【栃木県民マンガ】負けるな!ギョーザランド!! 第9回 佐野は新旧名物が集まるBグルの聖地だ! まんが/いちごとまるがおさん 監修/篠﨑茂雄

 黒から揚げに耳うどん、そして佐野らーめん……。佐野のB級グルメは、いもフライだけじゃなかった!

ギョーザランド 第9回

古くからの郷土料理・耳うどんをはじめ
佐野らーめん、いもフライといったB級グルメ、
略してBグルを数々生み出してきた佐野
でもそれだけでは飽き足らず、
新しいBグル、黒から揚げを生み出してしまった!
佐野のアイデンティティともいえる
ソースを使ったこの新名物は
大手飲食店やコンビニでも採用された実力の持ち主だ!
古くからの伝統だけでなく、
新しい潮流も生み出す佐野ってすごい!

え、鼻息を荒くしてもしょせんB級だって!?
ふん、おいしければいいのさ!

マンガ中の記号(※1)などは、マンガのあとに出てくる用語解説「餃子国の歩き方」の番号と対応しています。

ギョーザランド第9回漫画1
ギョーザランド第9回漫画2
ギョーザランド第9回漫画3
ギョーザランド第9回漫画4
ギョーザランド第9回漫画5
ギョーザランド第9回漫画6
ギョーザランド第9回漫画7
ギョーザランド第9回漫画8
ギョーザランド第9回漫画9
ギョーザランド第9回漫画10
ギョーザランド第9回漫画11
ギョーザランド第9回漫画12

ギョーザランドの歩き方 ロゴ


(※1)黒から揚げ

ギョーザランドの歩きかた第9回1

 もともとは内閣府が主導する地方創生事業の一環で、子どもたちのために何か残せないかと、PTAや青年会議所などの関係者が「ああでもない、こうでもない」とあれこれ考えていたらしい。そこから生まれたのがこの黒から揚げ。から揚げは老若男女に人気があるし、佐野はソースのまちよね、ってことで、いい落としどころになったようだ。

 2018年に開催されたから揚げフェスで大人気を博し、同年中には佐野黒から揚げ応援ソング『俺たちは知っている!』も完成。作詞作曲は芸人のはなわが手がけ、歌っているのは佐野ブランド大使のダイアモンド ユカイ。う~ん、なかなか豪華だ。

 その勢いのまま21年、22年にはミニストップで全国販売。それだけでなく、21年の人気商品No.1になってしまった。マンガにあるように、スシローでも全国販売(23年11月~24年1月)されて、人気も認知度もうなぎのぼりなのだ。

〝佐野ラーメン、いもフライに続く第3の名物〟を目指していた黒唐揚げだけど、他の二つを追い落としそうな勢いだぞ!

(※2)黒から揚げ専用のソース

ギョーザランドの歩きかた第9回2

 佐野黒から揚げのブランディングをしているのは、ボランティア団体パパプロe街佐野奉行所と合同会社e街佐野奉行所。佐野を愛するパパたちの集まりで、「佐野黒から揚げ」の認定をしたり、黒から揚げが食べられるマップを作ったり、さらに認知度を上げるプロモーションをしたりしている。

 で、2020年からのコロナ禍でさまざまな体験の機会を失ってしまった子どもたちのためにパパたちが立ち上がる。佐野松桜高校の生徒とともに、から揚げにも焼きそばにも合うオリジナルのソースをつくるプロジェクトを始めてしまったのだ。ソースの味から名付けまで高校生が携わり、23年に「ソースおとめ」が誕生。このソースを使った黒から揚げは、地元のスーパーなどでも売られている。

 ちなみに「ソースおとめ」のネーミングは、栃木が誇るブランドいちご・とちおとめのピューレ入りだってことに由来。ソースの酸味の中に、ほのかに甘みが感じられ、なかなかの逸品だぞ!

(※3)耳うどん

ギョーザランドの歩きかた第9回3

 佐野市(と宇都宮市の一部)の郷土料理。内容はマンガで紹介したとおりで、ほうとうの数倍太い麺(?)が特徴。正月のあいだ水に浸しておいて、来客があったらさっとゆでてふるまうのだ。

 昔ながらの料理だが、野村屋では粉のブレンドを工夫したりして、レベルアップした風味のいい耳うどんが楽しめる。他県から食べにくるファンもいるほどだ。

 佐野のアウトレットなどに来る機会があれば、ぜひお立ち寄りを。

(※4)焼きまんじゅう/ぎゅうてん

ギョーザランドの歩きかた第9回4

 栃木と同じく小麦の生産が盛んだった群馬では、古くから小麦粉を使っただんごや麺類が盛んにつくられている。小麦粉から作った大き目のだんごを3つほど串にさし、甘いみそだれをたっぷり塗った「焼きまんじゅう」もそのひとつ。江戸時代から存在する伝統のBグルだ。

