エッセイ

ハクマン56回
「月初の呼札を紙屑に変えた奴だけが集うサロンへようこそ」これは一時期、私が月初めに必ずツイッターでつぶやいていた言葉である。ソシャゲの「FGO」で…
思い出の味 ◈ 伊岡 瞬
 大学三年生の夏休みに、学友六人(全員男)で北海道を旅行した。移動手段は、メンバーの親から借りた都合二台の車だ。うち二名は、東北の実家に帰省中だったので、東京方面から北上する途中で合流する。ついでに、そのうちの一軒にひと晩泊めてもらうことになっていた。当時もおそらく今も、学生は節約旅だ。雨風がしのげて、
辛酸なめ子『電車のおじさん』
おじさんだらけの日本で、おじさんへの応援と感謝を込めて……  日本の平均年齢は47歳、という数字を先日目にしました。日本はほぼおじさん、おばさんだらけの国。それなのに存在感が薄かったり、力を発揮できない中高年世代が多い気がします。森首相の女性蔑視発言は問題ですが、おじさんたちも虐げられているように思います。家庭では疎まれ、仕事場では時代遅れだと言われ……。
一木けい『9月9日9時9分』
いつも言葉を探している 「嫉妬」と「埃」の区別がつかない。どちらのタイ語も無理やりカタカナにすれば「フン」だ。ネイティブの発音を聴くと違うのはわかる。でもその通りの音を正確に出すことができない。舌や歯などついているものは同じなのにどうして、といつも思う。
ハクマン55回
「月初の呼札を紙屑に変えた奴だけが集うサロンへようこそ」これは一時期、私が月初めに必ずツイッターでつぶやいていた言葉である。ソシャゲの「FGO」で…
武田綾乃「おはようおかえり 京は猫日和」 第4回「思い出の京の味」
 ──おとなは、だれも、はじめは子どもだった。(しかし、そのことを忘れずにいるおとなは、いくらもいない。)初めてこの文章に触れたのは、確か小学生の高学年の頃だった。フランス人飛行士であり作家でもあったアントワーヌ・ド・サン=テグジュペリの名作小説『星の王子さま』の一節だ。
若松英輔「光であることば」第3回
詩を書くことでいのちの燈火を燃やし続けた若松さんにとって「詩歌のちから」 とは── 静寂の音信おとづれ  世の人々は悲しむ者を励ます。悲しむことは不幸である。早く悲しみを乗り
ハクマン54回バナー
最近「Clubhouse」という新しいSNSが話題になっている。 「Clubhouse」については、この連載以外で何度も話題に出しているため、読者によっては「またその話かよ」「使っても
手嶋龍一『鳴かずのカッコウ』
無名の諜報機関に降臨した若者 旧知の英国人が一か月に及んだ日本滞在を終えて帰国するという。その前日、皇居の濠を望むホテルのラウンジで雑談をしていた。初めての日本では随分苦労したらしいが、この国はとても気に入ったらしい。そんな彼が突然真顔で一つだけ教えてほしいと言う。
宮﨑真紀『おばあちゃん、青い自転車で世界に出逢う』
90歳のおばあちゃん、哲学の旅  メキシコのオアハカでひとり暮らす90歳のマルおばあちゃんが、会ったこともなかったたった1人の孫を探しに、ターコイズブルーの自転車に乗って、海辺
スピリチュアル探偵
折しものコロナ禍で、人々の働き方や生活様式は大きく変わりました。僕のような物書き稼業の者にしても、取材や打ち合わせがオンライン化され、移動の負荷は少なからず軽減されています。 そうして
三浦裕子『リングサイド』
熱くて真剣でおかしくて切ない 台湾の若手作家、林育徳の『リングサイド』は、プロレスをめぐる10篇の連作短編小説。プロレスがとてもマイナーな娯楽である台湾で、プロレスにうっかり出会ってしまい、なぜか深く魅了されてしまった市井の人々のストーリーです。
思い出の味 ◈ 望月麻衣
 デビューする前、私はまだ幼い子の育児に奮闘する専業主婦でした。子どもを幼稚園に送り出した後、執筆した作品を小説投稿サイトに掲載し、更新するのが何よりの楽しみという毎日。
ハクマン53回
まだこの原稿は担当の催促を受ける前に書いているが、今年に入って既に10回は「あの件はどうなった?」という催促を受けている。 これが一会社員だったら、とっくの昔にクビ、と言いたいところだ
武田綾乃「おはようおかえり 京は猫日和」 第4回「思い出の京の味」
 正常性バイアスという心理学用語がある。自分にとって都合の悪い情報を軽視したり、何か予想外のことが起きた時にあくまで日常生活の延長上の出来事だと思い込もうとしたりする人間の特性のことだ。私は
 この度、はじめて文庫で本を出版させていただきました。単行本は、これまでも、何度か出版した経験がありましたが、文庫となると、また違う嬉しさがありました。私は、一九九八年に神保町の古本屋に就職したので、その後の茅場町、今の銀座と、かれこれ二十三年のあいだ、本を販売する仕事をしています。また本書にも書いた通り、それ以前も、
ハクマン52回
現在2度目の緊急事態宣言が発令されているはずである。とは言っても、我が県は政府に最後まで忘れられている47都道府県目の座を、いつも鳥取あたりと競っている強豪県なので当然発令されていないのだが
若松英輔「光であることば」第2回
二度目の緊急事態宣言発令直後に若松さんが書く「死」のこと、人生における「居場所」のこと―― 人生の門  悲しみや苦しみを生きるとき、まったく励まされないのも寂しいのかもし