ノンフィクション
東えりかさんが、おすすめのノンフィクションを紹介します。
「メタバース」という電脳語が脚光を浴びている。バーチャル現実の本格拡張版というか、要するに「物理現実と対等といえる超仮想現実」のことで、各種知覚デバイスと情報空間のスペックアップがそれを可能にするのだ。現状、仮想通貨・NFTがらみで経済面から話題になることが多いメタバースだが、「マジでその中で暮らせる」さらに「環境を恣
いま、私は第49回衆議院選挙戦のまっただなかでこの原稿を書いている。投票日まで1週間を切った。本誌が読者に届くときはすでに選挙は終わっており、政権与党と野党が、そのままかそれとも変わったか結論は出ている。その時、私はどう思っているのだろう。著者の和田靜香は音楽関係を手始めに相撲や困窮者支援などの記事を書くフリーランス
日本ではあまり知られていないが李仲燮は韓国の国民的画家で「韓国のゴッホ」とも呼ばれている。39歳で夭折した天才画家の妻は日本人の山本方子。今年100歳になるがお元気だ。新聞記者である著者はソウル特派員時代に李仲燮の存在を知る。彼の絵に惹かれ日本で方子へのインタビューを重ねた。李仲燮は1916年に日本統治下にあった朝鮮
小説家古川日出男は福島のシイタケ生産農家に生まれた。三人兄弟の末っ子で、兄と姉がいる。十八歳で故郷を離れ家業は兄が継いだ。そして二〇一一年三月十一日、東日本大震災が彼の故郷を襲う。冒頭は二〇一九年十二月に行われた母親の納骨風景だ。その直前、施設で寝たきりだった母の胃瘻をやめることを兄弟で決めたときに、躊躇っていた震災
新型コロナウイルスの流行で世界中が注目し、日本の底力を見せた商品が「マスク」だ。一年前、自分と他人の感染予防に、日本人の多くは当たり前にマスクをつけた。そのため品薄になり買いだめが起こったのは記憶に新しい。そのマスクの一種に、ダチョウの並外れた免疫力によって生成された抗体を処方した製品がある。
少子化、高齢化が進む日本で、これから先、喫緊の問題になるのは労働力不足であることは間違いない。2018年12月、国会では入管難民法の改正が参議院本会議で強行採決された。これまで低賃金の単純労働を強いられてきた外国人技能実習生を、新たな在留資格「特定技能」に移行させ、一定条件を満たせば家族の帯同を認めるという。この時点
『医療現場は地獄の戦場だった!』 大内 啓
ビジネス社
著者は米マサチューセッツ州ボストンにあるハーバード大学医学部の助教授で終末期医療の研究者である。同時に内科と救急科両方の専門資
『マル農のひと』金井真紀
左右社
2020年は新型コロナ流行の年として歴史に残るだろう。外出、会食、人との接触を自粛せよ、という通達が出たとき、どんな生活になるか不安しかなかった。
『幻のアフリカ納豆を追え! そして現れた〈サピエンス納豆〉』高野秀行
新潮社
前作『謎のアジア納豆そして帰ってきた〈日本納豆〉』(新潮文庫)で納豆は日本人だけの食べ物ではない、と証明
時代とともに変わるものもあれば、永久に不変なものもある。新型コロナ禍の自宅自粛生活で、働き方や教育方法などは大きく変容しそうだ。しかし夫婦や家族の問題は逃げ場がないだけ深刻化したように思える。
そ
著者は、ヤクザの世界を取材させたら日本一のノンフィクション作家。普段はヒリヒリと緊張を強いられる潜入ルポの世界に身を置いている。
サカナの密漁がヤクザの資金源になっている、という緊迫した取材を終え
世の中が高齢化社会に向かってまっしぐらに進み、日本人の死因一位ががんだと目の前に突き付けられ、自分が生活習慣病の対象年齢になり、自分より年下の友人を亡くすと、否が応でも生きることと死ぬことを考えるよ
奥山和由は現役でありながら様々な伝説を持つ映画プロデューサーである。彼に映画史研究家の春日太一が計25時間ものロングインタビューを決行し、低迷期にあった70年代半ばから現在までの映画史の裏側を見る見
現代は格差社会だという。収入格差、地域格差などさまざま叫ばれているが、知識の格差も大きな問題ではないかと私は思っている。グローバル社会といわれて久しく、世界的に資本や人材、情報がボーダレスでやり取り
著者は児童精神科医である。公立精神科病院に勤めたのち、医療少年院に転職する。そこで出会った驚くべき事実が、一冊の本を書かせるきっかけとなった。
本書の帯に描かれた絵は「ホールケーキを三等分にする」
安倍内閣の政策の大きな柱のひとつに女性活躍推進がある。しかし現実はようやく緒に就いたばかりのような気がする。ヒラリー・クリントンが言う「ガラスの天井」は日本では更に厚く固い。
百年以上前に国家と対
森瑤子さんには忘れられない記憶がある。バブル華やかなりし頃、北方謙三氏の秘書だった私は、大きな文学賞のパーティ会場でボスから少し離れた場所にいた。様々な作家や関係者が引きも切らず挨拶に来る中、ひとき
一九六八年一一月九日、二五歳の大工が横須賀線爆破事件の犯人として逮捕された。事件の動機は恋人への復讐であった。幼馴染の恋人、山田敏子が自分から逃げ夫の元へ戻ったという恨みを持ち、彼女が乗る可能性のあ