 一方、佐野にほど近い桐生では、薄くといた小麦粉にネギやキャベツを入れ、小判型に焼いた「ぎゅうてん」が人気だった。とくに、忙しい繊維産業の女工さんたちのあいだで親しまれていたそうで、そのあたりは「ポテト入り焼きそば」や「いもフライ」と共通している。

「ぎゅうてん」という名前は、鉄板にギュッと押し付けるところからつけられたらしいけど、じゃあ「てん」ってどっからきた? 誰か教えて……。

(※5)大根そば

ギョーザランドの歩きかた第9回5

 そばに大根とくれば誰しも「おろしそば」を想像するはず。だが、佐野の「大根そば」は想像の斜め上を行くのだ。

 おろしそばは、つゆに大根おろしを混ぜることで、つゆが薄まってしまうことも間々あるけど、大根そばは大根の食感や風味がダイレクトに味わえる。だから一度食べたら、リピーターになる人が続出! 東京などほかの地方でも売り出せば、一躍人気化すると思うけどなぁ。

 東京のそば屋さん、やってみない?

(※6)かてめし

ギョーザランドの歩きかた第9回6

 かてめしは「家庭の飯」……というのはウソで、「かてる」は混ぜるという意味だ。つまり、かてめしは「まぜ飯」のこと。米のご飯は贅沢品だったので、庶民は米少々に野菜などを混ぜてかさを増し、腹を満たしていたわけ。NHKの連ドラ「おしん」に出てきた大根飯もその一種だ。

 かてめしはいろいろな地方で見られるけど、埼玉県ではほぼ全域で食べられており、給食のメニューにもなっている。郷土の名物として紹介されることも少なくない。場所によって混ぜられているものが違い、たとえば秩父で「ずいき」(さといもの茎を乾燥させたもの)を混ぜ込むとか。

 しかたなく食べていた代用飯に、数百年たってスポットライトが当たるとは、ご先祖さんたちは思わなかっただろうなぁ。

(※7)佐野らーめん

ギョーザランドの歩きかた第9回7

 北海道の札幌ラーメン、福岡の長浜ラーメン、福島の喜多方ラーメン……。ご当地ラーメンは数々あれど、佐野らーめんも歴史の深さでは負けてはいない。大正の初めに生まれた佐野らーめんは、戦後生まれの長浜ラーメンや、大正末期生まれの喜多方ラーメンよりも古く、明治時代生まれの札幌ラーメンと双璧をなすといっても過言ではない(各ご当地ラーメンの歴史については諸説あります)。ちょっと意外だったでしょ。

 太い青竹で打った腰のある麺と、清らかな水で仕込んだクリアなスープが特徴だが、歴史の古い佐野らーめんの魅力に県外の人が気付いたのは、ずいぶんあとになってから。高度成長期以降、ゴルフにやってきた人たちの口コミによるらしい。

 ともあれ、いまではカップ麺も店頭に並ぶほど、人気はゆるぎないものに。「らーめん予備校」のような施策で、佐野のラーメン文化が盤石になることを祈るばかりだ。

■プロフィール

まんが:いちごとまるがおさん

ギョーザランドいちごとまるがお

田んぼに囲まれた田舎で創作活動を続ける、ひきこもりのおたく姉妹ユニット。栃木県佐野市在住。
姉の小菅慶子(代表)は1985年生まれ。グラフィックデザインから漫画、動画編集、3DCGまでやりたいことはなんでもやる。通信制高校の講師も。趣味はゲーム、ホラー映画、都市伝説。

監修:篠﨑茂雄

ギョーザランド篠崎茂雄

1965年、栃木県宇都宮市生まれ。大学・大学院で社会科教育学(地理学)を専攻したのち、県立高校の社会科教員を経て、現在は博物館に勤務。学芸員として、栃木県の伝統工芸、伝統芸能、生産生業、衣食住等生活文化全般(民俗)の調査研究、普及教育活動を行う。
著書は『栃木「地理・地名・地図」の謎』(じっぴコンパクト新書)、『栃木民
俗探訪』(下野新聞社)など。

■作者よりひとこと

■今回のテーマ 「佐野といえば……」

・いちごとまるがおさん
 食べ物以外では、唐澤山! 漫画内でチャオズたちが住んでいる唐澤山ですが、小学校のイベントではハイキングをしたり、ロードバイクで登る人も! 毎年夏の恒例イベント、風鈴参道もオススメなので、是非行ってみてくださいね。

・篠﨑茂雄
 以前は、佐野と言えば栃木、足利という二つの町に挟まれた地味な町というイメージでしたが、その後、佐野らーめんを筆頭に耳うどん、天明鋳物、アウトレット、さのまるなど地域おこしに成功し、個性あふれる元気な町という印象です。

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