連載対談 中島京子の「扉をあけたら」 ゲスト:太田啓子(弁護士) 武田由起子(弁護士)

「明日の自由を守る若手弁護士の会」のメンバーであり、憲法に対する関心を高めるために、だれでも気軽に参加できる憲法学習会「憲法カフェ」を積極的に開催している弁護士の太田啓子氏、武井由起子氏。私たちはいま憲法とどう向き合えばよいのか、お二人と語り合います。

 


第十一回
権力者は、憲法がお嫌い?
ゲスト  太田啓子(弁護士) 武井由起子(弁護士)


Photograph:Hisaaki Mihara

憲法記念日スペシャル鼎談 中島京子の「扉をあけたら」第11回メイン

太田啓子(左)、中島京子(中)、武田由起子(右)

「憲法カフェ」の輪を広げていきたい

中島 お二人とお会いしたきっかけは、私が三年前の憲法記念日に、ある新聞で「明日の自由を守る若手弁護士の会」の活動をご紹介したことでした。そのあと、お二人も執筆された『これでわかった! 超訳・特定秘密保護法』の出版記念会で初めてお会いして。あれから、いろんなことがありましたね! 昨年はお二方の「憲法カフェ」にゲストとして参加する機会もあり、とても勉強になりました。太田さんとは高円寺で一回、藤沢で一回。それぞれ私の地元と太田さんの地元で開催しました。武井さんとも、中野の古民家で、一緒にお話をしましたね。
武井 料理研究家の枝元なほみさんと鼎談したんですよね。トークも白熱しましたが、枝元さんが作ってくれた料理を食べ始めたとたん、みなさん緊張がほぐれたのか活発な意見交換をされていたのが印象的でした。
中島 やっぱり美味しい料理は、心の垣根を外してくれるんですね。ところで「憲法カフェ」は、どういう経緯ではじめられたのですか?
太田 直接のきっかけは、二〇一二年四月に自民党が発表した「日本国憲法改正草案」ですね。自民党の憲法改正推進本部のホームページに掲載されているので、ぜひ読んでほしい。その内容に危機感を持った若手弁護士たちが二〇一二年十二月の衆院選で第二次安倍政権が発足したのに警戒心を強め、自民党憲法改正草案を阻止しようという一点のみで集まろうということで、二〇一三年一月に「明日の自由を守る若手弁護士の会」(通称「あすわか」)を結成しました。現在は五百六十名を超える若手弁護士が参加しています。その活動の一環として、自民党の改憲案の怖さを伝えることはもちろん、誰もが気軽に参加できて憲法のことをもっと身近に考えてもらえる場を作ろうと「憲法カフェ」を企画したんです。これまで「あすわか」に所属している全国各地の弁護士たちによって、のべ千回以上開催されています。
憲法記念日スペシャル鼎談 中島京子の「扉をあけたら」第11回文中画像1武井 私たちは創設メンバーではないのですが、「あすわか」の活動に賛同して参加しました。「憲法のお勉強ですよ」と大上段に構えるのではなく、お茶を飲んだり、ご飯を食べたり、音楽を聴いたりしながら、憲法の基礎的なことを知って頂いて、政治や生活のことをざっくばらんに話したりすることを目的としているんです。中島さんのような言葉を紡げる方に参加いただけると、ものすごい力になります。
中島 いや、私はむしろ、参加者として教えてもらっているほうですから。「憲法カフェ」で武井さんたちのお話を聞いて、自分にとって「憲法」がどれくらい大切なものかを痛感したんです。でも、いくら気軽に参加してくださいと言ってもテーマが「憲法」でしょう。最初は参加者を集めるのが難しくありませんでしたか。
太田 例えば「公民館の第6会議室で憲法改正阻止の勉強会を開催します」と参加者を募ったとしますよね。すると本当は改憲論議に関心があってその内容をもっと深く知りたいと思っている人まで、「ガチガチの護憲派」に見られるのは嫌だと敬遠してしまう。そこで「あすわか」の弁護士たちもどんなイベントなら参加したくなるだろうかと知恵を絞っていろんな企画を立て始めました。
