アメリカでのベストセラーランキングと共に注目の最新作を紹介!-ブックレビューfrom NY【第7回】

NY在住のジャーナリスト・佐藤則男が紹介する、アメリカのベストセラー事情。「ギネス世界記録」を持つベストセラー作家の最新作を紹介します。

<第7回>《ギネス世界記録》を持つベストセラー作家の最新作

ブックレビュー7

15TH AFFAIR / by James Patterson and Maxine Paetro

Little, Brown and Company, May 2016. 351ページ. US$28.00

今月のベストセラー事情

今回の「ニューヨーク・タイムズ ベストセラー事情」は、ハードカバー・フィクション部門のトップ10 (2016年6月5日の週)を紹介しよう。

1:THE FIREMAN

by Joe Hill
Morrow/HarperCollins

人間の皮膚が自然発火してしまうという不思議な伝染病が流行する中、ニューハンプシャー州の看護婦ハーパー・グレイソンは病人の看護をするうちに自分も病気にかかってしまう。妊娠中の彼女は、おなかの子供を助けるためにも、“Fireman”と呼ばれている神秘的な人物ジョン・ロックウッドの助けを借りて病気の鎮静化のために奮闘する。超自然スリラー小説。

(ベストセラー初登場)


2:15TH AFFAIR

by James Patterson and Maxine Paetro
Little, Brown

高級ホテルで起こった殺人事件は、サンフランシスコ市警察の警察官リンゼイ・ボックサーの幸せな家庭を脅かすことになる。“Women’s Murder Club”シリーズの第15作目。

(ベストセラー3週目)


3:THE WEEKENDERS

by Mary Kay Andrews
St. Martin’s

ノース・キャロライナの避暑地、ベル・アイル島で過ごすライリーは、彼女の島の家が「抵当流れ」になったという通知を受けとり驚愕する。事情を問いただそうにも、金曜日の午後に到着するはずの夫は謎の死を遂げてしまった。ライリーは夫の死にまつわる秘密の解明に乗り出す。

(ベストセラー初登場)


4:THE GIRL ON THE TRAIN

by Paula Hawkins
Riverhead

レイチェルは毎日同じ通勤電車に乗る。ある日、電車から外のショッキングな場面を目撃してしまう。警察に見たことを通報したのだが……。ロンドンを舞台にした心理スリラー。

(ベストセラー71週目)


5:THE LAST MILE

by David Baldacci
Grand Central

“Memory Man”と呼ばれる記憶力抜群の警察官エイモス・デッカーが主人公の第2作目。殺人犯メルビン・マースは死刑執行の直前に執行猶予になった。FBI特殊タスク・フォースに採用されたデッカーはこの件の調査をすることになった。

(ベストセラー5週目)


6:THE NEST

by Cynthia D’Aprix Sweeney
Ecco/HarperCollins

信託で管理されている父親の膨大な遺産は、プラム家の息子、レオの交通事故補償を支払うため、大幅に減ってしまった。3人の姉妹もそれぞれ借金を抱えている。父親の遺産を巡るニューヨークのプラム家の4人の成人した子供たちの欲と愛情のコメディー。

(ベストセラー9週目)


7:BEYOND THE ICE LIMIT

by Douglas Preston and Lincoln Child
Grand Central

2000年に出版された“The Ice Limit”の続編。 5年前、エリ・グリン率いるチームは南米沖の離れ小島から巨大な隕石を船で運送中、大嵐に遭遇し船は沈没、隕石は大西洋に沈んでしまった。そして今、単なる岩ではなく、宇宙の果てから来た複雑な有機体である隕石は、海底にしっかりと根付き増殖し続けている。破壊しなければ、地球そのものの存続の危機となる。エリ・グリンは、有能な科学者であり、盗みの達人のギデオン・クルーの核兵器に関するノウハウを使い、この有機体を全滅させようとするが……。
ギデオン・クルー・シリーズの第4作目。

(ベストセラー初登場)


8:EVERYBODY’S FOOL

by Richard Russo
Knopf

1993年出版の”Nobody’s Fool”の舞台であるニューヨーク州ノース・バスで、サリーと彼を取り巻く人々の心温まるユーモアあふれる物語。

(ベストセラー3週目)


9:EXTREME PREY

by John Sandford
Putnam

ミネソタ州犯罪逮捕局(BCA)を去ったルーカス・ダヴェンポートは、大統領候補を目指すミネソタ州知事の選挙キャンペーン・チームに加わった。選挙戦に沸くアイオワ州で、対立候補であり最有力候補者(ヒラリー・クリントンに似ている)に対する暗殺計画があるという噂が持ち上がった。ルーカスはその真偽を確かめ、暗殺を阻止するために捜査を始めた。ルーカス・ダヴェンポート・シリーズの第26作目。

(ベストセラー4週目)


10:THE HIGHWAYMAN

by Craig Johnson
Viking

新任のハイウェイ・パトロール官のローズィー・ウェイマンは、半世紀も前に死んだ伝説的ハイウェイ・パトロール官からの無線交信を受けるようになる。超自然現象に遭遇するワイオミングの保安官ウォルト・ロングマイアーと親友のヘンリー・スタンディング・ベアーの最新冒険物語。ウォルト・ロングマイアー・シリーズの第12作目。

(ベストセラー初登場)


今月のベストセラーリストを見ると、サスペンスやミステリー小説が圧倒的に多い(8作品)。アメリカ人のサスペンス、ミステリー好きは相変わらずだ。それ以外の2作品(“The Nest”, “Everybody’s Fool”)はコメディー・テイストの作品で、日本で言う純小説のような重いテーマの本は一つもベストセラーに入っていない。これから夏のバケーション・シーズンなので、リゾート地や海岸でのんびり軽い小説を読みたいと思う人が多いのだろうか? 今月のベストセラーリストは、バケーション・シーズンにアメリカ人が読みそうなラインナップに見える。

ベストセラー作家のシリーズ物や続編小説も引き続き強い。“15th Affair”、 “The Last Mile”、“Beyond the Ice Limit”、“Everybody’s Fool”、“Extreme Prey”、 “The Highwayman”など6作品だ。

(次ページへ続く)

連載対談 中島京子の「扉をあけたら」 ゲスト:山極寿一(京都大学総長・理学博士)
切ないながらも、鮮烈に青春時代の記憶がよみがえる一冊、「かもめ」