【先取りベストセラーランキング】ホラーの巨匠、スティーヴン・キングの中編小説集 ブックレビューfromNY<第56回>

NY在住のジャーナリスト・佐藤則男が紹介する、アメリカのベストセラー事情と、注目の一作をピックアップするコラムの56回目。今回は、スティーヴン・キングの2018年のベストセラー『アウトサイダー』の続編を含む、4つの怖い話を収録した一冊を紹介します。

<第56回>『アウトサイダー』の続編を収録した中編ホラー小説集


If It Bleeds/ by Stephen King
Scribner, 2020.448ページ. US$30.00

今月のベストセラー事情

今月の「ニューヨーク・タイムズ ベストセラー事情」は、ハードカバー・フィクション部門のトップ10 (2020 年7月5日の週)[1]を紹介する。

1.28 Summers

By Elin Hilderbrand
Little, Brown

2020年の春、リンク・ブレシングは死の床にある母マロリーからある電話番号へ電話するよう指示された。電話の相手はジェイク・マクラウド、大統領選挙の有力候補者アーシュラ・デガーンジーの夫だった。なぜ母はジェイクのことを知っているのだろうか?とリンクは戸惑った……。
(ベストセラー初登場)


2.Where the Crawdads Sing

By Delia Owens
Putnam

1969年、ノースカロライナ州の静かな町でチェース・アンドリュースの死体が発見された時、地元の人たちは、湿地帯で一人暮らしをし、《湿地帯の娘》と呼ばれていた若い女性を犯人だと思った。
(ベストセラー94週目)


3.Camino Winds

By john Grisham
Doubleday

カミノ・アイランドを大型ハリケーンが襲った翌朝、小説家ネルソン・カーが死体で発見された。強風で折れた大量の木の枝や瓦礫の中に横たわっていたので、一見、ハリケーンによって死んだと思われた。しかし、島の書店主ブルース・ケーブルとその仲間は、ネルソンが殺されたのではないかと疑った……。3年前ベストセラーとなったCamino Islandの続編。
(ベストセラー8週目)


4.The Vanishing Half

By Brit Bennett
Riverhead

南部の小さな黒人コミュニティで生まれ育った双子の姉妹は16歳の時、家出をした。そして10年後、一方は故郷の黒人の町に戻り、黒人の娘と暮らし、もう一方は白人に成りすまし白人と結婚していた。しかし、離れ離れになり全く異なった暮らしをしていた2人の運命は複雑に絡み合っていく。
(ベストセラー3週目)


5.The Summer House

By James Patterson and Brandan DuBois
Little, Brown

ジョージア州の田舎の湖のほとり、かつては贅沢な避暑地だった小さな町で、7人が殺害された。どうやら最近アフガニスタンから戻った4人の陸軍特殊部隊員がこの事件に絡んでいるようだ。陸軍は、退役軍人でニューヨーク市警の元刑事ジェレマイア・クックに捜査を依頼したが、地元警察は陸軍の介入を歓迎しなかった。
(ベストセラー2週目)


6.If It Bleeds

By Stephen King
Scribner

4編の中編小説を収めた小説集。その中の1つ、本と同じタイトルの作品には、昨年ベストセラーになったThe Outsiderで刑事ラルフ・アンダーソンとともに活躍した私立探偵ホリー・ギブニーが登場する。その他Mr. Harrigan’s Phone、The Life of Chuck、Ratの3作品が収められている。
(ベストセラー9週目)


7.Deacon King Kong

By James McBride
Riverhead

1969年、ニューヨーク市ブルックリン区で、《スポーツ・コート》というあだ名の教会の助祭は、公衆の面前で、いきなり麻薬ディーラーを38口径の銃で射殺した……。
(ベストセラー3週目)


8.Fair Warning

By Michael Connelly
Little, Brown

ベテラン・ジャーナリストのジャック・マクエボイは、かつて一夜限りの関係を持ったことのある女性が殺害されたことをきっかけに、この事件が他の全国の未解決殺人事件と絡んでいることに気付いた。しかし、その時、彼自身がこの連続殺人事件の容疑者になっていた……。「ジャック・マクエボイ」シリーズ3作目。
(ベストセラー4週目)


9.The Guest List

By Lucy Foley
Morrow

アイルランド沖の小さな島で豪華な結婚式が行われた。花婿は今売り出し中のハンサムなテレビ俳優、花嫁は雑誌の発行者で、この結婚式の一切はその雑誌の記事になる予定だった。完璧に計画された結婚式だったが、出席者たちはそれぞれ色々な思いを心に秘めていた。そして出席者の一人が死んだ……。
(ベストセラー3週目)


10.Devolution

By Max Brooks
Del Rey

ワシントン州のレーニア山の噴火が収まった後、倒壊した町の瓦礫の中から住民ケイト・ホーランドの日記が発見され、その中には《ビッグフット》[2]との遭遇について書かれていた。はたしてこの伝説の生き物は、実存するのか否か?
(ベストセラー初登場)


2位になってしまったがWhere the Crawdads Singはベストセラー94週目で、相変わらず堅調だ。先月レビューしたCamino Winds は3位で8週目に入っている。

今月は9週間前に1位で初登場して以来、9週連続でベストセラー・リストに載っているスティーヴン・キングのIf It Bleedsを紹介したい。

[1]“A version of this list appears in the July 5, 2020 issue of The New York Times Book Review. Rankings reflect sales for the week ending June 20, 2020.” (このベストセラー・リストは2020年7月5日のニューヨーク・タイムズ紙ブックレビュー欄に掲載。リストは2020年6月20日で終わる週の売り上げをもとに作成されている。)
[2]ビッグフット(Bigfoot)は、アメリカ合衆国で目撃されるUMA(未確認動物)、または同種のUMAの総称である。先住民の間に伝わるサスクワッチ、サスカッチ(Sasquatch)と同一視される場合もある。

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