武井 静岡県の内山宙先生がやっている「ベルばら憲法カフェ」は、「次は私たちの街で」と依頼が相次ぐほどの人気になっていますよね。
中島 「ベルばら」って『ベルサイユのばら』ですか? オスカルやアンドレと「憲法」がどう繋がって、どんな話をされるのか、ファンじゃなくてものぞいてみたい。
太田 そうでしょう。でも、内容は参加してのお楽しみです(笑)。埼玉県では竪十萌子先生がラッキィ池田さんとコラボしたイベントも話題になりました。ラッキィさんは、子どもたちに人気のアニメ『妖怪ウォッチ』の体操の振り付けを担当されているので、まさに踊って学ぶ憲法カフェ。会場は、たいへん盛り上がったそうです。
武井 竪さんはさまざまなメディアの注目を集めて大活躍されています。まさに憲法カフェクイーンですね。
太田 そうなんですよね。小さなお子さまも一緒に楽しめる企画なら、お母さんも参加しやすい。私も、三浦の農家の方が企画した芋掘り体験と組み合わせたイベント「畑de憲法」に講師として呼んでもらいました。親子で、泥んこになって芋掘りを楽しんでもらう。掘った芋は「憲法カフェ」をやっている間に、焼き芋を焼いて、終了後みんなで食べるんです。
中島 それは、お母さんもうれしいですね。
太田 しかも子どもたちの様子が心配だと、お母さんは「憲法カフェ」に集中できないでしょう。このイベントでは、年配の参加者の方が子守役を買って出てくれたんです。みんなが協力しあって輪をひろげていく市民運動の原点を体験しているようで、ワクワクしてきました。武井さんの「Wけんぽう(憲法&拳法)カフェ」も話題になりましたね。
武井 冗談みたいな企画ですが、元世界チャンピオンの太極拳の先生まで応援に駆けつけてくれて、大人だけじゃなく小学生のお子さままで、「ふたつのけんぽう」を楽しく学んでくださったようです。
中島 お話を聞いていると、「憲法カフェ」は女性の参加者が多いような気がしました。
太田 他のメンバーのイベントはわかりませんが、私の場合は平日の日中に開催することが多いので、どうしても男性で参加できる人は限られてきます。じつは、日曜日の昼間にバーを借り切って「お父さんのための飲み学び講座」をやったことがあるんです。奥さんに薦められてしぶしぶ参加した男性が、終わってから「何が問題かよくわかったよ。企画してくれてありがとう」と声をかけてくれた。その時に、やり方次第で「憲法カフェ」はまだまだ広がっていくと確信しました。
憲法記念日スペシャル鼎談 中島京子の「扉をあけたら」第11回文中画像2中島 これまでいろいろな方と話されてきたと思います。何か問題点をお感じになることはありますか。
武井 そもそも憲法は何のためにあるのか。誰を縛っているのかを履き違えている人がほとんどなんです。
太田 憲法の基礎知識を○×クイズでやると、憲法は国民を縛るものだと思っている人が、結構多いですね。
武井 「憲法」はお釈迦様が孫悟空の頭につけた「緊箍児」のようなもの。悪いことをすると、ギュッと締め付けられる。権力者の暴走を防ぐ役割を果たすものなんです。孫悟空が締め付ける力をゆるくしたいと考える時は、自分に有利なことをしたい時。そう考えれば政権側から出てくる改憲要求が、私たち国民にとって不利なものになることは自明ですよね。
太田 「憲法」は、国民を縛るものではなく、権力を縛るものというのが立憲主義の根幹です。だから時の権力者にとって「憲法」は、自分の行動を不自由にする不便なものなんです。
中島 なるほど。権力者にとって「憲法」は「押し付けられたもの」なんですね(笑)。
太田 「あすわか」にも参加されている広島の楾大樹先生の著書に『檻の中のライオン』(かもがわ出版)という絵本があります。憲法を檻に、権力をライオンに見立てて、立憲主義とは何かを子どもにもわかるように絵解きした良書なんです。「憲法」って難しそう、と尻込みする前にすべての人にまずこの絵本を読んでほしいんです。

