【親友ってなんだろう?】女子大生が、川端康成の『親友』を読む。|文芸女子#1

本が大好きな美女をクローズアップ!推理小説が大好きだという「あずさ」さんに、川端康成の『親友』を読んでもらいました。彼女自身が考える、”友達”、”親友”とは。

本が大好きな美女をピックアップする「文芸女子」のコーナー第一弾。
今回は、ミステリーや推理小説が大好きな女子大生の「あずさ」さんに、60年ぶりに復刊された川端康成の幻の少女小説「親友」を読んでもらいました。

現役女子大生のあずささんをCLOSE UP!

文芸女子のあずささんプロフィール写真

ー自己紹介をお願いします。

みなさん、はじめまして。あずさです。
京都府出身、平成4年1月23日生まれ、水瓶座の23歳です。血液型はB型。

趣味は、一人旅・乗馬・食べ歩き。そして、何より「読書」!
本を好きになったのは、特にきっかけを覚えていないくらい自然なことで、気づいたら、本が大好きでした!

ー現在大学4年とのことですが(取材当時)、いつ、どんな本を読まれてきましたか?

幼稚園の頃は絵本が大好き。小学校低学年では「ハリー・ポッター」シリーズを、就寝時間が過ぎても、こっそり、毎晩何度も読み返していたほどです。
学校では、国語の教科書の物語を読むのが楽しみで、中でも江國香織さんの「亮太」という作品が大のお気に入り。
中学校に入ってからは、母の影響で、宮部みゆきさんや畠中恵さんの作品にハマり、高校生になってからは、綾辻行人さんの「館シリーズ」を集めていました。
本は、私の一番の「親友」なんです!

プロフィールを話すあずささん

ー好きな作家さんはいますか?

好きな作家は、辻村深月先生・湊かなえ先生・綾辻行人先生・道尾秀介先生、中村文則先生など。
挙げればキリがないほど、大好きな作家がたくさんいます。

ーマイブームは何ですか?

マイブームは、本棚を置くことができるような壁がいっぱいある物件を探すこと。
今は、本を入れている段ボールが重くなっていて、部屋の床がへこんでしまうほどなので…。
立派な本棚に、大好きな本をたくさん収納したいと思っています。

ー最後にひとことお願いします

読む本を選ぶときは、書店員さんのおすすめを参考にすれば間違いナシ!
これからもたくさんの本を読んでいきたいと思っています。

ーインタビューより


とにかく本が好きでたまらないあずささん。
何冊読んでも、まだまだ読みたい本がありすぎて、時間が足りないのが悩みだそう。

そんな大の読書家のあずささんが書いた、川端康成「親友」の感想文を、ぜひ読んでみてください。この作品の魅力がとてもよく伝わってきますよ。

川端康成「親友」を読んで

「親友って何なのだろう?」

それは、私がこの川端康成先生の小説「親友」を手に取った時の最初の感想でした。
もし、あなたが「友達何人いる?」と聞かれたら、「○人いるよ!」と明確な数を答えることはできますか?私は、できません。

なぜなら、「友達」って「なろうよ!」と言って、なれるものではないからです。「友達」って凄く曖昧なものだと私は感じています。こっちが一方的に「友達」だと思っていても、向こうは「知り合い」程度に思っていたり……。そんな「友達」というものさえ曖昧ななか、川端康成は、この作品を「親友」と名付けました。

「親友」とは、「友達」のなかでも、一番特別な存在。

そこで初めの疑問に返ります。「親友って何なんだろう?」そして、何故、川端康成はこの小説を「友達」ではなく、「親友」と名付けたのだろう。私は、それを感じながらこの本を開きました。

めぐみとかすみは、先生が従姉妹同士かと勘違いしてしまうほどに、容姿がそっくりな中学1年生の少女達です。はじめは、お互い、そんなに似ているのかとお互いの顔を見合ったりもしますが、誕生日まで同じだと知り、自然と仲良くなっていきます。しかし、彼女達の性格や家庭環境は、正反対でした。

めぐみは、4人もの弟や妹の姉であり長女、幼い弟妹の面倒を見て、我慢もできるしっかりもので穏やかな少女です。家もいつも明るくて、楽しい家庭です。
かすみは、そんなめぐみとは正反対で、家にはお父さんはおらず、お母さんとの二人暮らし、一人っ子のお母さんに甘えん坊で我儘娘。

