【先取りベストセラーランキング】飛行機墜落事故で、ただひとり生き残った少年の「奇跡」と「苦悩」 ブックレビューfromNY<第51回>
NY在住のジャーナリスト・佐藤則男が紹介する、アメリカのベストセラー事情と、注目の一作をピックアップするコラムの51回目。今回は、アメリカ・コロラド州で墜落し、191人の乗客・乗員が犠牲となった飛行機事故で、唯一の生き残りとなった少年の物語を紹介します。
<第51回>飛行機事故で生き残った少年の「機上の奇跡」と「苦悩の6年間」
Dear Edward/ by Ann Napolitano
Dial, 2020.352ページ. US$27.00
今月のベストセラー事情
今月の「ニューヨーク・タイムズ ベストセラー事情」は、ハードカバー・フィクション部門のトップ10(2020年2月2日の週)[1]を紹介する。
1.Where the Crawdads Sing
By Delia Owens
Putnam
1969年、ノースカロライナ州の静かな町でチェース・アンドリュースの死体が発見された時、地元の人たちは、湿地帯で一人暮らしをし、「湿地帯の娘」と呼ばれていた若い女性を犯人だと思った。
(ベストセラー72週目)
2.Lost
By James Patterson and James O. Born
Little, Brown
トム・ムーンはマイアミのことを知り尽くしている。フットボール奨学金でマイアミ大学へ行き、卒業後、警察官となりマイアミ市の安全を守ってきた。今、FBIタスクフォースの新しいリーダーとして、国際的な犯罪と戦っている。ムーンのFBIチームは、「血の兄弟」と呼ばれる2人のロシア人の兄弟によって作られた国際的犯罪シンジケートからマイアミを守るために、仁義なき戦いに巻き込まれていった。
(ベストセラー初登場)
3.Dear Edward
By Ann Napolitano
Dial
2013年6月12日、ニュージャージー州ニューアーク空港からロサンゼルス空港に向かう飛行機はコロラド州北部に墜落した。この事故で、191人の乗客、乗員が死亡し、12歳の男の子だけが助かった……。
(ベストセラー2週目)
4.Such a Fun Age
By Kiley Reid
Putnam
25歳の黒人女性エミラは、裕福な白人の家で、2人の小さなの女の子のベビーシッターをしている。ある夜、ベビーシッター中に2歳の女の子を連れて高級スーパーマーケットに入ったエミラは、白人の女の子を誘拐する黒人の誘拐犯に間違われてしまった……。
(ベストセラー3週目)
5.The Guardians
By John Grisham
Doubleday
フロリダ北部の小さな町で若い弁護士が銃殺された。犯人は何の痕跡も残さず現場のオフィスを立ち去り、目撃者もいなかった。しばらくして、警察はクィンシー・ミラーという若い黒人の男を逮捕した。クィンシーは無実を訴えたにもかかわらず、終身刑の判決を受けた。22年後、彼は獄中から「ガーディアン」という名の小さなグループに無実を訴える手紙を書いた。グループの創設者、弁護士であり牧師のカレン・ポストは、この件を調査するためにフロリダに向かった……。
(ベストセラー14週目)
6.Moral Compass
By Danielle Steel
Delacorte
マサチューセッツ州のエリート私立学校「セント・アンブローズ」は、元は男子校だった。共学になった年のハロウィンの翌日、女子生徒が病院に担ぎ込まれ、多量のアルコールが体内から検出された。何が彼女に起こったのか? 彼女が襲われた時、近くには数人の生徒しかいなかった。彼らは起こった事を秘密にし、決して誰にも話さないと誓い合った。そしてこの出来事は、関りのあった生徒たちの家族や生徒たち自身の将来に暗い影を落とすことになった。
(ベストセラー2週目)
7.The Dutch House
By Ann Patchett
Harper
第二次大戦後、シリル・コンロイは貧しさの中から巨大な富を築き上げ、オランダ人によって建てられたフィラデルフィア郊外の邸宅を購入した。息子のダニーとその姉のミーヴは成人になった時、生まれ育ったこの家から去った。そして裕福だった姉弟はたちまちにして財産を失った。その後50年間、貧しさの中でお互いを慰めあっていた姉弟は、ついに試練の時を迎えた……。
(ベストセラー17週目)
8.The Silent Patient
By Alex Michaelides
Celadon
アリシア・ベレンソンは有名な画家で、今を時めくファッション・フォトグラファーの夫を持ち、ロンドンの一等地に住み、幸せの絶頂のように見えた。しかしある夜、帰宅した夫のガブリエルの顔面に、アリシアは5発の銃弾を撃ち込んだ。そしてその後、彼女は一言も話さなくなった。犯罪心理療法士のセオ・フェイバーはアリシアの治療をすることになった。
(ベストセラー33週目)
9.The Giver of Stars
By Jojo Moyes
Pamela Dorman/Viking
1930年代の終わり頃、アリス・ライトは裕福なアメリカ人のベネット・ヴァンクリーブとの結婚を衝動的に決意して英国を離れ、ケンタッキー州で結婚生活を始めた。冒険であると同時に現実からの逃避のつもりの結婚だったが、夫は妻を顧みず、威圧的な父親の言いなりで、全くの期待外れだった。そんなアリスは、町で厄介者扱いされているマージェリ・オヘアと知り合った。マージェリの貧しい人々へ本を届ける移動図書館の活動に賛同したアリスやほかの女性たちは、周囲の反対や妨害にもかかわらず活動を続け、女性の自由や友情に目覚めていった。実話にインスパイアされて書かれた小説。
(ベストセラー15週目)
10.Long Bright River
By Liz Moore
Riverhead
子供の頃はいつも一緒だった姉妹のケーシーとミッキーだが、今やケーシーは薬物中毒になり路上生活、ミッキーは警察官になっている。ある日、ケーシーが行方不明になり、同時期に謎めいた連続殺人事件がミッキーの担当地区で起こった。ミッキーは、早く殺人犯とケーシーの両方を捜さなくてはならないと焦る……。
(ベストセラー2週目)
ベストセラー72週目になる“Where the Crawdads Sing”は1位の座を保ち、ますます快調だ。それ以外は、2020年になってから出版された新刊本と、2019年評判になった本がリストの10位以内を占めている。
今月は、2020年1月に出版されたアン・ナポリターノの“Dear Edward”を紹介したいと思う。先週2位で初登場し今週3位にランクされている。
[1]“A version of this list appears in the February 2, 2020 issue of The New York Times Book Review. Rankings reflect sales for the week ending January 18, 2020.” (このベストセラー・リストは2020年2月2日のニューヨーク・タイムズ紙ブックレビュー欄に掲載。リストは2020年1月18日で終わる週の売り上げをもとに作成されている。)
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