「タワー積み」の手法で読者の心をわしづかみ!個性が光る【三省堂書店神保町本店】 本屋さんへ行こう!~この本屋さんがおもしろい~

連載Vol.2は、神保町のランドマークとも言える「三省堂書店神保町本店」を紹介。本のディスプレイの仕方にはココだけの工夫が!書店員さんの熱いインタビューも必見です。

【第2回】三省堂書店神保町本店

全国に数多くある書店の中から、毎回1店舗をクローズアップして、その特徴や個性に迫るこの連載。

2回目は、「三省堂書店神保町本店」を紹介します。

開業は1881年という老舗には、ココだけにしかない特別な魅力が溢れていました。

※DSC_5511

古き&新しき長所が融合した名店の工夫

神田神保町1-1にて創業。

世界に冠たる「本の街」の、ど真ん中でもあるこの地で、開業135年という歴史を紡いでいるのが、神保町のランドマークと称される「三省堂書店神保町本店」です。

売り場面積は約1000坪。

国内外に50店舗以上を構える大型書店「三省堂書店」の第1号店です。

「本のデパート」とも言える広さと書籍数を誇り、一般書、専門書、コミック、参考書、文具まで、その品揃えには定評があります。

「三省堂」の屋号は、論語の「学而篇」に由来するそうで、「吾日三省吾身」(私は一日に三度自分の行いを反省する)という意味が込められているとのこと。

「お客様の層としては、古くから通ってくださる方がとても多いです。親子2代、3代に渡って来てくださるお客様もいらして、嬉しい限り。遠くからわざわざ来てくださる方も多いので、お探しの本が必ず見つかるように、ぜひご希望に添えるように、と常に願っています

そう語るのは、三省堂書店に勤務して25年になるという、営業企画室の内田剛さん

※DSC_5489

「135年続いてきた、老舗ならではの良さを、守っていきたいんです。古くから変わらない安定感や安心感に加え、それだけではなく、常に新しいものを取り入れているところが、三省堂書店神保町店の良さ。いつも変化を欠かさないところと、普遍的なところ、この二つの長所がミックスされているんですよ。」

長きに渡って愛され続けている名店だけに、細やかなところに配慮が行き届いていることは、店内に一歩入れば一目瞭然。

「とても広い店舗なので、お客様がいかにわかりやすく本を探せるか、それを第一に考え、ディスプレイ表示を大きくするなど工夫をしています。迷っているお客様はいないか、常に気を配り、お声掛けもするようにしていますね。」

細やかに行き届いている工夫の陰には、どんな仕掛けがあるのかをお聞きすると、

「三省堂書店では数年前から、リサーチ会社に依頼して「行動観察の手法」を活用しています。お客様の行動分析を行って、それを店舗づくりに有効に反映させているんです。データに基づいて陳列を行っているというわけなんですよ。」

客がどの売り場から見て、どこに長く滞在し、どこで本を手に取るか。世代、性別、ニーズによって細かく変わっていくその動きを、科学的な手法でモニタリングし、分析する。

「これを導入してから、お客様がどこで困っているか、迷っているかを探り出せるようになり、どのように店内を回遊しているのかなども調査可能になりました。欲しい本が探せない方がひとりも居なくなるように、問題箇所をひとつひとつ潰していく。こうして日々改善を行っていくことで、確実に、ニーズに応えられる書店に育ってきたと思います。」

確かに、店内の表示は文字や矢印の表示が大きくてわかりやすく、欲しい本のジャンルがあるエリアに、迷わずたどり着けるようになっています。

更に、随所にスタッフもいるので、探している本が見つからない時にはすぐに聞けば、簡単に見つけることができます。

なぜ、こんなに広いのに、わかりやすい商品配置ができているのでしょうか?

「書店員を25年やっていると、目先のことしかわからなくなるものなんです。それだけでは絶対にダメ。書店員目線ばかりになってしまわないように、時には外に出て、お客様の目線に立ってみる“訓練日”を作るようにしています。そうしなければ、決して良い店づくりはできません。」

どうしたら読者の足を止めることができるか、そればかりをひたすら考えて、訓練を積むのが内田さんのやり方。

まず、足を止めてもらうことです。そうしなければ、本を手にとってもらうことはできませんからね。」

そして、いかに人目を引くディズプレイをするかと考えて、生まれたのが、有名な「タワー積み」の手法。

※DSC_5257

度々テレビやマスコミで取り上げられることもある商品の配置方法ですが、この発祥の地が、三省堂書店神保町店であるとのこと。

その積み方の手法はどんどん進化していて、売り出したい本の主題などに合わせて、専門のスタッフが作り上げているといいます。

「過去に、村上春樹さんの新作が出たときには、2メートルくらい積み上げたこともあります」

まず第一に、目をひくことが大切。そして、足をとめてもらうことが重要

足をとめてもらわないと買ってはもらえない。これは揺るぎのない事実です。

キーワードは「未完成」。西岡文彦著の『謎解きモナ・リザ 見方の極意 名画の理由』を池内紀が読む!
近未来をシミュレーション!圧倒的リアリティ『尖閣ゲーム』について著者・青木俊に訊く!