はらだみずき『太陽と月 ジュニアユース編』

はらだみずき『太陽と月 ジュニアユース編』

〝サッカー〟をわざわざ小説で読む必要なんてあるのか?


 最近の僕は、プレミアリーグ、ブライトンFC所属の三笘薫、MLB、エンゼルス所属の大谷翔平に夢中である。試合のダイジェスト映像での観戦が主ながら、欠かすことはない。

 便利な時代になったものだと思う。今やスポーツの試合観戦の方法はいくつもの選択肢が存在する。

 とはいえ、インターネットで試合を観戦できようが、今も多くの人がスタジアムに足を運ぶ。よりリアルを求めているからだろう。そして、おそらくそのほうが心地よいからだ。

 そんななか、僕はスポーツの、サッカーの小説を書き続けている。リアルスポーツを楽しむ方法がこんなにも多く存在する、というのに。

――なぜだろう?

 僕にサッカーに対する想いやある種の特別な経験がないのであれば、なにも小説の題材としてサッカーを選ぶ必要はない。

 それ以前に書くことは叶わなかったはずだ。

 ならば、なぜ書くのか、といえば、やっぱりサッカーが好きであり、サッカーを文字で表すのが楽しいからだ。

 しかし一方で、〝サッカー〟をわざわざ小説で読む必要なんてあるのか? という声だってあるだろう。

 その疑問に僕は答える立場にない。

 書き手としては、小説という表現方法において、リアルのサッカーでは伝えられないなにかを見つけ出し、表したい。言葉による臨場感、別次元でのサッカーのリアルを演出できれば。

 そんな想いを抱いて書いたのが、この度発売される『太陽と月 ジュニアユース編』になります。サッカー小説を書き続けることで、〝読むサッカー〟の世界が少しでもひろがってくれれば、そう願っています。

 


はらだみずき
千葉生まれ。2006年『サッカーボーイズ 再会のグラウンド』でデビュー。「サッカーボーイズ」シリーズ、「海が見える家」シリーズがベストセラーとなる。他の著書に、『帰宅ボーイズ』『やがて訪れる春のために』などがある。

【好評発売中】

太陽と月 ジュニアユース編

『太陽と月 ジュニアユース編
著/はらだみずき

むちゃぶり御免!書店員リレーコラム*第11回
採れたて本!【海外ミステリ#08】