文学的「今日は何の日?」【6/15~6/21】
あの名作が世に出た日。
憧れのヒロインの誕生日。
かの大作家の失恋記念日。
……そう、毎日が何かの記念日です。さて、今日は何の日でしょうか。
6月15日から始まる1週間を見てみましょう。
6月15日
菊池寛『真珠夫人』で、瑠璃子の父・唐沢光徳への債権が荘田勝平に譲渡される
真珠のように気高く美しい男爵令嬢・唐沢瑠璃子が、男を弄ぶ妖婦となってサロンに君臨する姿を描き、空前の人気を得た、菊池寛の『真珠夫人』。成り上がりの貿易商・荘田勝平が政財界の重鎮を招いて開催した園遊会に、恋人の子爵令息・杉野直也と出席した瑠璃子は、荘田の成金ぶりへの批判を本人に聞かれ、口論となります。直也も瑠璃子も貧乏華族の子、金の力を思い知らせてやる、と心に誓う荘田。やがて唐沢男爵のもとに債権者から、大正6年6月15日付けで荘田に債権を譲渡した旨の通知書が届きます。それは翌日以降も続き、ついには男爵の債務のほぼ全額が荘田に握られて……。瑠璃子の運命やいかに!?
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6月16日
20世紀文学の最高傑作『ユリシーズ』にちなんだ記念日「ブルームの日」
ジェイムズ・ジョイスの代表作であり、20世紀文学の最高傑作ともいわれる『ユリシーズ』。ホメロスの『オデュッセイア』を下敷きに、1904年6月16日の1日の出来事を、視点を変え、手法を変え、多言語を取り入れて、重層的に綴った大作です。主人公の1人であるレオポルド・ブルームにちなんでこの日を「ブルームの日」といい、ジョイスの出身地であるダブリンなどでこの日を祝っています。『ユリシーズ』は同時代の作家たちの間に賛否両論を引き起こしましたが、T・S・エリオットの詩『荒地』や、ヴァージニア・ウルフの小説『ダロウェイ夫人』など、ここから影響を受けた作品も多く誕生しています。
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6月17日
「ぼく」が風邪を引いて学校を休む――辻村深月『ぼくのメジャースプーン』
母方の家系から、ある特別な能力を受け継いだ「ぼく」の戦いと成長を描いた、辻村深月の『ぼくのメジャースプーン』。小学4年生の「ぼく」は、幼なじみのふみちゃんと一緒に学校で飼育するうさぎの世話係をしていました。6月17日、「ぼく」は風邪を引いて学校を休み、ふみちゃんにうさぎの当番を代わってもらいます。その日、ふみちゃんがうさぎ小屋で見たのは、あまりに陰惨な光景でした。ショックで心を閉ざしたふみちゃんのために犯人への復讐を決意し、母のおじ・秋山一樹から、自分のもつ能力について教えを受ける「ぼく」。はたして「ぼく」は、復讐を果たすことができるのでしょうか?
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6月18日
曲亭馬琴『南総里見八犬伝』で、犬塚信乃が村雨丸献上のため許我 へ出立
結城合戦に敗れた里見義実が安房に渡って家を再興し、仁義八行の珠と牡丹形の痣をもつ八犬士を得て隆盛を迎えるまでを描く、江戸時代の超大作読本『南総里見八犬伝』(曲亭馬琴作)。文明10年6月18日、八犬士の1人・犬塚信乃は、
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6月19日
玉川上水で太宰治と愛人・山崎富栄の遺体が発見される――桜桃忌
昭和23年のこの日、無頼派作家として今なお絶大な人気をもつ作家・太宰治の遺体が玉川上水で発見、引き上げられました。38歳という早すぎる死は、世に大きな衝撃を与えます。太宰は13日に行方がわからなくなっており、翌日には家族から捜索願が出されていました。太宰は失踪当日の13日に、愛人・山崎富栄とともに入水したとみられ、2人の体は赤い紐で結ばれていたといいます。遺体が発見された6月19日は、奇しくも太宰の誕生日。同郷の作家・今官一により、太宰の短編「桜桃」にちなんで桜桃忌と命名され、今も多くのファンが、東京・三鷹にある墓を訪れるなどしています。
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6月20日
連合政府徴兵担当官2名がマモル・ウラシマを訪問――筒井康隆「デマ」
「SFマガジン」1973年2月号に発表されるや大きな反響を呼んだ、筒井康隆のチャート小説「デマ」。厳重な言論統制が行われているなかで、ひとつの情報が姿を変えて広がっていくさまを追跡した調査書の形をとっています。2046年6月20日、連合政府徴兵担当官2名がマモル・ウラシマを訪問し、長男サダムと次男タダムの身体検査を実施、サダムのみが徴兵されました。他言は控えるように指示されたにもかかわらず、検査が乱暴だったこと、兄だけが徴兵され、自分は精神的ヨクセイに欠けるので徴兵されなかったことなどを漏らしたタダム。これが伝言ゲームのように広まって、やがてとんでもないデマに……。
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6月21日
司馬遼太郎の歴史小説『竜馬がゆく』の新聞連載が始まる
土佐の郷士の次男として生まれ、維新回天の立役者となった坂本龍馬。司馬遼太郎がその生涯を描いた長編歴史小説『竜馬がゆく』は、1962年6月21日、司馬がかつて記者を務めていた『産経新聞』の夕刊紙上で連載が始まりました。以後、1966年5月19日まで約4年間、1335回にわたって書かれます。単行本化にあたって、司馬は「日本史が所有している〈青春〉のなかで、世界のどの民族の前に出しても十分に共感を呼ぶにたる青春は、坂本竜馬のそれしかない」との気持ちで書いたと、「あとがき」に記しています。司馬の代表作であると同時に、維新の英傑としての坂本龍馬像を定着させたといわれる傑作です。
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初出:P+D MAGAZINE(2020/06/15)