戸を中心にした地域のソウルフードなのだ。
茨城では普通のスーパーでもコンビニでも売られているが、県外ではまず見かけない。茨城出身者が上京すると、スーパーにそぼろ納豆がなくて大きなショックを受けるケースが多数見受けられるので、注意が必要だ。
■(※3)干し納豆
こちらは名前のとおり納豆を干したもの。そぼろ納豆はどちらかといえば水戸が中心で、ダイゴの住む県西地区ではそれほど浸透していないが、干し納豆は水戸だけでなく八千代町やつくば市などにも有力メーカーがあり、県西や県南でもよく食べられている。
もともとは保存食として、お茶請けや酒のつまみとして食べられていたが、納豆の栄養や効能がそのまま残っていることから、最近では美容やダイエットに効果がある手軽な発酵食品としても注目されている。
ちなみに味や栄養だけでなく、ニオイもちゃんと残っているのが茨城の干し納豆の特徴。納豆が苦手な関西人にはちっと無理だっぺな。こんなすんばらしぃ食材なのに、もったねごど~(もったいないこと)。
ちなみにJALは国際線ビジネスクラスなどの乗客に、「ドライなっとう」を提供していた。小さな袋入りで、おやつやつまみとして人気だったが、残念ながらいまは配られていない。でも、CAさんに頼めば出してくれる可能性もあるので、ダメ元で聞いてみては?(なお、国際線エコノミークラスや、国内線のファーストクラス以外は対象外)「なんだ、セレブだけが対象か」とがっかりする必要はない。JALのオンラインショップやAmazonでも購入することができるので、おためしあれ。
残念ながら茨城県産の納豆は使われていないけど。
■(※4)水戸線が開通
水戸線は水戸に到達した最初の鉄道路線で、1889(明治22)年に小山~水戸間が開通した。都心から小山まではすでに東北線があったので、これで首都圏から水戸までをつなぐ鉄道網ができたことになり、観光需要が一気に増えたとか。常磐線よりも先だったんだな。
ちなみに常磐線が首都圏までつながったのが1896(明治29)年。水戸線の一部だった友部~水戸間は常磐線に組み込まれてしまったため、水戸線は小山~友部に短縮。そういうわけで、「水戸線という名前なのに水戸を通らない」という少々ごじゃっぺな路線になっている。
■(※5)水戸市
水戸線が開通したのと同じ年(1889年)、日本で初めて市制が施行され、全国で31の「市」が誕生。水戸もそのときに「水戸市」となった。そういえば郵便番号も「310」からはじまっぺよ! 偶然にしては出来過ぎだなやぁ~。
「水戸」という地名の由来は、「古代から海や川の水の出入口は『みと』または『みなと』と呼ばれていました。水戸の場合も、那珂川と千波湖との間に突き出した台地の先端が『みと』と呼ばれた……」(水戸市ホームページより)とのこと。室町時代の1400年くらいにはすでに「水戸」と呼ばれていたそうな。
ここでクイズです。
Q.県庁所在地と県名が違っているところをすべて答えてください
(答えはいちばん最後に)
■(※6)偕楽園
1842(天保13)年、第9代水戸藩主・徳川斉昭によってつくられた巨大な庭園。金沢の兼六園、岡山の後楽園とともに「日本三名園」のひとつとされる。広さは300ヘクタールで、三名園中ダントツ。ニューヨークのセントラルパークに次ぐ、世界第2位の都市公園(ということは日本一だっぺ)という触れ込みもあるが、これは千波公園や緑地帯も含んだ「偕楽園公園」の面積の合計である。
偕楽園といえば梅林。園内には約3000本の梅の木が植えられており、毎年2月から3月の「梅まつり」の時期には、あたりは甘酸っぱい香りに包まれる。駅や駐車場から近い東門から入る人が多いが、表門(黒門)とよばれる正式な入口は北側にある。ここから入ることで本来の世界観が味わえる仕掛けになっているので、ぜひ体験してみてほしい。
また、偕楽園には日本初のエレベーターや噴水があることは意外と知られていない。日本エレベーター協会によると、1842年に偕楽園内にある好文亭に設置された食事運搬用の運搬機が日本初のエレベーターとされている。手動だけどね。
日本初の噴水は金沢の兼六園のものというのが定説だったが、偕楽園の「玉龍泉」のほうが古いともいわれている。まあどっちも古いっつーことでいがっぺな。
■(※7)納豆展示館
笹沼五郎商店の2階にあり、納豆の歴史や作り方などを学ぶことができる。見学は無料なので、納豆好きはチェックすっぺよ。
他に納豆の資料館としては、「おかめ納豆」で知られるタカノフーズ(小美玉市)の納豆博物館が有名。納豆工場と合わせて約90分で見学できる。
■(※8)天狗
天狗納豆のマークは、天狗のような立派な商品にしたいという思いと、水戸の「天狗党」(過激な尊王攘夷派)にちなんで付けられたものだとか。
ちなみに水戸市で納豆をつくっている製造業者は現在4社。その4社とも、藁で包まれた藁苞納豆をつくっている。
■(※9)JCOの事故
1999年、茨城県東海村の核燃料加工会社JCOが起こした臨界事故。正規の作業マニュアルにしたがっていなかったため、炉ではないところで核分裂連鎖反応が発生。建物の外にも放射線が漏れ出てしまった。この事故の影響で、茨城の農作物や水産加工品を敬遠したり、安く買い叩いたりする動きが数年間続いた。
それから約10年が経過し、ようやく事故の記憶が薄れたと思ったら、2011年に東日本大震災が発生。茨城はまたも風評被害に悩まされることになる。
でも、茨城県民は納豆のように粘り強いから、どんな逆風にも負けねぇべ!
