文学的「今日は何の日?」【7/20~7/26】

あの名作が世に出た日。
憧れのヒロインの誕生日。
かの大作家の失恋記念日。
……そう、毎日が何かの記念日です。さて、今日は何の日でしょうか。
7月20日から始まる1週間を見てみましょう。

7月20日

アポロ11号が人類史上初めて月面に着陸する――池井戸潤『下町ロケット』

1969年7月20日、アメリカの宇宙船アポロ11号が月面着陸に成功します。人類史上初のこの快挙は、宇宙を一気に身近なものにしました。池井戸潤『下町ロケット』の主人公・佃航平は宇宙飛行士になることを夢見て育ち、宇宙科学開発機構の研究員となります。しかし、自身が開発に携わったロケットの打ち上げが失敗し退職。亡父が興した精密機械製造業の佃製作所を継ぎます。7年後、長年の顧客からの取引停止と、大手企業からの特許侵害訴訟を受け絶体絶命に陥った佃を、帝国重工の財前道生が訪ねてきました。自社技術でロケット打ち上げを目指す同社にとって、佃製作所が特許を持つ水素エンジンが不可欠なので、特許を譲渡してほしいというのです。佃の大逆転劇が始まります!


出典:https://www.shogakukan.co.jp/books/09408896

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7月21日

三浦綾子『氷点』において、辻口家の3歳の娘・ルリ子の行方がわからなくなる

北海道を舞台に数々の名作を残した三浦綾子。代表作『氷点』は、昭和38年に朝日新聞社の懸賞小説で入選して注目を集めた作品です。昭和21年7月21日、病院長・辻口啓造の妻・夏枝は、夫の部下で眼科医の村井靖夫の訪問を受けていました。口説の末に村井が夏枝の肩を掴んだその時、3歳の娘・ルリ子が部屋に入ってきてしまいます。とっさに「先生と大切なお話があるのよ」と、娘を外に遊びに行かせた夏枝。しかしルリ子はそのまま行方がわからなくなり、翌朝、扼殺死体となって発見されました。娘が消えたその時に村井と2人きりでいた妻を許せない啓造は、妻への復讐の道具としてルリ子の殺害犯の娘・陽子を引き取るのでした。映画やテレビドラマとして何度も映像化されてきた名作です。


出典:https://www.shogakukan.co.jp/digital/09D014770000d0000000

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7月22日

祖先の屋敷・イグザム修道院で奇妙な出来事が起きる――ラヴクラフト『壁の中の鼠』

クトゥルフ神話の創始者、H・P・ラヴクラフトの短編小説『壁の中の鼠』は、17世紀のイギリスで一家惨殺事件を起こし、アメリカに逃げ去ったウォルター男爵の11代の後胤・デラポーアの物語です。第一次世界大戦で息子を失ったデラポーアは、祖先の土地で暮らそうと、祖先の旧宅であったイグザム修道院を購入し、1923年にイギリスに渡りました。修道院は荒れ果てており、修復が必要でしたが、地元の村人は怖がって嫌がり、よその土地から雇った職人も逃げ帰ってしまう始末。そしてついに7月22日、不可解な出来事が起こります。デラポーアと彼の愛猫「黒すけ」がたしかに聞いた鼠の気配は、何を意味するのでしょうか。得体の知れぬ恐怖に囚われたデラポーアは……。


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7月23日

ホロヴィッツ『カササギ殺人事件』において、家政婦の葬儀が執り行われる

2019年本屋大賞翻訳小説部門第1位に選ばれるなど、ミステリー・ファンの熱烈な支持を集めたアンソニー・ホロヴィッツ『カササギ殺人事件』。1955年7月23日、イギリス・サマセット州サクスビー・オン・エイヴォンの聖ボトルフ教会で、パイ家の家政婦メアリ・エリザベス・ブラキストンの葬儀が執り行われました。鍵のかかった屋敷の階段の下で倒れていたところを発見され、事故死と考えられていたメアリでしたが、彼女の死後まもなく、パイ家の当主サー・マグナス・パイが首を斬って殺されたことから、にわかに事件の様相を呈してきます。名探偵アティカス・ピュントの推理やいかに?


出典:https://www.amazon.co.jp/dp/4488265073/

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7月24日

『三銃士』など数々の名作を残したフランスの作家アレクサンドル・デュマが誕生

1802年7月24日『モンテ・クリスト伯』『三銃士』など数多くの名作を残したフランスの作家アレクサンドル・デュマ(大デュマ)が、フランス北部の小都市ヴィレル・コトレで誕生しました。デュマの父トマ=アレクサンドルはフランスの貴族と黒人奴隷の間に生まれ、長じて軍人となりますが、ナポレオンと対立して43歳で死去。幼いデュマと母の生活は困窮し、母方の祖父母の元で暮らします。この父子と、さらにデュマの子で『椿姫』の作者アレクサンドル・デュマ(小デュマ)のデュマ家三代を、直木賞作家・佐藤賢一が描いた「デュマ三部作」『黒い悪魔』『褐色の文豪』『象牙色の賢者』)。奴隷の子から、三代にしてフランス文化の象徴となったデュマ家の栄光の物語です。


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7月25日

平家一門が都落ち、安徳天皇を供奉し西国へ向かう――『平家物語』

寿永2年、俱利伽羅峠の戦いで木曾義仲に敗れた平家軍。義仲が京近くまで迫るなか、平家一門は都を落ち、安徳天皇と三種の神器を供奉して西国へ向かいます。7月25日、故・平清盛の弟にあたる薩摩守忠度ただのりは密かに都に取って返し、歌人・藤原俊成を訪ねました。歌人でもある忠度は俊成に「戦が終わって勅撰集が編まれる時は、生涯の面目に一首なりとも選んでいただけまいか」と自作の歌百首あまりを書いた巻物を託します。のちに勅撰集『千載和歌集』の選者を務めた俊成は、朝敵となった忠度の名を伏せ、「讀人しらず」として「さゝなみや志賀の都はあれにしを昔ながらの山櫻かな」の歌を載せました。歌人2人の思いが胸に迫る「忠度都落の事」は、『平家物語』のなかでも特に涙を誘うエピソードです。


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7月26日

将軍家慶の死が中山道の宿場町・馬籠宿に伝わる――島崎藤村『夜明け前』

「木曾路はすべて山の中である」という書き出しがあまりにも有名な、島崎藤村『夜明け前』。幕末から明治という激動の時代を、中山道の宿場町・馬籠宿を舞台に描いた大作です。嘉永6年7月26日、江戸からの御隠使ごおんしにより将軍家慶いえよし薨去が馬籠宿に伝えられました。しかし家慶が亡くなったのは6月22日。馬籠に訃報が届いたのは、すでに葬儀も済んだあとだったのです。江戸からも京からも遠く離れた、山の中の宿場町。しかし、和宮降嫁、長州征伐、ええじゃないか騒動など、歴史の波はここにも容赦なく押し寄せるのでした。国学に傾倒し、王政復古を願う青山半蔵の生涯を描く同作は、藤村晩年期の傑作です。


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初出:P+D MAGAZINE(2020/07/20)

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