「改憲」か「護憲」かではなく
「全体主義」か「個人主義」か

武井 社会科の授業で、憲法の三大原則を暗記させられたでしょう。
中島 「平和主義」「国民主権」「基本的人権の尊重」。
武井 でもみんな暗記するだけで、それの持つ意味をちゃんと考えることをしない。
中島 確かに、その通りです。
太田 教える側の先生が憲法のことを理解していないから、子どもたちのなかにも憲法の根本が根付かない。
武井 憲法の三大原則が言っていることは、国民一人ひとりみんな違っていていいということ。
中島 武井さん、それよく使いますね(笑)。金子みすゞの詩。「みんなちがって、みんないい」。
武井 日本の憲法は、個人の尊重をサポートするためにあるんです。改憲論者たちは、今の憲法を個人主義的な憲法だと批判しますが、日本国憲法にとってそれが一番の要。とにかく憲法に記載されている百三条の条文すべてが、個人の尊厳をまもるために存在していると言っても過言ではありません。
憲法記念日スペシャル鼎談 中島京子の「扉をあけたら」第11回文中画像3太田 今の憲法に不満を持っている自民党のおじさんたちは「個人主義的な憲法のせいで戦後女性が好き勝手わがままに生きて、子どもを産まなくなった」なんて言っているわけでしょう。
中島 個人の尊厳を踏みにじれば、子どもは生まれるのかな?(笑)
武井 「個人主義」の反対概念は「全体主義」です。では、「全体主義」とはどういうものか。指導者が国民の幸せはこれだと決めて、その方向に向かってすべての国民がドドドドドって進んでいく。それが嫌な人、同調できない人は全部排除される社会です。
中島 太平洋戦争に突入していった時の軍国主義の日本やナチス・ドイツの世界。
武井 個人主義は、わがままではない。自分の幸せは、自分で決める。自分でも頑張るし、周りの人や社会もあなたの幸せを応援する。そういう社会です。さぁ、皆さんはどっちの社会がいいですか?
太田 なるほど。「改憲」か「護憲」かではなく、「全体主義」か「個人主義」かの選択ということですね。
中島 うん、その説明はしっくりきました! 憲法を一字一句変えちゃいけないとは思わない。時代にあわせて変えたほうがいいと思う条文もある。だけど、自民党の改憲案は、すごくイヤなんです。一人ひとりを尊重せず、みんなひとまとめにして「全体」に向かわせるからなんですね。
武井 「個人主義」と「全体主義」の対立だという視点から見ると「特定秘密保護法」も「共謀罪法案」(テロ等準備罪)も、全体主義化を推進する法律だということがわかります。
太田 自民党憲法改正草案の根底にあるのは、とにかく「個人主義が嫌い」だということ。こういう改正論者は皆さん「全体主義」が好きな方たちです。国家の大義の前では個人の自由は制限されて当然だという発想。それがすべてだと思います。安倍総理もメンバーの一人である、近年話題の「日本会議」という保守的な団体ネットワークの思想ってこういうものなのでしょうね。
中島 日本会議、安倍首相をはじめ、現閣僚の多くがメンバーなんでしょう?
太田 だから海外のメディアに、日本会議という極右団体カルトが政府に強い影響力を持っていると書かれるんです。
中島 「国有地を八億円引きの破格値で購入できたのは、政治家の強い働きかけがあったのでは」という疑惑が取り沙汰されている森友学園の前理事長も、元々は日本会議のメンバーでしたね。森友学園が運営する塚本幼稚園では、「教育勅語」を暗唱させたり、運動会の選手宣誓で子どもたちに「安倍首相ガンバレ。安保法制国会通過よかったです。エイエイオー!」と言わせていた。まさに「全体主義」の教育。そのシーンをワイドショーやニュースがばんばん放送したのはすごく大きなことです。
太田 「あれが日本会議のメンバーだった方。安倍首相は、日本会議のメンバーだよ」そう話すとわかりやすいものね。

憲法改正案、国民投票の結果は?