一見、正反対の性格で衝突しそうな2人ですが、容姿も誕生日も彼女達にとっては、「友達」になるきっかけにしか過ぎず、この2人の正反対の性格こそが、2人の少女を「友達」から、「親友」に変えるきっかけになっています。

この小説を読んでいる間、私は自分の中学生時代を思い出しました。私は、中学生時代、高校時代を女子校で過ごしていて、私も、この二人のように、性格が正反対だけど、親友と呼べるような友人がいました。その子とは、私が東京に来たことによって、年に1回、会えるか会えないかになってしまったけれど、会った時には、何のブランクも気まずさも感じず、当時のように秘密の話をしたり、悩みを話合う仲です。

また、今では女子校特有なのかもしれませんが、「親友」でかすみの「お姉様」的な存在になる容子のような、憧れの先輩も私にはいました。

性格が正反対で、お互い理解出来ないところもあるし、好きだからこそ、相手に嫉妬してしまう部分もある。私だけでなく、女性なら誰もが、青春時代でも、今でも、友人に対してそんな感情を持ったことがあるのではないでしょうか?

女の子にとって、女友達というのは、家族よりも、男の子の友達よりも、なによりも特別な存在です。家族には言えない悩み、秘密の話、彼氏の話、女友達には包み隠さず喋ってしまう、女友達ってそんな、家族でも、恋人でもないけれど、もう一人の自分のような、衝突する時もあるけど、凄く愛おしいそんな特別な存在です。

「親友」では、そんな中学時代の少女達なら誰もが抱えていただろう、仲良しの友達に対する「好き」の気持ちや、相手が分からなくてモヤモヤする気持ち、仲良しの友達が急に自分を置いて遠くへ行ってしまったような焦りや虚無感、同性の先輩への憧れの気持ち、家族からみた自分の立ち位置など、今では、馬鹿らしく思ったり、忘れてしまっていたりしていたけれど、少女時代に確かに感じていた、強く複雑な感情が、とても繊細に、リアルに表現されていて「これは、本当に男の人の作品なの?」と感じてしまうくらいです。

明るい家庭で育ち、穏やかでしっかり者のめぐみ。寂しい気持ちを胸に抱えて育ち、少し我儘で甘えん坊、でも、とても友達が大好きなかすみ。

この小説を読んだ女性は、きっと、この正反対の少女2人の中に、当時の自分の面影を見るのではないでしょうか? 多くの女性が「あったあった」と頷いてしまい、場面ごとに、読む手を止めて、自分の少女時代を思い出す。そんな小説だと私は感じました。

また、この小説は、昭和29年に小学館の雑誌に掲載されていたということもあり、とても「レトロ」です。
今では失われたと言っても、過言ではない「~かしら?」や、「あら、いやだわ」などの可愛らしい、乙女心をくすぐるような、登場人物の言葉づかい。

めぐみとかすみは夏に、鵠沼の大きな西洋のお屋敷で、海で遊んだり、ピアノを弾いたり、一緒に絵を描いたり、夜には大きいレースの天蓋がついたベッドで二人並んで寝ます。
そんな童話のような乙女心をくすぐる世界観に、私は虜になりました。お屋敷や二人の友情を表す、美しい描写にまるで、自分もその「レトロ」な世界の少女になったような気分になります。

さらに作品中には、連載当時の世界観を象徴するような挿絵もそのまま入っていて、さらにイメージが広がり、小学生の時に読んだ、ファンタジー小説の世界観に夢中になった時と同じ気持ちを、この川端康成の「親友」でも味わうことが出来ました。

川端康成と聞くと、古臭いとか、難しそうというイメージを抱いていましたが、そのレトロさが、反対にファンタジー小説や童話のように、私を空想の世界に連れて行ってくれて、登場人物は、もう一度、少女時代に私が抱えていた、今はもう持つことのできない、甘くて複雑で可愛らしい気持ちを思い出させてくれました。

文:あずさ

川端康成の「親友」を持つ、あずささん

終わりに

あずささんの感想文はいかがでしたか?

あずささんの実体験と重なる部分もあるようで、感じたことがとてもリアルに伝わってきますね。
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初出:P+D MAGAZINE(2016/01/08)

『寺山修司からの手紙』
『ドルフィン・ソングを救え!』