村田沙耶香おすすめ作品4選を紹介!
コンビニでアルバイトをしている女性を描いた『コンビニ人間』で、第155回芥川賞を受賞した村田沙耶香。作家として執筆活動をしながら、自身も週に3回コンビニでアルバイトをしているという異色の経歴が話題となりました。今回は村田沙耶香について、受賞作『コンビニ人間』以外の作品に触れます。
村田沙耶香とは
小学生の頃から物語を書き始め、大学在学中に書いた『授乳』で、2003年に第46回群像新人文学賞優秀賞を受賞し小説家としてデビューを果たします。大学時代に始めたコンビニでのアルバイトを今でも続けていて、執筆活動をするのはアルバイトのある日のみ。アルバイトが休みの日は執筆活動もしないそうです。仕事のある日は深夜2時に起きて小説の執筆を開始。8時から13時までコンビニでのアルバイトをこなし、14時からさらに執筆というスケジュールで小説を描いています。
コンビニ人間
出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4163906185
36歳未婚女性、古倉恵子。大学卒業後も就職せず、コンビニのバイトは18年目。これまで彼氏なし。日々食べるのはコンビニ食、夢の中でもコンビニのレジを打ち、清潔なコンビニの風景と「いらっしゃいませ!」の掛け声が、毎日の安らかな眠りをもたらしてくれる。ある日、婚活目的の新入り男性、白羽がやってきて、そんなコンビニ的生き方は恥ずかしいと突きつけられるが…。
主人公はコンビニで18年間アルバイトをしている36歳の独身女性。幼い頃から他人とコミュニケーションをとることが苦手だった主人公は、コンビニのマニュアル通りに仕事をこなすことで初めて社会に適応できたという感覚を得ます。就職をしないこと、結婚しないことについて聞かれてもそれとなく受け流していた主人公ですが、新人アルバイトの独善的男性が入ってきたことで主人公の気持ちに変化が起こり始めます。変わる決断をした主人公が、行動を起こし考えて最後に導き出した自分の生き方とは。
殺人出産
出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4062934779
表題作『殺人出産』の舞台は100年後の日本。避妊や人工授精の技術が向上し、少子化による人口減少は深刻な状態に。そこで少子化対策として導入されたのが子供を10人産めば1人殺してもいいという、「産み人」というシステムでした。殺人が許される社会はどうなっていくのか…。その他にも、男女3人での交際が流行する社会を描いた『トリプル』などが収録された短編集です。従来の恋愛や結婚というシステムについて疑問を投げかけ、その価値を考えさせられる作品となっています。
今から百年前、殺人は悪だった。10人産んだら、1人殺せる。命を奪う者が命を造る「殺人出産システム」で人口を保つ日本。会社員の育子には十代で「産み人」となった姉がいた。蝉の声が響く夏、姉の10人目の出産が迫る。未来に命を繋ぐのは彼女の殺意。昨日の常識は、ある日、突然変化する。
消滅世界
出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4309024327
同じように見えて何かが違う”もうひとつの東京”という、パラレルワールドが舞台となっています。戦争が起こった影響でその後は人工授精が主流となり、夫婦間の性行為は行われなくなります。男女ともに避妊の処置がされ、人工授精が主流となった社会。そして千葉にはさらなる進化を遂げるために新たなシステムを実験導入している町があり、主人公は夫とともにその実験に参加することになり…。家族やセックスが消滅した社会はどんな社会になるのか、衝撃的なテーマの作品です。
世界大戦をきっかけに、人工授精が飛躍的に発達した、もう一つの日本(パラレルワールド)。人は皆、人工授精で子供を産むようになり、生殖と快楽が分離した世界では、夫婦間のセックスは〈近親相姦〉とタブー視され、恋や快楽の対象は、恋人やキャラになる。
しろいろの街の、その骨の体温の
出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4022647841
2013年に第26回三島由紀夫賞を受賞した作品です。主人公はニュータウンで暮らす小学校4年生の谷沢結佳。自分の容姿に自信が持てない結佳は、唯一気軽に話ができる同級生の男子、伊吹を自分のおもちゃとして扱うようになります。中学生になった結佳は、学校のクラスに存在する「スクールカースト」をいつも意識してクラスメートを観察するようになり……。思春期の少女の心に潜む暗い感情と、少女がいろいろな思いを抱えながらも気づきを得て成長していく過程が描かれています。
クラスでは目立たない存在の結佳。習字教室が一緒の伊吹雄太と仲良くなるが、次第に彼を「おもちゃ」にしたいという気持ちが高まり、結佳は伊吹にキスをするのだが―女の子が少女へと変化する時間を丹念に描く、静かな衝撃作。
まとめ
優しい笑顔や穏やかな話し方とは裏腹に、センセーショナルな作品の多い作家でもある村田沙耶香。本人もグロテスクなものや殺人などを書くことに喜びを感じるとコメントしていましたが、ダークな印象を受ける作品も多くあります。しかしどの作品も重いテーマであっても、心の奥深くにある本質をえぐるような衝撃を感じられる作品でした。皆さんもこの機会に是非、村田沙耶香の作品を手に取ってみてはいかがでしょうか。
初出:P+D MAGAZINE(2016/11/02)