長月天音
小学校中学年の頃まで、夏休みを山小屋で過ごしていた。父親が山小屋の管理人だったのだ。日本百名山にも選ばれた山の山頂近い小屋まで、食料の詰まった重いリュックを背負った母と弟と私は、子供の足で四時間ほど
悲しみの場所で強く生きる
私は霊感があるわけでも〝気〟に敏感なわけでもない。しかし〝悲しみの気配〟というものを確かに感じたことがある。
大学生の頃、私は葬儀場でアルバイトをしていた。告別式では、
人は生死の境界線をも越えた無数の繋がりの中で生きている
長野県で地域医療に従事する医師である夏川草介は、2009年に様々な患者と向き合う内科医の姿を描いた『神様のカルテ』で第10回小学館文庫小説賞
東京で実家暮らしをしている大学四年生の清水美空は、就職活動で連戦連敗し、三年前に始めたものの休職中だったアルバイトに復帰する。スカイツリーのすぐ近くにある地上四階建ての葬儀場、坂東会館のスタッフの仕