【栃木県民マンガ】負けるな!ギョーザランド!! 第10回 栃木の伝統工芸品は茨城にルーツ!? まんが/いちごとまるがおさん 監修/篠﨑茂雄
益子焼といえば、言わずと知れた栃木が全国に誇る伝統工芸品。ユネスコ重要無形文化財に登録された結城紬も、栃木で盛んにつくられている。だが! どちらもオリジナルは茨城だったってホント?
「伝統工芸品」といえば、土産物にはなるけれど、
箪笥の肥やしになりがちなもの──という印象かもしれない。
でも、それは偏見というもので、
今回のテーマ、結城紬や益子焼には当てはまらない!
益子焼のイメージを一変させた人間国宝・濱田庄司らは、
無名の作家の手仕事による日常遣いのものに
価値があると言ってるのだよ。
陶芸品が並ぶ益子の通りを歩くと
誰でも手が届く価格ながら、大量生産品とは違う、
味のある商品に出会うことができる。
ユネスコ無形文化遺産・結城紬にしても
機械織では出せない風合いがあって、一着ほしくなる。
ま、こちらはちょっとお高いけれど。
ぜひ一度、栃木の技を見に来てちょうだい。
マンガ中の記号(※1)などは、マンガのあとに出てくる用語解説「餃子国の歩き方」の番号と対応しています。
■(※1)蔵の街
外国人に人気が高い川越と並び称される(?)のが栃木市の蔵の街。
戦国時代末期、この地にお城が築かれ、江戸時代に入ってからは日光東照宮に捧げものを献上する例幣使が通る道として宿場などが置かれ、巴波川の舟運とも相まって、人や物で賑わった。江戸末期には、水戸天狗党による焼き討ちにあうなど、大火にみまわれたので、火に強い瓦や漆喰で覆われた蔵造りの店舗「見世蔵」が増えたとか。
いまでも巴波川沿いを中心に古い町並みが広がっており、舟で周遊もできる掘り出し物のスポットなのだ!
■(※2)思川桜
小山市役所付近の思川の堤防などに植えられている、ソメイヨシノより少し色の濃いのが思川桜。小山市の市の花に指定されている。小山市内の修道院の庭で発見された突然変異種で、その後東大付属日光植物園の技官だった故・久保田秀夫さんが十月桜の実生から育成されたものが広まった。昭和天皇ご夫妻もご覧になったというやんごとない逸話もあるのだ。
ソメイヨシノより1週間ほど遅れて咲きはじめるので、小山では卒業の時期はソメイヨシノ、入学時期は思川桜と、ピンクの花に囲まれるシーズンが長く続くことに。いやぁ、うらやましい!
■(※3)小山
いきなりですがクイズです。栃木県でいちばん人口が多いのは宇都宮市。では、2番目は? そう、「♪おやまゆ~えんち~」で知られる小山市なのだ。え、古すぎるって? ほっとけ。
で、その小山は新幹線の停車駅になっていて、マンガにあるように東京駅から約40分の距離。余裕で通勤圏なのだ。
しかも! いま子育て世代の方が移住すると、3年間、新幹線定期券の購入費用を、最大で月1万円補助してくれたり、東京23区に通勤していた人が、移住して就業・起業した場合、単身なら60万円、世帯移住なら100万円の補助+子どもひとりにつき30万円加算という夢のような制度も。
渡良瀬遊水地ではコウノトリが育っているし、県2番目の都市はなかなか侮れないぞ。
■(※4)結城紬
紬を作っている地方はいくつかあるけれど、昔ながらの手法で作られているところは数少ない。結城紬はそのひとつで、少なくとも奈良時代からの長い歴史を誇る伝統工芸品なのだ。
糸をつむぐところから、染色して織るところまですべて手作業。真綿から糸をつむぐときは指先で引き出した繊維を「つば」を使ってまとめていくし、地機で織るときは全身を使う。ちなみに「綿」は植物という印象があるかもしれないが、元来は煮た蚕の繭を引き伸ばしたもの。布施明が歌った「真綿したシクラメン」は繭の色だ──って古すぎるなぁ。
ちなみに銘仙はくず繭から引いた糸を機械で織ったもの。絹織物や紬に比べて大量生産ができ、ずっと安価なので一時期大ブームを呼んだが、現在は下火になっている。埼玉の秩父や群馬の伊勢崎などが主な産地だ。
■(※5)益子焼
マンガで紹介したとおり益子と笠間は兄弟みたいなもので、山を挟んで隣り合っている。「ああ、土質が同じだから、どちらも陶器で有名なんだな」と思ったあなた、残念ながらちょっと違う。益子焼は笠間焼よりも砂を多く含んでいて、ごつごつした肌触りの焼き物だけど、笠間焼の土は花崗岩質で鉄分を多く含んでいて、そのまま焼くと赤みを帯びた陶器ができあがるのだ。
民芸運動の中心となった益子はもちろん、その影響を受けた笠間も、芸術品というより、気の利いた日常使いの作品を多く生み出している。現地に行くとさまざまな製品が、えっ! と驚くようなリーズナブルな値段で売られているので、ぜひ足を運んでいただきたい。
とくに春と秋の陶器市は、わざわざ訪ねても損はしないぞ!
■プロフィール
まんが:いちごとまるがおさん
田んぼに囲まれた田舎で創作活動を続ける、ひきこもりのおたく姉妹ユニット。栃木県佐野市在住。
姉の小菅慶子(代表)は1985年生まれ。グラフィックデザインから漫画、動画編集、3DCGまでやりたいことはなんでもやる。通信制高校の講師も。趣味はゲーム、ホラー映画、都市伝説。
監修:篠﨑茂雄
1965年、栃木県宇都宮市生まれ。大学・大学院で社会科教育学(地理学)を専攻したのち、県立高校の社会科教員を経て、現在は博物館に勤務。学芸員として、栃木県の伝統工芸、伝統芸能、生産生業、衣食住等生活文化全般(民俗)の調査研究、普及教育活動を行う。
著書は『栃木「地理・地名・地図」の謎』(じっぴコンパクト新書)、『栃木民俗探訪』(下野新聞社)など。
■作者よりひとこと
■今回のテーマ 「着物」
・いちごとまるがおさん
おやまクラフト館さんへ、実際に取材に行きました。クラフト館がどのような施設なのか、お話を伺いたくて行ったのですが、せっかくだからと「結城紬」の着心地体験もさせていただきました!
さらさらと軽い生地が肌に触れるのがとても気持ちよくて、普段、着物を着る機会がある方もない方も、これはぜひ体験してほしい! 着たまま街歩きも出来ます!
・篠﨑茂雄
20年ほど前のこと。博物館で「結城紬」の展覧会を担当したとき、My結城紬が欲しくなり、伝統工芸士の方に作ってもらいました。120のベタ亀甲(亀甲模様が布地全体に施されたもので、ひとつの亀甲模様の大きさは織幅約38㎝の中に120個入る大きさのもの)の着物と羽織で、待つこと5年。これまでの人生のなかで2番目に高い買い物でした(ちなみに1番は家です)。でも軽くて柔らかな着心地で、それだけの価値はあります。