文学的「今日は何の日?」【9/21~9/27】
あの名作が世に出た日。
憧れのヒロインの誕生日。
かの大作家の失恋記念日。
……そう、毎日が何かの記念日です。さて、今日は何の日でしょうか。
9月21日から始まる1週間を見てみましょう。
9月21日
清国の西太后がクーデターを起こし、光緒帝を幽閉する
浅田次郎の『
出典:https://www.amazon.co.jp/dp/4062750414/
<関連記事>
浅田次郎のおすすめ作品5選を紹介!
歴史・時代小説のオススメ作品を紹介
9月22日
ビルボ・バギンス、111歳の誕生日に姿を消す――トールキン『指輪物語』
J・R・R・トールキンの『指輪物語』は、ホビット族やエルフ、ドワーフらが暮らす架空世界「中つ国」が舞台。ホビット紀元1401年9月22日、111歳の誕生日を迎えたホビット族の古老ビルボ・バギンスは、「旅に出る」と祝宴の席から姿を消しました。彼の養子フロドもその日が33歳の誕生日。ホビット族の成年に達し、ビルボの全財産を相続します。そのなかに指にはめた人が透明になるという金の指輪がありました。実はこの指輪、中つ国を統一する強大な力を秘めているのです。それを知り、フロドから指輪を奪おうとする冥王サウロン。中つ国を守るには、オロドルインの火口の底にある滅びの
出典:https://www.amazon.co.jp/dp/4566023621/
<関連記事>
【北欧神話ってどんなもの?】初心者でもよくわかる、北欧神話のあらすじと神々。
【ランキング】J・R・R・トールキンが残した作品に注目! ブックレビューfromNY<第35回>
9月23日
薩摩国の鬼界ヶ島に赦免の使者がやって来る――菊池寛『俊寛』
安元3年、平氏打倒の密議「鹿ヶ谷の陰謀」に連座した俊寛は、藤原成経、平康頼と共に薩摩国の鬼界ヶ島への流罪となりました。その1年後に平清盛の娘で、高倉天皇の后となった徳子の安産祈願の恩赦が行われ、治承2年9月23日、鬼界ヶ島にも赦免の使者がやって来ます。ところが許されたのは成経と康頼だけでした。『平家物語』には、1人残された俊寛は都の妻子のありさまを知って世をはかなみ、自ら食を断って死んだとありますが、菊池寛の描く『俊寛』は違います。都への思いを断ち切り、自ら小屋を建て、畑を耕し、魚を捕り、妻を娶って、ロビンソン・クルーソーのごとく逞しく生きるのです。果たしてあなたは、どちらの俊寛像に共感を覚えるでしょうか?
出典:https://www.amazon.co.jp/dp/4003106318/
出典:https://www.shogakukan.co.jp/books/09658045
<関連記事>
【祇園精舎の鐘の声……】『平家物語』の魅力を知ろう。
9月24日
ジョン・スミス氏こと「あしながおじさん」に、ジュディが最初の手紙を書く
匿名の資産家からの援助で大学に進学した、孤児院育ちの少女ジュディの物語『あしながおじさん』(ジーン・ウェブスター作)。援助に課せられた条件は、その資産家に毎月手紙を書くことです。たった一度、後ろ姿を見かけた彼の、手足ばかり長い影の印象から、ジュディは彼を「あしながおじさん」と呼ぶことにしました。大学に到着した翌日の9月24日、ジュディは「あしながおじさん」に最初の手紙を書きます。初めて知る、孤児院の外での暮らしが生き生きと綴られた手紙は、とても魅力的。きっと「あしながおじさん」も、時間を忘れて読みふけったことでしょう。作者のジーン・ウェブスターは、『トム・ソーヤーの冒険』などで知られるマーク・トウェインの姪孫にあたる人物です。
出典:https://www.amazon.co.jp/dp/4102082034/
