ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第166回

「ハクマン」第166回
原作担当の話が来た

だが、間にいる編集者がホウレンソウを怠ったせいで、作家が不信感を募らせたり、編集が原作の知らぬところで作画にパワハラを行っていたりする例も実際あるようだ。

どちらにしても、口をそろえて言われるのは「作画は立場が悪い」という点だ。

確かに、まず順番的に原作があってからの作画なので、原作や編集が作画に厳しい注文をつけることはあっても、作画が原作の方に話を変えろと詰め寄ることはあまりない気がする。

作画に関しては注文をつけすぎると「じゃああんたが描いてみろよ」という筑前煮状態になるだけなので、絵を誰かに任すと決めたなら、ある程度は作画に任せきることも大事なのだろう。

しかし最近、Xで「コミカライズの作画の方が1話描き終わった時点で、請ける前から原作がつまらないと思っていたが、描いてみてもやはりつまらなかったので降りたいと言ってきたことがある」というエピソードを見かけた。

立場が弱い作画からの反逆とも言える行為だが、普通に原作がかわいそうな話である。

せめて描いている途中でその激つまらなさに気づいてしまったなら仕方ないが、請ける前に気づいていたなら断るべきだろう。

しかし「つまらないからはじまる前にやめたい」という気持ちはよくわかる。

連載というのは数話ストックした状態ではじまるので、1話は連載開始の数か月前に描き終わっていたりするのだ。

その間、自分は何回も1話を読み返しているため、掲載されるころにはそれが面白いのかどうかさえわからなくなっているのである。

それどころか死ぬほどつまらなく見え、これが掲載されたらとんでもないことになるような気がしてならなくなるのだ。

よって「これやっぱりやめませんか」と言いたくてたまらないのだが、そういうわけにもいかず、「良くも悪くもそこまで話題にならない」という結果を受けてから、やっと落ち着いて連載ができるのだ。

だから、単著ですらなかなか言えない「やっぱやめる」を言えたその作画担当はすごい。

逆に言えば、仕事をさせてはいけない精神状態だった可能性があるので、結果的には掲載前にやめられて良かったと思う。

もし、私の原作がつまらないと思ったら作画の人は請ける前に断ってほしい。そして間に入った編集は「つまらないから断る」という理由を、そのまま私に伝えないでほしい。そのためにお前は挟まっているのだ。

ハクマン第166回

(つづく)
次回更新予定日 2026-8-12

 
カレー沢薫(かれーざわ・かおる)

漫画家、エッセイスト。漫画『クレムリン』でデビュー。 エッセイ作品に『負ける技術』『ブスの本懐』(太田出版)など多数。

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