【ランキング】女性が主人公の本格心理スリラー第2弾! ブックレビューfromNY<第28回>

NY在住のジャーナリスト・佐藤則男が紹介する、アメリカのベストセラー事情と、注目の一作をピックアップするコラムの28回目。大好評の「女性を主人公にした本格心理スリラー」作品の解説、第2弾です!

<第28回>女性が主人公の本格心理スリラー②:出版前から映画化が約束されていた『窓の女』

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The Woman in the Window/ by A. J. Finn
William Morrow. 2018.427ページ. US$26.99

今月のベストセラー事情

今月の「ニューヨーク・タイムズ ベストセラー事情」は、ハードカバー・フィクション部門のトップ10 (2018年3月4日の週)[1]を紹介する。

1.The Great Alon

By Kristin Hannah
St. Martin’s

1974年、ベトナム戦争の元捕虜が仕事も家庭もうまくいかず、心機一転、妻と娘を連れてアラスカへの移住を決意した。
(ベストセラー2週目)


2.An American Marriage

By Tayari Jones
Algonquin

セレスティアルとロイはアメリカンドリームを絵にかいたような新婚カップルだった。ロイは若きエグゼクティブ、セレスティアルは新進気鋭の芸術家だった。しかし、ロイが無実の罪で12年の懲役刑になった時から2人の歯車は狂い始めた。5年後、ロイは無実が証明され、妻との結婚生活に戻ろうとしたが……。
(ベストセラー2週目)


3.The Woman in the Window

By A. J. Finn
Morrow

夫と別れたアンナ・フォックスは家から一歩も出ず、朝からワインや医者が処方した各種の薬を飲み、鬱々としながら幸せだった昔を思い出し、窓から近所の様子を覗き見ていた。公園を挟んで向かい側にラッセル家が引っ越してきた。両親とティーンエイジャーの息子、典型的な幸せそうな家族だった。しかしある晩、窓からラッセル家を見ていたアンナは殺人現場を目撃したと思った。果たして自分が見た事が現実なのか、それとも幻覚だったのか? 心理スリラー。
(ベストセラー7週目)


4.Still Me

By Jojo Moyes
Pamela Dorman/Viking

ルイザ・クラークはニューヨークで新生活を始めた。ヴィンテージ・ショップで働きながら、ニューヨークのハイ・ソサエティにも出入りし始めた。“Me Before You”シリーズ3作目。
(ベストセラー3週目)


5.Look for Me

By Lisa Gardner
Dutton

一家5人のうち4人が殺害され、16歳の娘が行方不明になるという事件が起きた。ウォーレン刑事がこの事件を担当することになった。“Detective D. D. Warren”シリーズ9作目。
(ベストセラー2週目)


6.Night Moves

By Jonathan Kellerman
Ballantine

ロサンゼルスの裕福な一家が日曜日のディナーから戻ると家の中には見知らぬ人物の死体があった。殺人課の刑事ミロと犯罪心理学者のアレックスは事件解決のために奔走する。「アレックス・デラウエア」シリーズ33作目。
(ベストセラー初登場)


7.Little Fires Everywhere

By Celeste Ng
Penguin Press

クリーブランドの郊外のシェイカー・ハイツはすべてが区画どおりで平穏な住宅地だった。そこにアーティストでシングル・マザーのミア・ウォーレンと娘のパールが引っ越してきた。ミステリアスな過去を持ち、自分を貫く態度を取るミアに、ルール重視のミセス・リチャードソンはこの住宅地の秩序をかき乱したと腹を立て、ミアの過去を暴くことで彼女に対抗しようとしたが……。
(ベストセラー22週目)


8.Origin

By Dan Brown
Doubleday

ハーバード大学の宗教象徴学のロバート・ラングドン教授は、元教え子のIT富豪エドモンド・キルシュの招きでスペインのグッゲンハイム美術館のイベントに参加した。そこで《生命の起源》と《人類の運命》に関する重要な科学的発見を発表する予定だったエドモンドが発表直前に招待客の目の前で何者かに暗殺されてしまった。エドモンドの遺志を継いで、ラングドンはこの新発見を世界に公表すべく、エドモンドの開発した「ウィンストン」という名の人工知能の助けを借りてバルセロナへと向かった。「ロバート・ラングドン」シリーズ5作目。
(ベストセラー20週目)


9.Dark in Death

By J. D. Robb
St Martin’s

ニューヨーク、タイムズスクエアの映画館でサイコ映画を上映中、女性がアイスピックで後ろから首を刺されて死んだ。女性警部補のイブ・ダラスはこの殺人事件がスリラー小説のストーリーに酷似していることに気付き、犯人の次の殺人を阻止するために奔走する。“In Death”シリーズ46作目。
(ベストセラー3週目)


10.Before We Were Yours

By Lisa Wingate
Ballantine

サウスカロライナ州の裕福な家庭出身のアベリー・スタフォードは連邦検事として活躍、ハンサムな婚約者との結婚式も間近だ。しかし、父親の突然の病気で家に戻ったとき、彼女は家族の隠された暗い過去に気付くのだった。テネシー州メンフィスの養子縁組機関が貧しい家の子供を誘拐して裕福な家庭に売り渡していたという忌まわしい実話に基づき書かれた小説。
(ベストセラー22週目)

先月のベストセラーリストには女性を主人公にした本格的心理スリラーが2作品登場した。 “The Wife Between Us”と“The Woman in the Window” だった。先月レビューで取り上げた“The Wife Between Us”のほうは、今月は12位で10位以内から落ちてしまったが、“The Woman in the Window” のほうは今週も3位でベストセラー7週目に入っている。2012年にギリアン・フリンが上梓し、2014年に映画化されて大評判となった『ゴーン・ガール』、ポーラ・ホーキンスの『ガール・オン・ザ・トレイン』(2015年出版、2016年映画化)に続く女性を主人公にした心理スリラーとして2018年1月、両作品はほぼ同時に発売されて大評判となり、しばしば一緒に紹介されたり比較されたりしている。

というわけで、今月は女性を主人公にした本格的心理スリラーの第2弾として、“The Woman in the Window”を紹介したいと思う。

[1]“A version of this list appears in the March 4, 2018 issue of The New York Times Book Review. Rankings reflect sales for the week ending February 17, 2018. Lists are published early online.”(このベストセラー・リストは2018年3月4日のニューヨーク・タイムズ紙ブックレビュー欄に掲載。リストは2018年2月17日で終わる週の売り上げをもとに作成されている)

今日のメシ本 昼ごはん
星野智幸さん『焰』