アメリカ人はどんな本を読んでいるのか?大統領選挙イヤーに売れている本は?-ブックレビュー from NY【第4回】
NY在住のジャーナリスト、佐藤則男が、今のアメリカのベストセラー事情を紹介。今回は、トランプ氏の発言や、注目の話題作について解説します!
<第4回>暴言男・トランプが「俺はナイス・ガイ」と堂々宣言
Donald J. Trump.. Crippled America: How to Make America Great Again. Threshold Editions, New York. 2015. 193ページ. US$25.00
今月のベストセラー事情
今回の「ニューヨーク・タイムズ ベストセラー」は、ハードカバー・ノンフィクション部門のトップ10 (~2016年3月6日の週)を紹介する。
本サイトが文芸をテーマにしていることは承知しているが、アメリカでは相変わらずノンフィクションがよく売れる。大統領選挙イヤーの今年は政治関連のヒット作も多く、特にその傾向が強い。これは日本の出版事情との際立った違いだと思うので、「アメリカ人はどんな本を読んでいるのか」を知ることも読書好きには楽しいのではないかと期待している。
注:( )の数字は前週の順位;[ ]の数字はベストセラー入りしていた期間[週数]
1.(1) WHEN BREATH BECOMES AIR, by Paul Kalanithi. (Random House.) [6] A memoir by a physician who received a diagnosis of Stage IV lung cancer at the age of 36.
36歳で癌のステージ4の診断を受けた医者の回顧録。
2. (-) A MOTHER’S RECKONING, by Sue Klebold. (Crown.) [1] The mother of one of the Columbine shooters wrestles with her grief and guilt and discusses how parents can become more aware of the signs of mental illness in teenagers.
1999年4月20日起こったコロラド州コロンバイン高校の銃撃事件の犯人の一人(当時高校生)の母親が、深い悲しみと罪悪感にさいなまれながらも、どうすれば親はティーンエイジャーの精神障害のサインに気づくことができるかについての考えや疑問を論じている。
3.(3) BETWEEN THE WORLD AND ME, by Ta-Nehisi Coates. (Spiegel & Grau.) [32]
A meditation on race in America; winner of the National Book Award.
著者は「アトランティック」紙の国内特派員。アメリカにおける人種問題の考察と個人的なストーリー。全米図書賞受賞作。
4. (2) THE NAME OF GOD IS MERCY, by Pope Francis with Andrea Tornielli. (Random House.) [6]In a conversation with a Vatican reporter, the pontiff explores the cornerstone of his faith.
バチカンのレポーターとの会話を通して、ローマ教皇フランシスコは、なぜ”mercy”(慈悲)が神の象徴なのかを述べている。
5.(4) THE ROAD TO LITTLE DRIBBLING, by Bill Bryson. (Doubleday.) [5]An American expatriate travels around his adopted country, Britain.
祖国を捨てたアメリカ人が長年住み慣れた英国を旅行して回る。
6.(6)DARK MONEY, by Jane Mayer. (Doubleday.) [5]wealthy donors deployed their money to change American politics.
コーク兄弟やその他の超大金持ちが、いかにしてアメリカの政治や政策変更のために大金を出資したか?
7.(12) AND THEN ALL HELL BROKE LOOSE, by Richard Engel. (Simon & Schuster.) [2]NBC’s chief foreign correspondent discusses the Arab Spring and war in the Middle East.
NBCのチーフ海外特派員がアラブの春や中東戦争について論じている。
8.(-) CONVICTION, by Juan Martinez. (Morrow/HarperCollins.) [1]An Arizona prosecutor describes building the case against Jodi Arias, who was found guilty of murdering her ex-boyfriend, Travis Alexander, in 2013.
2013年にアリゾナで起こった元ボーイフレンド殺人事件の被告が有罪判決を受けた事件について、検事だった著者が驚きの捜査状況やセンセーショナルな裁判について語る。
9.(7) ORIGINALS, by Adam Grant. (Viking.) [3]A Wharton School professor argues that innovators are made, not born, and offers suggestions for how to become one.
ワ―トン校(ペンシルバニア大学経営大学院)の教授が、《革新者》は生まれつきではなく、作られるものであると主張、どのようにしたら革新者になれるのかを提言する。
10.(11) BEING MORTAL, by Atul Gawande. (Metropolitan/Holt.) [62]The surgeon and New Yorker writer considers how doctors fail patients at the end of life and how they can do better.
ニューヨークの外科医である著者は、死んでゆく患者の現実と向かい合ってきた経験を踏まえ、いかに医者が命の終わりの時に患者の役に立たず、どうすればもっと良い医者になれるかについての考えを述べている。