<関連記事>
「服のように、気分や天気によって読む本を選びたい」──『優雅な読書が最高の復讐である』著者・山崎まどかインタビュー
谷川俊太郎を、絵本、翻訳、作詞……詩“以外”の顔から知る。
9月25日
国禁の地図などを持ち出そうとしたシーボルトに「日本御構 」の沙汰が下される
幕末の日本で西洋医学教育を行い、日本医学の近代化に寄与したオランダ商館付きの医師シーボルト。文政11年に帰国する際、国禁の日本地図などを持ち出そうとしたことが露見し、シーボルトに地図を贈った幕府天文方・高橋景保を始めとする10数名が捕らえられます。高橋は取り調べ中に獄死、他の者も厳罰に処せられました。世に名高いシーボルト事件です。文政12年9月25日、シーボルト自身にも「日本御構」(国外追放)の沙汰が下されます。そのとき、シーボルトには其扇こと楠本滝との間に生まれた、2歳の娘・稲がいました。やがて日本最初の女性医師となる稲の生涯は、吉村昭の『ふぉん・しいほるとの娘』に詳しく描かれています。
出典:https://www.amazon.co.jp/dp/4101117314/
<関連記事>
渡邊耕一著『Moving Plants』に描かれた、ある植物の数奇な運命。与那原恵が解説!
【インタビュー】91歳で今なお現役の芥川賞作家・津村節子が語る、夫・吉村昭と歩んだ文学人生(第1回)
9月26日
洞爺丸の遭難事故で氷沼蒼司の両親と伯父夫婦が死亡――中井英夫『虚無への供物』
日本推理小説における三大奇書のひとつとされる中井英夫の『虚無への供物』は、戦後史に残る「洞爺丸事故」が大きな鍵を握る作品です。昭和29年9月26日、青函連絡船洞爺丸が台風15号による荒天のため、函館沖で沈没しました。死者・行方不明者1155人に上ったこの海難事故で、両親と伯父夫婦を失った氷沼蒼司・紅司兄弟。氷沼家では北海道開拓使を務めた曽祖父・誠太郎が狂死して以来、広島の原爆、函館大火などで多くの者が命を落としてきました。それは誠太郎が北海道で行った残虐行為によるアイヌの蛇神の呪いとの噂があるのです。やがて呪いの手は紅司、そして叔父の橙二郎へと伸び……。素人探偵・奈々村久生が、呪いの謎に挑みます。
出典:https://www.amazon.co.jp/dp/406273995X/
<関連記事>
「積ん読」を解消!挫折しがちな名作文学レビュー。
今蘇る赤江瀑『罪喰い』。その耽美の世界を東雅夫が解説
9月27日
読売新聞社・正力松太郎の仲介により、本因坊秀哉と雁金準一の対局が行われる
『花と蛇』などの官能小説で名高い団鬼六は、子供の頃から将棋が趣味。「将棋ジャーナル」誌にコラムを書いていたほどでした。一方、囲碁が趣味の実父の影響で明治から昭和にかけて活躍した囲碁棋士・雁金準一にも関心を持ち、雁金の弟子・富田忠夫の知遇を得て執筆したのが、絶筆となった『落日の譜 雁金準一物語』です。当時家元制であった本因坊の跡目争いに敗れ、日本棋院と袂を分かつ雁金ですが、大正15年9月27日、読売新聞社社長・正力松太郎の仲介により、本因坊秀哉と対局を行いました。持ち時間16時間という長丁場の壮絶な戦いの決着は……? 何事にも揺るがぬ一徹な生き方を通した天才棋士の生涯に、鬼才・団鬼六が迫ります。
出典:https://www.amazon.co.jp/dp/4480823743/
<関連記事>
官能小説を年間300冊読む研究家に聞く、日本の官能小説の歴史
将棋ファン必読の名著、山口瞳の『血涙十番勝負』『続血涙十番勝負』! 大山康晴、中原誠、米長邦雄、加藤一二三などとの伝説の真剣勝負の裏側をいま、初めて明らかにする!
初出:P+D MAGAZINE(2020/09/21)