文学的「今日は何の日?」【4/20~4/26】

あの名作が世に出た日。
憧れのヒロインの誕生日。
かの大作家の失恋記念日。
……そう、毎日が何かの記念日です。さて、今日は何の日でしょうか。
4月20日から始まる1週間を見てみましょう。

4月20日

小林一茶が「痩蛙まけるな一茶是に有」の句を詠む

文化13年のこの日、俳人・小林一茶は武蔵国竹の塚(現在の東京・足立区竹の塚)にかわず合戦かっせんの見物に訪れました。蛙合戦とは、産卵のために池に集まった雌蛙に大勢の雄蛙が群がって奪い合う様子をさす言葉です。痩せて弱い雄蛙がはじき出されてしまう生存競争の厳しさを目の当たりにしつつも、その弱い雄蛙に声援を送る句です。実は一茶自身も晩婚で、この句を詠む1週間ほど前の4月14日に長男・千太郎が生まれたばかりでした。しかし千太郎はわずか28日で早逝。その後も妻・菊との間には3人の子が生まれますが、いずれも2歳を迎える前に亡くなっています。


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4月21日

ヴァージニア・ウルフ『オーランドー』で詩人グリーンが主人公を訪ねる

内面世界に執着する独特の作風で知られる、イギリスの女性作家ヴァージニア・ウルフ。珍しく娯楽的な作品が『オーランドー』です。16世紀のイギリス女王エリザベス1世お気に入りの美少年オーランドーが、女性の体に生まれ変わり、19世紀のイギリスで詩人として賞を受け……と、時代と性を超えて活躍する物語。作中で、詩人をめざす少年オーランドーの招待に応じ、著名な詩人ニコラス・グリーンが邸にやってくるのが4月21日です。しかし憧れの詩人は意外にもとんだ俗物でした……。メタフィクションの手法を取り入れ、奇想天外な笑いに満ちた本作は、女性作家が正面からジェンダーに取り組んだ作品として、高く評価されています。


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4月22日

『レ・ミゼラブル』のジャン・ヴァルジャン、徒刑場へ送られる

フランスの文豪ビクトル・ユゴーの代名詞ともいえる傑作大河小説『レ・ミゼラブル』。枝切職人のジャン・ヴァルジャンは、空腹に苦しむ幼い甥姪のためにパンを盗み、捕らえてしまいます。1796年4月22日、彼はほかの囚人たちとともに首に鎖をつながれ、ツーロンの徒刑場へと送られました。ここで19年の牢獄生活を送り、世間への恨みを抱いたまま釈放されたジャン・ヴァルジャンでしたが、慈悲深いミリエル司祭に出会ったことで、「正しい人」として生きようと改心します。映画やドラマ、アニメとして多くの映像作品があるほか、C・M・シェーンベルク作曲によるミュージカルは世界中でヒットしました。


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4月23日

1616年、2大作家、セルバンテス&シェイクスピアが死去

1616年のこの日、スペインで『ドン・キホーテ』の作家ミゲル・デ・セルバンテスが、イギリスでは『ハムレット』などで知られる劇作家ウィリアム・シェイクスピアが、世を去りました(シェイクスピアは誕生日も4月23日とされています)。ただし、日付は同じですが実際にはセルバンテスが10日ほど早く亡くなっています。それは1582年にグレゴリオ暦に切り替わったカトリック国スペインに対し、新教国イギリスではまだユリウス暦が使われていたことによる、暦の誤差のため。1752年にイギリスにグレゴリオ暦が導入されたときはその誤差を正すために9月2日の翌日を14日とし、計11日が消えています。


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4月24日

『旗本退屈男』において、槍と馬術の御前試合が御用馬場で行われる

眉間にある三日月形の傷で名高い直参旗本・早乙女さおとめ主水之介もんどのすけを主人公とする、佐々木味津三の痛快時代小説『旗本退屈男』。その第3話において、元禄7年4月24日、槍と馬術の御前試合が小石川小日向こひなた台町だいまちの御用馬場で行われました。その馬術の試合のさなか、どこからともなく鉄扇が投げ込まれて馬上の古高新兵衛の脾腹に命中、古高は落馬し、死んでしまいます。見ると古高の鞍には毒蛇ハブが……! 試合直前に現れた謎の美女、姿を消した古高の中間ちゅうげん、そして金色のハブ。主水之介は見事、謎を解き、悪を懲らすことができるでしょうか?


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4月25日

エーコの自伝的小説『女王ロアーナ、神秘の炎』で主人公・ヤンボが意識を取り戻す

小説『薔薇の名前』が世界的なベストセラーとなったイタリアの作家ウンベルト・エーコ。彼の自伝的小説『女王ロアーナ、神秘の炎』において、1991年4月25日、事故に遭って意識を失っていた主人公・ヤンボが目覚め、名前や生年月日など、個人的な記憶を失っていることが判明します。ですが「ポルシェよりも高い」稀覯本を扱う古書商だった彼の、シェークスピアからデュマ、プルースト、T・S・エリオット、村上春樹など、膨大な読書の記憶は残っていて、なんとか記憶を取り戻そうとするのですが……。あなたもエーコと記憶の旅に出かけてみませんか?


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4月26日

チャンドラー作『高い窓』で、金貨盗難事件の遠因となる事件が起きる

アメリカの推理作家レイモンド・チャンドラーが生んだ名探偵といえば、ご存じフィリップ・マーロウ。シリーズ第3作『高い窓』でマーロウに持ち込まれたのは、盗まれたレア金貨を取り戻すという、富豪マードック夫人からの依頼でした。盗んだのは最近行方をくらました義理の娘リンダだという依頼者の言葉に、リンダを探し始めたマーロウですが、古銭商に金貨を売りに訪れたのは中年の男だったことがわかります。リンダの元ルームメイト・ロイスとその夫、ロイスの愛人などを探るうち、ついにマーロウは8年前の1933年4月26日に、依頼者と犯人を結びつける事件が起きていたことを突き止めるのでした……。


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初出:P+D MAGAZINE(2020/04/20)

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