太田 「君が代」の斉唱を義務付けたり、「教育勅語」を愛でる大臣……。教育の現場でも全体主義化への圧力は強まっているように思いますね。
憲法記念日スペシャル鼎談 中島京子の「扉をあけたら」第11回文中画像4武井 そして、もう一つが家庭なんですね。自民党のおじさんたちは、なぜ「家庭教育支援法」の制定にこだわるのか。家庭というと、お父さんとお母さんがいて、子どもたちとたのしそうに食卓を囲んでいる一家団欒のシーンを想像するでしょう。でも、与党政治家が考える家庭というのは、そういうイメージではなく、国家による国民支配の道具という機能です。国民は天皇の子どもと言われ、産めよ殖やせよと介入され、父親が家庭内で権力を持ち、「お国のためだから仕方がない」と、子どもを守りたいお母さんの気持ちを押しつぶした戦前のイメージです。そうじゃないと戦争なんて遂行できないんです。お父さんがトップにいて、お母さんは口答えせず、お国のために子どもをさし出す。そういう家族のかたちは、戦争をしたい国には都合がいいんです。
太田 今国会で提出予定の「家庭教育支援法」というのは、家庭内でも個人の尊厳を守ることを明記した、憲法二十四条を骨抜きにする法案だと言われています。
中島 私たちには異様に感じる森友学園の教育、あれ、安倍政権が目指している理想の教育ってことでしょうか。
武井 そうなんでしょう。実際に塚本幼稚園の先生が三人ほど「文部科学大臣優秀教員表彰」を受けていますもの。あなたは、素晴らしい教育者だと、国から表彰されている。そもそも日本の憲法には「日本の軍国主義が引き起こした悲惨な戦争で世界に迷惑をかけた。だからちゃんと民主主義国家になりなさい」という戦争への反省と平和への願いが込められている。それが、いつの間にかまた軍国主義の方に向かっている気がします。
太田 そう思いますね。憲法第九条に関しても、あれだけ国民が反対していたのに、安保法制を強硬的に成立させ、集団的自衛権を認めることで、事実上戦争を行うことができる国になりました。もちろん政府は戦争という言葉は使っていませんけれど。法律を制定することによって、事実上憲法を骨抜きにする。こういう「憲法改正」手続きを踏まずに事実上行われる「改憲」の手法には強く警戒を呼びかけたいです。
憲法記念日スペシャル鼎談 中島京子の「扉をあけたら」第11回文中画像5中島 実際の改憲項目は、「教育無償化」とか、災害時などの「緊急事態条項」など、「あったらいいかも」と思わせるものにすると言われていますが。
太田 そもそも「教育無償化」は憲法を変えなくても、法律を作ればいますぐできますよ! 「緊急事態条項」は、東日本大震災の被災地の弁護士たちはじめ被災の実態を知る弁護士たちが「必要ない」と言っています。各地の弁護士会から改憲による緊急事態条項創設は危険、不要、有害だという声明も多数出ています。「ともかく改憲実績を作りたい」という動きには、やはり警戒が必要です。
中島 安倍首相の在任中に、憲法改正は必ず行われると思いますか?
武井 安倍さんは、歴史に名を残したいと思っているでしょう。いまのスケジュールだと、来年の一月ぐらいに自民党の憲法改正案は議会を通過し、憲法改正が発議されます。そして発議から六十日以後百八十日以内に、国民投票が行われます。
中島 そんなに早く……。
武井 しかも投票総数の過半数の賛成で、憲法改正案は成立しちゃうんです。
太田 国民投票になったら、熱心な与党支持者は必ず投票にいって賛成票を投じるでしょう。でも、憲法に関心がない人はいかないですよね。国民投票法の定めで、「過半数」は「投票総数」の過半数であって、有権者の過半数ではないので、棄権者は分母に入りません。投票率が低ければ組織票があるほうが有利で、賛成票が過半数を占める可能性は高いと言わざるを得ない。
中島 国民投票の前に、「私たちが国に奉仕する」憲法に変えていいのか、「国が私たちに奉仕する」憲法を維持したいのか、考えておくべきですね。
武井 「憲法カフェ」も一応憲法をテーマにしているけれど、ほんとうに身に付けてほしいことは、究極的には主権者意識なんです。でも、自分が社会の主人公なんだという感覚が、日本の人には薄いですよね。
中島 私も3・11以前は、かなり薄かったと思います。
武井 国民のことは、お上がなんとかしてくれる。だからお上には従順にして、とにかく我慢する。
中島 「全体主義」を目指す勢力にとっては、非常に都合のいい国民性かもしれません。
武井 でも、憲法を読んでみてください。国民が主役って書いてありますよ。そう話しても、主権者意識がどういうものか体感したことがないから、みんな実感が持てないんですね。
太田 それに、主役でいたいかどうかもいままさに問われていると思います。居心地のいい奴隷だったら、そのほうがいいという人もいるかもしれない。
武井 そう。みんなが私たちと同じ考え方だとは限らないし、一人ひとり考え方は違っていい。でもね、イメージだけで決めるのは危険だということに気づいてほしい。
中島 最後に、読者の方々に読んでほしい条文があったら教えてください。
憲法記念日スペシャル鼎談 中島京子の「扉をあけたら」第11回文中画像6太田 第十二条、ですね。
「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ」
 要するに誰かがいい社会をつくってくれるそんな甘い世の中じゃない。日々悩み、考え、行動することで人間の権利は鍛えられていく。権利は行使しないと小さくなるぞ、と読めるんです。例えば表現の自由もそうだと思う。意識的に行使していかないと、なくなってしまう。いま痛切に、そう思っています。
武井 昨年の秋にアメリカ海兵隊の軍人さんたちを呼んでお話を聞いたのですが、戦争による精神的な傷跡に一生苦しみ続ける人が多くいる。戦争を許すと世界は恐らく滅びちゃう。究極的にはジョン・レノンの『イマジン』に歌われているような世界じゃないと、地球がきちんと維持されて人々が幸せに生きる方法がないんだなと感じました。やはり戦争の放棄を宣言した第九条は、日本だけじゃなく世界の人々にも読んでほしい条文です。 
「1 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」
太田 第九条とともに憲法の前文を読むとなぜ日本国憲法が平和憲法と呼ばれるのか、よくわかりますよね。
「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。(前文より一部抜粋)」
武井 いま国連で「平和への権利」の国際法典化が進められていて、その内容は日本国憲法に書かれていることと合致するんです。地球の未来に対する答えが日本国憲法のなかにあるんです。世界に誇れることだと思いませんか?

