熱血新刊インタビュー

古谷田奈月『フィールダー』
救われるために 純文学とエンタメの垣根を越えて活動する古谷田奈月が、三年ぶりとなる長編『フィールダー』を発表し話題を呼んでいる。社会問題をこれでもかと盛り込み、文学の感性でひもといていく一方で、読めば指のうずきと脳にカーッとくる熱さを仮想体験させられるガチのゲーマー小説でもある。この奇跡的融合の背景には、「救う」という「ポスト伊藤計劃」への解 「自分は生まれてこないほうが良かったのではないか?」その思想は古代から存在が知られるものだったが、コロナ禍や地球温暖化の拡大などの不安により増幅され今や世界的なムーブメントとなっている。新潮ミステリー大賞出身の荻堂顕は、受賞後第一作となる『ループ・オブ・ザ・コード』で反出生主義に挑んだ。第七回
荻堂 顕『ループ・オブ・ザ・コード』
「ポスト伊藤計劃」への解 「自分は生まれてこないほうが良かったのではないか?」その思想は古代から存在が知られるものだったが、コロナ禍や地球温暖化の拡大などの不安により増幅され今や世界的なムーブメントとなっている。新潮ミステリー大賞出身の荻堂顕は、受賞後第一作となる『ループ・オブ・ザ・コード』で反出生主義に挑んだ。第七回
荒木あかね『此の世の果ての殺人』
謎の魅力 今年五月、ミステリーの老舗新人賞として知られる江戸川乱歩賞に荒木あかね『此の世の果ての殺人』が選出された。二三歳七ヶ月での受賞は、一九五四年創設の同賞において史上最年少だ。本作は、探偵&助手が連続殺人事件の謎を解く本格ミステリーである。ただし物語の舞台は、人類滅亡が決定付けられた世界だ。 『地上最後の刑事』か
宇野 碧『レペゼン母』
分かり合いたい 和歌山で梅農園を経営する〝おかん〟がヒップホップという武器を片手に、逃げ癖のついたダメ息子とラップバトルに臨む。第一六回小説現代長編新人賞受賞作『レペゼン母』は、斬新にしてキャッチーな物語の展開を追ううちに、やがて人生にまつわる普遍的なメッセージへと辿り着く。自分は何者であるかというリアルを表明 ビート
ブレイディみかこ『両手にトカレフ』
希望の強度 エッセイ集『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』が国民的ベストセラーとなったブレイディみかこが、初小説を発表した。依存症の母をケアし弟の面倒も見る一四歳の少女・ミアの物語は、「子供の貧困」に象徴される現代社会の見えざる現実を映し出す。 自分の家族にかこつけて書くことは止めよう 英国ブライトンに暮らす
浅倉秋成『俺ではない炎上』
俺は悪くない? 就職活動を題材にした『六人の噓つきな大学生』が二〇二二年本屋大賞をはじめ各種文学賞にノミネートされた浅倉秋成は、いま最も勢いのある作家である。レジェンドの小畑健とタッグを組み、自身は原作を手がけた漫画『ショーハショーテン!』も大きな話題になっている。最新作『俺ではない炎上』は、ネット炎上を題材にした逃亡
町田そのこ『宙ごはん』
親も成長する 孤独の持ち主たちが擬似家族を形成し、回復していく姿を描き出した初長編『52ヘルツのクジラたち』で二〇二一年本屋大賞を受賞した町田そのこが、最新長編『宙ごはん』で再び家族というテーマと向き合った。「ごはん」を共通モチーフにした全五話は、優しさと温かさに加え、人生の苦みもしっかりときいている。育ててくれた「マ
朝比奈あすか『ななみの海』
いい大人になりたい 『憂鬱なハスビーン』で第四九回群像新人文学賞を受賞しデビューした朝比奈あすかは、大人たちの「憂鬱」をなまなましく活写する作風で知られてきた。近年は現代社会をサバイブする子どもたちの「葛藤」を描く物語が増えている。最新作『ななみの海』も子どもが主人公の物語だが……まぎれもなく大人たちの物語だった。
石田夏穂『我が友、スミス』
生きてるだけでユーモラス 第四五回すばる文学賞佳作を受賞し、第一六六回芥川賞候補にも選ばれた石田夏穂のデビュー作『我が友、スミス』は、ボディ・ビルにハマった会社員女性の物語だ。純文学は時に「シリアス・ノベル」と呼ばれることがある。が、本作は少し様相が異なる。シリアスさはもちろんあるのだが、そこにユーモアも見事に共存して
