文学的「今日は何の日?」【11/16~11/22】

あの名作が世に出た日。
憧れのヒロインの誕生日。
かの大作家の失恋記念日。
……そう、毎日が何かの記念日です。さて、今日は何の日でしょうか。
11月16日から始まる1週間を見てみましょう。

11月16日

探偵として独立した杉村三郎に初めての依頼が舞い込む――宮部みゆき「聖域」

日本屈指の大グループ企業・今多コンツェルン会長の娘婿となり、同グループ広報室に勤める元編集者・杉村三郎の活躍を描く、宮部みゆきの人気作「杉村三郎シリーズ」。しかし妻の不貞により離婚し、杉村は今多コンツェルンからも離れてしまいます。そして東京都北区の尾上町で探偵事務所を開業しました。短編「聖域」(『希望荘』所収)において2010年11月16日の朝6時半過ぎ、事務所の近所に住む女性2人が杉村を訪ねてきました。やはり近所に住んでいて、3月に亡くなったはずの三雲勝枝を、上野駅近くで目撃したというのです。他人のそら似? それとも……。杉村の地道な調査が始まります。


出典:https://www.shogakukan.co.jp/books/09386443

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11月17日

庄野潤三、宝塚トップスター・大浦みずきのさよなら公演へ――『鉛筆印のトレーナー』

宝塚歌劇団で花組トップスターとして活躍した大浦みずきは、童謡『サッちゃん』の作詞でも知られる作家・阪田寛夫の次女。「宝塚のフレッド・アステア」の異名をとるほどの、ダンスの名手でした。芸名の大浦みずきは、父の友人で同じく作家の庄野潤三がつけたもの。その大浦が宝塚を退団することになり、1991年11月17日、庄野は家族と共に「さよなら公演」を観に、日比谷の東宝劇場に向かいます。この日は、次男の娘である孫のフーちゃんも一緒でした。まだ5歳のフーちゃんは、初めての宝塚見物です。華やかな歌や踊りのほかに、難しいセリフもあるお芝居を、フーちゃんは楽しむことができたのでしょうか? 詳しくは『鉛筆印のトレーナー』でお確かめください。


出典:https://www.shogakukan.co.jp/books/09352386

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11月18日

ダンが取締役会で解雇される――ロバート・A・ハインライン『夏への扉』

タイムトラベルものの傑作として名高い、ロバート・A・ハインライン『夏への扉』。家事の自動化をめざす技術者ダンは、親友のマイルズと会社を興し、文化女中器ハイヤード・ガールなどの家事ロボットをヒットさせてきました。今はあらゆる家事を1台でこなす万能フレキシブルフランクを開発中です。機械の完成度よりも、早く売り出すことを優先したいマイルズとの間で対立が深まるなか、ダンを支えたのは恋人ベルと愛猫ピートでした。ところが1970年11月18日、取締役会での賛成多数により、ダンは万能フランクを取り上げられてしまいます。愛の証として株式を譲渡され、株主となったベルがダンを裏切ったのです。さらに重役会議で解雇も可決され、恋も仕事も失ったダンはピートと共に冷凍睡眠コールドスリープに入ることを考えますが……。


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11月19日

『サセックスの吸血鬼』事件でシャーロック・ホームズが受け取った紹介状の日付

その日受け取った手紙に目を通していたシャーロック・ホームズが、一通の手紙を読んでおかしそうに笑い出しました。11月19日付けのその手紙は、モリスン・モリスン・アンド・ドッド法律事務所からの紹介状で、吸血鬼に関する調査を依頼したい人物がいる、というのです。同時に本人からも手紙が届きますが、依頼人はワトソン博士の友人ロバート・ファーガスンでした。5年前に再婚したペルー人の妻が、先妻の子を叩いたり、実子の赤ん坊の首から血を啜ったりしているという相談だったのです。ホームズはワトソンと共に駆け付けますが、妻は部屋に閉じこもったきり。赤ん坊は乳母に預けられていました。果たして妻は本当に吸血鬼なのでしょうか?


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11月20日

自由律俳句の種田山頭火、生まれ故郷に近い下関で行乞する

山口県防府町(現在の防府市)で生まれた種田山頭火は、父の事業失敗のために1916年に妻子とともに熊本へ居を移します。その後、単身で上京、妻とも離別しますが、関東大震災で熊本に帰って寺男となり、1924年に出家しました。1930年9月9日、山頭火は何度目かの旅に出ます。行乞ぎょうこつをしながら人吉を経て宮崎県に入り、道中で国勢調査を受けたり、俳友と交流したりしながら鹿児島に行き、九州東岸を北上して門司に到着しました。ここでは俳友・源三郎宅に泊めてもらい、河豚をご馳走になっています。11月20日は源三郎に見送られて汽車で下関に向かい、3時間ほど行乞しました。「しぐるゝ朝湯もらうて別れる(源三郎居)」の句がこの旅の日記『行乞記』に残されています。


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11月21日

唐の皇帝・文宗が宦官の粛清を企てるが失敗――甘露の変

唐の大和9年11月21日、皇帝・文宗が権勢をふるう宦官の一掃を企てて失敗し、逆に腹心の宰相らが殺されて、自身は幽閉されるという事件が起きました。「吉兆である甘露が後苑に降った」と偽り、確認のためといって宦官たちを集めたことから、「甘露の変」と呼ばれます。詩人として名高い白楽天(白居易)は、このとき洛陽で暮らしていましたが、この事件を知るや「九年十一月二十一日、事に感じて作る」と題した七言律詩を書きました。「禍福はあまりにふたしかで予測することができない。しかし、おおむね早めに身を退いておくのが賢いようだ」と、潘岳はんがく石崇せきすうの例を引いて説いています。


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11月22日

主人公が遺産問題で弁護士を訪ねる――L・ノーフォーク『ジョン・ランプリエールの辞書』

詩人ジョン・キーツも愛読したという『古典籍固有名詞辞典』の著者を主人公に描く、ローレンス・ノーフォークの小説『ジョン・ランプリエールの辞書』。父の遺産問題でジョンが弁護士スキュワーに会いに行くのが11月22日です。ギリシャ神話のエピソードそのままに猟犬に噛み殺された父は、自分の死に関して「これ以上深追いはするな」「好奇心の虫は収まらないばかりか、復讐も果たせない」と、ジョンに宛てた最後の手紙に書き残していました。復讐とは、いったい……? 父が残した書類を整理するうちに、ジョンは東インド会社の秘密や結社〈カバラ〉をめぐる謎に巻き込まれていきます。神話と歴史の謎がもつれ絡まる、壮大な歴史ミステリーです。


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初出:P+D MAGAZINE(2020/11/16)

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