■(※10)「家計調査」の「消費支出額」
本場のはずの水戸市が、納豆の消費支出額でなかなか1位を取れないのだが、その元になっている総務省の「家計調査」ってどんな調査なんだろう。総務省統計局のホームページによると、「無作為に選定された調査世帯で6か月間、毎日のすべての収入と支出を家計簿に記入して」もらい、「日々の収入・支出、購入数量」などを報告するらしい。
「何個買っていくらだった」という報告だから単位は金額。つまり単価が高いと消費額が増え、たくさん買っても単価がべらぼうに安ければ消費額は少なくなる。
つまり「水戸市民より盛岡市民のほうが納豆に金を使っている」ことになっても、「盛岡市民のほうが納豆を食べている」ことにはならない。水戸市民のほうがたくさん食べている可能性だってあるわけだ。
でもまあ、名実とともに1位を獲得したいものだ。もし私が水戸市民なら、調査対象に選定されたら、朝昼晩と納豆を食べるぐらいのことはやるつもりである。だって盛岡市民や福島市民よりも、水戸市民のほうが絶対的に納豆の重要度は高いでしょーよ! あっ、引っ越す予定はとくにないんだけど(汗)。
■(※11)ネギ
「だっぺ帝国の逆襲」第3回で、五月の実家が坂東市にあったことが明かされたが、坂東市はネギの生産が盛んで、なかでも夏ネギの生産は全国トップである。五月の名前の由来は、もしかしたら夏ネギの収穫時期からきているのかもしれない。
ところで、一口にネギといっても関東と関西では大きく異なり、関東では白い部分がメインとなる「白ネギ」に対して、関西では主に青い部分を食べる「青ネギ」が主流。
2004年にお笑い芸人・西川のりおが「いわいねぎ大使」(当時は茨城県岩井市。現在は坂東市に合併)に任命されたが、関西出身の西川はネギ=青ネギだと思っており、じつは白ネギが苦手だったことが判明。翌年、坂東市の誕生に合わせて再委嘱された西川のりおの肩書きは「坂東やさい大使」になっていたことは、あまり知られていない。
(※5)のクイズの答え
県庁所在地と県名が違う自治体は…
北海道-札幌市、岩手県-盛岡市、宮城県-仙台市、茨城県-水戸市、栃木県-宇都宮市、群馬県-前橋市、埼玉県-さいたま市、東京都-新宿区、神奈川県-横浜市、石川県-金沢市、山梨県-甲府市、愛知県-名古屋市、兵庫県-神戸市、滋賀県-大津市、三重県-津市、島根県-松江市、愛媛県-松山市、香川県-高松市、沖縄県-那覇市
この続きは、10月6日発売の単行本『だっぺ帝国の逆襲』でお楽しみください。
作者よりひとこと+プロフィール
今回のお題:「私のソウルフード」
■漫画:佐藤ダイン(サトウ/ダイン)
やっぱり「ほしいも」ですかね。馴染みのある言い方だと「かんそういも」って呼び方をしていました。とくに子供の頃におやつ替わりに食べてましたね。そのままでも美味しいんですが、ストーブなどで少し焦げ目を付けて食べるのもうまい(火傷注意)!
1984年、茨城県大子町出身。芸術系の大学在学中から漫画誌に投稿を続ける。サラリーマン生活、漫画家のアシスタントを経て、『桃色な片想い』(『月刊!スピリッツ』)でデビュー。
■監修:青木智也(アオキ/トモヤ)
お祭りの露店などで昔から売られているオレンジ色の「煮イカ」ですね。これ、茨城では定番中の定番なんですが、じつは茨城と栃木にしか売っていなくて、
他に愛知と静岡に「煮するめ」という名前で売っているだけなんですって。いやどうもっ!
1973年、茨城生まれ。WEBサイト「茨城王(イバラキング)」を立ち上げるかたわら、常総ふるさと大使、いばらき統計サポーター、茨城県まちづくりアドバイザーなどとしても活動。
初出:P+D MAGAZINE(2020/02/03)