読みきり小説

▽▷△超短編!大どんでん返し▼▶︎▲ 翔田 寛「墓石」
「おばちゃん、元気にしているか?」  僕が擦り切れたジャンパーを脱ぎながら言うと、丸山克也はかぶりを振った。 「二年前に、死んだよ」 「無神経なことを訊いて悪かったな。でも、五年ぶりだから、昔が懐かし
▽▷△超短編!大どんでん返し▼▶︎▲ 呉 勝浩 「花火の夜に」
 待ち合わせはJR福島駅だった。大阪梅田からひと駅とはいえ、ふだんはこんな人ごみができる街じゃない。午後七時半を過ぎていた。すでに二十分、わたしは待ちぼうけをくっている。 「ごめん、遅れたあ」  黄色
▽▷△超短編!大どんでん返し▼▶︎▲ 法月綸太郎 「親友交歓」
 中学の同級生だったH君が電話をくれたのは、例の騒動がまだくすぶり続けていた頃である。声を聞くのは十数年ぶりだったが、相手が名乗った瞬間に懐かしい顔が目に浮かんだ。 「覚えていてくれて嬉しいよ」とH君
▽▷△超短編!大どんでん返し▼▶︎▲ 葉真中 顕「究極の密室」
「え、刑事さん、まさか僕が妻を殺したというんですか」 「そのまさかです。そう考えるのが一番しっくりくる」 「待ってくださいよ。妻の死に方はどう見ても自殺でした。首を吊っていたんです。一緒に発見したマン
東川篤哉「早業殺人に必要なもの」
 資産家の叔父を殺せば膨大な遺産が転がり込む。貧乏な俺も左団扇で暮らせるじゃないか。快適な部屋に引っ越せるし、車だって買えるだろう。お洒落な服も着放題。ダサい眼鏡なんかやめて、使い捨てのコンタクトにす
井上真偽「或るおとぎばなし」
「──覚えていませんか?」  開けたドアの向こうに立っていたのは、目の覚めるような美少女だった。 流れる黒髪。くりりとした眼。それは単に顔立ちが整っているというだけでなく、穢れのない──清い水と空気の
辻 真先「忘却とは」
「忘却とは──」  それが女房の口癖だった。 「忘れ去ることなり」  当たり前だろ。耳にする都度吹き出しそうになり、懸命に歯を噛みしめたもんだ。今となってはどうでもいいが、三年前に亡くなったあいつは、
donden-tamarusan_
 営業マンのあとにつづき、私はある建物へ足を踏み入れた。 「こちらがそのオススメのものたちです」  ガラスを挟んだ向こう側では、生物たちが各々に動き回っていた。 「まさかこんな未来が来るとはなぁ……」
donden6-2
 勘弁してよ、と近づいて来る男を見て私は思った。  店員たる者、お客様は神様であり、見かけで判断してはならない。けれどここはデパートの化粧品ショップ。それも有名なフランスの高級ブランドだ。薄汚れた身な
米澤穂信
 おみやげを楽しみにねと笑って出かけた夫が、白木の箱に入れられて、こんなに軽く、小さくなって帰ってくるなんて──。  ご主人ですと渡された箱はあまりに軽くて、悲しいよりもいっそ情けないような気がした。
nitadorsian
 がたがた揺れる4WDの座席で、高田は車酔いをこらえていた。予算の都合で、今回のロケは強行軍なのだ。車酔い程度で「停めてくれ」などとスタッフに言えない。斜め前の助手席に座るディレクターもこちらを振り返
donden-sobusan
 長年勤めていたクラブでのピアノ弾きの仕事を失った。オーナーの話によると、今月で店を閉めるのだという。  それを聞いても、麻倉純也は不思議とショックを受けなかった。少し前から、夢をあきらめるには、そろ
inuisan
 今日の衣装はピンク色のワンピースで、相変わらず彼女は可愛かった。  待ち行列を間に挟んで、その姿は先ほどから、ちらちらと遠くに見えていたが、あと三人というところまで距離が縮まったとき、不意に彼女と目