【ランキング】人気ベストセラー作品の競演が継続中! ブックレビューfromNY<第26回>

NY在住のジャーナリスト・佐藤則男が紹介する、アメリカのベストセラー事情と、注目の一作をピックアップするコラムの26回目。今回のランキングは、ホリデーシーズンということで新作の出版はあまりなく、すでに出版されているベストセラー作品の競争となっています。その中から、2017年のGoodreads Choice賞を取った作品を紹介します!

<第26回>2017年Goodreads Choice賞に選ばれた中国系アメリカ人女性作家の小説

26書影_
Little Fires Everywhere/ by Celeste Ng
Penguin Press. 2017.338ページ. US$27.00

今月のベストセラー事情

2018年最初の「ニューヨーク・タイムズ ベストセラー事情」は、ハードカバー・フィクション部門のトップ10 (2018年1月7日の週)[1] を紹介する。

1.Rooster Bar

By John Grisham
Doubleday

マーク、トッド、ゾラの3人は、希望に燃えてロースクールに入ったものの、3年生にもなると現実が見えてきた。莫大な学生ローンを抱え、もうけ主義の三流ロースクールを卒業したところで、司法試験に受かる可能性はほとんどなかった。怪しげなヘッジファンドの会社が自分たちのロースクールと学生ローンの銀行の所有者だと気付いたとき、この3人は大掛かりなロースクールをめぐる詐欺事件に気付いた。そしてこの詐欺事件を公にすることで、自分たちの学生ローンをチャラにできるのではないかと期待し行動を起こしたが……。
(ベストセラー9週目)


2.Origin

By Dan Brown
Doubleday

ハーバード大学の宗教象徴学のロバート・ラングドン教授は元教え子のIT富豪エドモンド・キルシュの招きでスペインのグッゲンハイム美術館のイベントに参加した。そこで《生命の起源》と《人類の運命》に関する重要な科学的発見を発表する予定だったエドモンドは発表直前に招待客の目の前で何者かに暗殺されてしまった。エドモンドの遺志を継いで、ラングドンはこの新発見を世界に公表すべく、エドモンドの開発した「ウィンストン」という名の人工知能の助けを借りバルセロナへと向かった。「ロバート・ラングドン」シリーズ5作目。
(ベストセラー12週目)


3.The People vs. Alex Cross

By James Patterson
Little, Brown

アレックス・クロスは殺人の疑いで被告として裁判を待つ身になっていた。そんな時、元同僚が助力を求めてきたので、捜査に協力することにした。
(ベストセラー5週目)


4.Artemis

By Andy Weir
Crown

月の最初で唯一の都市、アルテミスで生活するには大金持ちの旅行者かエキセントリックな億万長者でなければ困難だ。莫大な借金を抱え、ポーターの仕事では、アパートの家賃すら払えないのだが……。
(ベストセラー6週目)


5.The Midnight Line

By Lee Child
Delacorte
リーチャーはウィスコンシン州の小さな町を散歩中、質屋のショーウィンドウにウェストポイント(陸軍士官学校)の2005年クラス・リングが飾られているのを見た。小さなリングだったので持ち主は女性だったと推測された。4年間の厳しい訓練の末に手に入れたはずのこのリングを手放さなければならなかったのは、よっぽどの理由があったのだろうと考えたリーチャーは、この女性を探し出し、リングを返そうと思った。「ジャック・リーチャー」シリーズ22作目。
(ベストセラー7週目)


6.Year One

By Nora Roberts
St. Martin’s

疫病があっという間に世界中に蔓延し大混乱となった。生き残った人々は混乱を逃れ西へ向かって旅をした。
(ベストセラー3週目)


7.Tom Clancy Power and Empire

By Marc Cameron
Putman

アメリカ大統領のジャック・ライアンは中国政府からの攻撃的な挑戦への対応に追われていた。アフリカの石油プラットフォームへの攻撃、アメリカの駆逐艦へのテロ攻撃、そして嵐で遭難したアメリカのスパイ船は中国の手に落ちてしまった。差し迫ったG20サミットを前に、ライアン大統領のできることは非常に限られていた……。
(ベストセラー4週目)


8.End Game

By David Baldacci
Grand Central

アメリカ合衆国政府はウィル・ロビーとジェシカ・リールに国家の安全と機密に関する数々の危険な任務を与えてきた。この2人を背後で管理していたのが、「ブルーマン」というコード名を持つ男だった。このブルーマンがバケーション中に故郷のコロラドでフライフィッシングをしていたのを最後に忽然と姿を消した。ロビーとリールは捜査に乗り出した。「ウィル・ロビー」シリーズ5作目。
(ベストセラー6週目)


9.Sleeping Beauties

By Stephen King and Owen King
Scribner

何かが起こり女たちは眠り、ガーゼの様なもので繭のように包まれた。もし目覚めたり、繭が破られたりすると彼女たちは狂暴になる。ところがイーヴィーひとりがこの不思議な眠り病にかからなかった。
(ベストセラー13週目)


10.Little Fires Everywhere

By Celeste Ng
Penguin Press

クリーブランドの郊外のシェイカー・ハイツはすべてが区画どおりで平穏な住宅地だった。そこにアーティストでシングル・マザーのミア・ウォーレンと娘のパールが引っ越してきた。ミステリアスな過去を持ち、自分を貫く態度を取るミアはこの住宅地の秩序をかき乱したと、ルール重視のミセス・リチャードソンは、そんなミアの過去を暴くことで彼女に対抗しようとしたが……。
(ベストセラー14週目)


日本と同様アメリカもクリスマスから年末年始にかけては、ホリデーシーズンということで新作の出版はあまりなく、すでに出版されているベストセラー作品の競争となっている。というわけで7作品がすでに先月あるいはその前のリストに登場した作品だ。

ところで、アメリカにはGoodreadsという読者のための本の「ソーシャル・カタログ」(Social  catalogue)サイトがある。メンバーになった個人は自由にGoodreadsのデータベースで本や本のレビュー・注釈を検索することができる。現在はアマゾン(Amazon.com)の子会社になっているが、もとは2006年12月にオーティス・チャンドラー2世というITエンジニア・起業家によって、「人々が読みたい本を探し、好きな本に関する情報を他の人と共有することを目的」として立ち上げられたサイトで、立ち上げから1年後の2007年12月にはすでにメンバー数は65万人以上になっていた。2012年11月までにはメンバー数は1200万人に増え、2013年3月、アマゾンはGoodreadsの買収を発表した[2] 。このGoodreadsが毎年末に、ジャンルごとにメンバー投票でその年のGoodreads Choice 賞を決めている。例えばミステリー・サスペンス部門では、6月にこのコラムでレビューしたPaula Hawkins の“Into the Water”が賞を取り(48,247票)、11月にレビューしたDan Brownの“Origin”が小差で2位(48,070票)になっている[3] 。今月のリストに載っているAndy Weir の“Artemis”はサイエンス・フィクション部門の、そしてStephen Kingの“Sleeping Beauties”はホラー小説部門の賞を取っている[4]

[1] “A version of this list appears in the January 7, 1918 issue of The New York Times Book Review. Rankings reflect sales for the week ending December 23, 2017. Lists are published early online.”(このベストセラー・リストは2018年1月7日のニューヨーク・タイムズ紙ブックレビュー欄に掲載。リストは2017年12月23日で終わる週の売り上げをもとに作成されている)
[2] https://en.wikipedia.org/wiki/Goodreads
[3]https://www.goodreads.com/choiceawards/best-mystery-thriller-books-2017
[4]https://www.goodreads.com/choiceawards/best-books-2017

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