東山彰良『怪物』
「愛と自由」の物語 台湾を舞台にした青春ミステリー『流』で二〇一五年に第一五三回直木賞を受賞した東山彰良が、まもなくデビュー二〇周年を迎える。最新長編『怪物』は、日本に暮らす小説家の現実が自作小説によってじわじわ侵食される様子を綴りながら、戦後アジアの歴史をも浮かび上がらせる。二〇年の蓄積があったからこそ飛び立つことが
蝉谷めぐ実『おんなの女房』
おんなを味わう 江戸の歌舞伎役者たちの生き様をミステリ的趣向とともに綴った『化け者心中』で第一一回 小説 野性時代 新人賞を受賞した蝉谷めぐ実さんは、時代歴史小説の新たな担い手として颯爽と文学界に現れた。同作で第一〇回日本歴史時代作家協会賞新人賞と第二七回中山義秀文学賞を受賞し新作への期待が高まる中、ついに届けられた長
斜線堂有紀『愛じゃないならこれは何』
恋は「殉ずる」の一択 二〇二〇年八月に刊行した特殊設定ミステリ『楽園とは探偵の不在なり』が第二一回本格ミステリ大賞の候補となり、斜線堂有紀は一躍、「本格」シーン最注目の存在となった。ところが、最新刊『愛じゃないならこれは何』は自身初となる非ミステリの短編集だ。その代わり──自身初の「本格」恋愛小説である。
君嶋彼方『幻月と探偵』
諦めた先の人生 第一二回小説 野性時代新人賞を受賞した君嶋彼方の『君の顔では泣けない』は、いわゆる「男女入れ替わりもの」だ。しかし、定番のラブコメ路線には進まない。入れ替わってしまった男女の心情を透徹したリアリズムで描き出していく。そこには当該ジャンルに対する批評意識とエンターテインメントの作り手としての「逃げない」矜
乙一 × 吉田大助 ◇熱血新刊インタビュー【特別編】
僕の100回、僕たちの19年、そしてこれから 吉田大助氏による本誌「STORY BOX」名物連載「熱血新刊インタビュー」が遂に三桁の大台に突入した。「聞き手」としての役割を離れ、この節目だからこそお会いしたい方は誰か。一〇〇回記念を祝して吉田氏に問うたところ、上がってきた名が作家・乙一氏である。さて、一体どうして? 
伊吹亜門『幻月と探偵』
時代のWHYを探して 第一二回ミステリーズ!新人賞受賞作を含む『刀と傘 明治京洛推理帖』でデビューした伊吹亜門は、同作で第一九回本格ミステリ大賞受賞の戴冠に輝き、歴史本格ミステリの新鋭として注目を集めた。 幕末の京都を舞台にした第二作『雨と短銃』を経た、待望の第三作『幻月と探偵』は、時代がぐっと下る。舞台は第二次大戦前
織守きょうや『花束は毒』
「酷さ」というフロンティア 第二二回日本ホラー小説大賞読者賞受賞作から始まる『記憶屋』シリーズでブレイクした織守きょうやは、「泣けるホラー」の書き手として知られている。一方で、現役弁護士という職能を活かしたリーガルミステリーも書き継いできた。最新長編『花束は毒』は、探偵が活躍する本格ミステリーであり、そして……過去最大言葉と出合う、世界を広げる 直木賞をはじめ各種文学賞へのノミネートが続く芦沢央が、最新短編集『神の悪手』で初めて将棋を題材に採った。ミステリーとしての驚きに満ちた全五編は、登場する棋士たちの内面に、作家である自身の心情や実体験が重ね合わされている。自他共に認める特別な一冊だ。
芦沢 央『神の悪手』
言葉と出合う、世界を広げる 直木賞をはじめ各種文学賞へのノミネートが続く芦沢央が、最新短編集『神の悪手』で初めて将棋を題材に採った。ミステリーとしての驚きに満ちた全五編は、登場する棋士たちの内面に、作家である自身の心情や実体験が重ね合わされている。自他共に認める特別な一冊だ。
真藤順丈『われらの世紀 真藤順丈作品集』
小説の噓と真実 戦後の沖縄を舞台にした青春群像小説『宝島』で第一六〇回直木賞受賞の栄誉に輝いた真藤順丈が、同作刊行から丸三年のインターバルを経てついに受賞後第一作『われらの世紀』を世に送り出した。「真藤順丈作品集」という副題からも明らかだが、長編を主戦場としてきた作家にとってキャリア初となる独立短編集だ。