角田光代
捨てられないものがたくさんある。昔の写真。旅先で買ったポストカード。ちょっと綺麗な包装紙。段ボールひと箱分のそれらは、いつでも捨てられそうなものばかりなのに、見えない糸で繋がれているかのように、何度引っ越しを重ねても私にずるずるとついてくる。だが、それよりも捨てにくいのは目に見えないものだ。親子の縁を、兄弟の絆を、家
さくら通り商店街というありふれた名前のアーケードに、様々な過去をもつ女たちが集い、やがて一人の男をめぐり、ありふれた騒動が勃発する。その一連をとおして女たちがどのようにふるまい何を思ったか、各々の面ざしを丹念に見つめた群像劇は、予想もしない結末へと向かう。二十九歳の万里絵は上司との不倫ののち会社を退職し、商店街の中程
少女時代から作家としての半生までを振り返る感動的な回想から、愛してやまない忌野清志郎を語り、シャネルN°5と彼女の生涯を描く、そして、恋愛と結婚、美味しい旅の記憶までを鮮やかに描いた心に沁みる充実のエッセイ集。
1990年代末~2008年にかけてのこの時期(直木賞受賞は2005年)、角田さんはあらゆる媒体からの依頼にすべて応えるという旺盛な執筆活動を実践したのでした。自ら「千本ノック」と名づけて数多くの短篇小説を発表。本作はテーマ別アンソロジーや雑誌掲載など発表舞台はさまざまですが、著者単独の短篇集としてまとまるのは初めての
私はきちんとそこにいた
忙しいと言う大人にはなるまいと決めていたのに、三十代の半ばすぎから、忙しいと言うことも思いつかないほど忙しくなってしまった。もっとも忙しかった時期、一か月に締め切りは小説と
vol.4 しずかに。
角田
西さんの本で、西さんご自身が、装丁の絵を描いていない本もあるんですか?
西
あります。でも20作近く出してるけど、3~4冊ぐらいだと思います、自分の絵じゃないや
vol.3 どこにいる?
司会
ここからは、『字のないはがき』の絵も見ながらお話ししていただきたいと思うんですけど、角田さんが、西さんの絵で特にぐっときたページとか、お気に入りのページはありま
vol.2 わたしたち。
角田
わたし、西さんと逆で、読んだり書いたりするときに、映像がまったく浮かばないんですよ。ぜんぶ言葉で読むし、言葉でおぼえるし、自分で書いていても、顔とか浮かんだこと
なんて豪華な組み合わせなんだ! 2019年初夏、小説丸編集部では驚きの声があがりました。作家の角田光代さんと西加奈子さんが、一冊の絵本を制作したというのです。
脚本家としてもひろく知られる作家・向田
(取材協力 クレヨンハウス東京店 撮影 五十嵐美弥)
角田光代(かくた・みつよ)
1967年生まれ。小説家。90年デビュー作『幸福な遊戯』(福武書店)で海燕新人文学賞受賞。
子ども時代に見ていたテレビドラマをのぞけば、向田邦子作品に出会ったのは二十二、三歳のころだ。このときすでにご本人はこの世の住人ではなかった、ということもあって、この作家は私には最初からものすごく遠