構成・片原泰志

プロフィール

中島京子(なかじま・きょうこ)

1964年東京都生まれ。1986年東京女子大学文理学部史学科卒業後、出版社勤務を経て独立、1996年にインターシッププログラムで渡米、翌年帰国し、フリーライターに。2003年に『FUTON』でデビュー。2010年『小さいおうち』で第143回直木賞受賞。2014年『妻が椎茸だったころ』で第42回泉鏡花文学賞受賞。2015年『かたづの!』で第3回河合隼雄物語賞、第4回歴史時代作家クラブ作品賞、第28回柴田錬三郎賞を受賞。『長いお別れ』で第10回中央公論文芸賞を受賞。

太田啓子(おおた・けいこ)

弁護士。国際基督教大学卒業。2002年に弁護士登録(神奈川県弁護士会)。「明日の自由を守る若手弁護士の会」メンバー。カジュアルな雰囲気で憲法を学ぶ学習会「憲法カフェ」を2013年より開始。2014年より始めた政治を語る場「怒れる女子会」呼びかけ人。

武井由起子(たけい・ゆきこ)

弁護士。中央大学法学部卒、一橋大学大学院修了。伊藤忠商事総合職を経て2010年弁護士登録。「明日の自由を守る若手弁護士の会」(あすわか)メンバー。日本弁護士連合会憲法問題対策本部幹事。全国各地で「憲法カフェ」を企画・開催している。OVERSEAs発起人。

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<『連載対談 中島京子の「扉をあけたら」』連載記事一覧はこちらから>

初出:P+D MAGAZINE(2017/05/20)

ちゃんと「ありがとう」の気持ちを伝えたくなる本
最果タヒ『夜空はいつでも最高密度の青色だ』––「レンズのような詩が書きたい」に込められた想い。