ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第154回

私はどうやら
「体質的にサクセスに
向いていない」ようだ。
よって夫にドラマを見せたところで、私の不安がなくなるようなポジティブな言葉は絶対に言わないに決まっているのだ。
そこまで予見できていたのだが、やはり初のメディア化で浮かれていたのだろう、「早く自分の漫画が実写になったところを誰かに見てもらいたい」という気持ちに勝てなかった。
よって2人で改めて第1話を視聴した。
視聴中夫は無言無表情であったが、これは想定内だ、彼は「作品に対して感想がない」ことにも定評がある。
夫はエヴァファンだが、20年以上の時を経て完結したシンエヴァを見たあとにさえ何も言わなかったレベルの無感想なので、私の作品ごときに何か言うことがあるわけがない。
眉一つ動かさぬ沈黙の45分が過ぎ、第1話の視聴が終わった。
正直、面白い面白くないの言及はどうでもよかった、身内の「面白かった」など、他人の新生児に対する「カワイイ」と同じで大した気休めにならない。
それよりも、私が今までやってきたことが、このような形で実を結んだことを「頑張って来た甲斐があった」的なことを言ってほしかった。
しかし、なにせこちらが望むことは絶対に言わない人なので、そこまでは期待しすぎである。
なんなら「感想なし」のままでもよかった、そうであれば逆説的に「シンエヴァと同評価」ということになる。
しかし、夫は残念ながら私のことをどうでもいいと思って何も言わないわけではない。妻の門出を見て何か言わなければいけないと思ったのだろう。
「これは荒れそうだな」と感想を述べた。
私だけでなく、このご時世メディア化する原作者が一番避けたいと思っていそうな懸念を初手で指摘してきた。
他にも2、3感想を述べていたのだが、制作に関わった人に申し訳なくてここに書けないレベルのことなので割愛する。
だが、これは自分の期待を確実に裏切られることを予想しながら、見せた自分が悪い。
夫は職場の女性にすら「そういうこと言って欲しいわけじゃないんですよね」と、彼女みたいなキレられ方をされている男である。その実力を見誤った私の判断ミスだ。
さらに私も「そういうことを言って欲しいわけじゃないんだよね」と本人に伝えず、SNSに書いたり、原稿のネタにする陰湿な女だ。そんなコミュニケーションでは門出もまともに祝えないのである。
そして、私がそれをSNSに愚痴っているのを見たのかはわからないが、後日神妙な顔で言われたのが冒頭の一文である。
それもメディア化された原作者が放送前に少なからず抱えている不安であろう。