大人の恋愛小説オススメ5選

ここのところ何かと不倫騒動がマスコミや世間を賑わせています。皆さんは不倫の恋や大人の恋愛についてどんなイメージをお持ちでしょうか。楽しいだけの恋とは違う、少しほろ苦い大人の恋愛を、小説の世界で味わってみてはいかがでしょうか。今回はそんな切ない大人の恋愛を描いた小説をご紹介します。

1.『夜明けの街で』東野圭吾著

夜明けの街で
出典:http://www.amazon.co.jp/dp/404371808X

真面目な男がはまり込んだ不倫の恋と、15年前の事件が絡みあうミステリーです。大手建設会社に勤める渡部は、妻と娘に囲まれ幸せな生活を送っていました。しかし同じ会社に勤める派遣社員の秋葉と出会い、2人は不倫の関係に。以前は「不倫をする奴なんて馬鹿だ。」と言っていた渡部ですが、秋葉に対する思いが止められなくなります。秋葉に出会って久しぶりに恋をする楽しさや喜びに満たされる渡部。その心理描写が素晴らしく、渡部の心の深まりがうまく表現されています。東野作品らしいミステリーの要素も楽しめますが、同時に不倫の恐ろしさが実にリアルに描かれています。

幸福な家庭で起きた殺人事件。まもなく時効を迎える。僕はその容疑者と不倫の恋に堕ちた――。

2.『東京タワー』江國香織著

東京タワー
出典:http://www.amazon.co.jp/dp/410133921X

同じように年上の主婦と不倫をしている2人の男子大学生の恋愛模様が描かれている作品です。主人公である2人の大学生の目線で語られています。1人目の大学生、透は母親の友人である詩史と不倫関係にあります。自分の生活のすべてが詩史に関連したものになるほど、透は夫のいる詩史に夢中になっていきます。そしてもう1人の大学生、耕二は大学生の彼女がいながら、主婦の喜美子と不倫関係にあります。夫や家庭に不満がある喜美子は耕二に思いを傾けていきます。いけないことだとわかってはいても気持ちを抑えられない、そんな葛藤に苦しむ恋愛の物語です。

夫もいる年上の女性と大学生の少年。東京タワーが見守る街で、二組の対極的な恋人たちが繰り広げる長篇恋愛小説。

3.『サヨナライツカ』辻仁成著

サヨナライツカ
出典:http://www.amazon.co.jp/dp/434440257X

中山美穂、西島秀俊主演で映画化され、原作と合わせて映画も大ヒットとなりました。タイを舞台に、婚約者のいる男と美しくミステリアスな女性とのラブストーリーが描かれています。主人公の豊は、海外赴任でタイに来ている好青年のエリートビジネスマン。もうすぐ、日本にいる婚約者とタイで結婚式を挙げる予定です。ある日パーティーで豊は美しく魅力的な女性、沓子に出会います。誘われるまま豊は沓子と関係を持つようになっていきます。豊はもうすぐ結婚してしまう運命、それでも沓子は豊を想う気持ちが抑えきれず…。結ばれないとわかっていても、それでも豊を愛し続ける沓子の姿に心を打たれます。

“好青年”と呼ばれる豊は結婚を控えるなか、謎の美女・沓子と出会う。そこから始まる激しく狂おしい性愛の日々。二人は別れを選択するが二十五年後の再会で…。

4.『恋愛中毒』山本文緒著

恋愛中毒
出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4041970105

第20回吉川英治文学新人賞を受賞した作品です。平凡な女性が自分をコントロールできないほど恋に溺れていく様子が描かれています。主人公は、弁当屋で働く水無月美雨。美雨はファンであった人気作家の創路功二郎に誘われて愛人となります。人を好きになると愛しすぎてしまう美雨は、相手を思う気持ちが強すぎて今まで恋愛で失敗を繰り返しています。愛しすぎるのはよくない、自分ではそう思っていても気持ちを抑えられない美雨。誰もが1度は経験したことのあるような切ない気持ちになり、心が苦しくなってきます。

世界の一部にすぎないはずの恋が私のすべてをしばりつけるのはどうしてなんだろう。もう他人を愛さないと決めた水無月の心に、小説家創路は強引に踏み込んで――。

5.『残りの雪』立原正秋著

残りの雪

主人公の里子は、夫が蒸発してしまったため子供を連れて鎌倉の実家に帰ります。傷心を抱えて骨董屋で働き始めた里子は、会社社長で骨董の目利きである坂西浩平と出会います。お互いに家庭がある身でありながら、惹かれあっていく里子と坂西。ネットやスマホがない時代の、ただお互いを求めあう2人の激しくもひたむきな恋愛が描かれています。恋愛だけでなく、鎌倉の美しい街並みや移り変わる季節の描写も鮮やかです。激しく美しい恋愛小説の傑作となっています。

古都鎌倉に美しく燃え上がる宿命的な愛

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最後に

恋愛をしていない時は、小説の世界で恋の楽しさや切なさを味わうのもおすすめです。単純な恋愛小説では物足りないという方は、切なくもほろ苦い大人のラブストーリーを楽しんでみてください。

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初出:P+D MAGAZINE(2016/10/26)

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