目利き書店員のブックガイド

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週末は書店へ行こう! 目利き書店員のブックガイド 今回の目利きさん 吉見書店 竜南店 柳下博幸さん
 タイトルの「クロコダイル・ティアーズ=ワニの涙」とは、嘘泣きや偽りの涙。悲しんでいるように見せて実は……という慣用句。古代ローマ時代にはすでに「ワニが獲物を食べながら涙を流す」ことが知られており、かのシェイクスピアも作中で「計略としての涙」「偽りの懺悔としての涙」を「ワニの涙」と表現している。実際は体内の塩分排出行為
週末は書店へ行こう! 目利き書店員のブックガイド 今回の目利きさん 成田本店 みなと高台店 櫻井美怜さん
 音は光よりも遅い。頭ではわかっていても、花火が打ち上げられたドーンという音が背後から聞こえると、振り返らずにはいられない。そこにはもう、火花の気配すらないというのに。出版社で働く橘は、美麗なグラフィックの世界観の中でモンスター討伐をする“リンドグランド”というアプリゲームにはまっている。昼は社会人としてきちんと働き、
週末は書店へ行こう! 目利き書店員のブックガイド 今回の目利きさん 啓文社 西条店 三島政幸さん
「科学は嘘をつかない。嘘をつくのは、いつだって人間です」警察に協力する民間の鑑定人、土門誠の台詞だ(「遺された痕」より)。ややぶっきらぼうに見えるが、科学捜査には真摯に取り組む。自らの鑑定結果には絶対的な自信を持ち、裁判での証言も積極的に行う。土門にとって、事件の内容や真相は二の次で、科学鑑定の結果が絶対なのだ。科学第
週末は書店へ行こう! 目利き書店員のブックガイド 今回の目利きさん 丸善 お茶の水店 沢田史郎さん
 1998年3月13日。東大の後期試験の数学で、受験史に残る難問が出た。その難易度といったら、試験当日に解答速報を出すのが通例となっている一流大手予備校でさえ、一日では解けなかったというレベル。当然、完答できた受験生はゼロ。という設定は、実は本当にあった話だそうだ。その伝説の難問事件に材を取り、多彩なキャラクターとユー
週末は書店へ行こう! 目利き書店員のブックガイド 今回の目利きさん 八重洲ブックセンター京急百貨店上大岡店 平井真実さん
 デビュー時から読み続けている作家さんが何人かいる。しかし書店員といえどもこの世に出ている全てを読んでいるわけではなく、苦手なジャンルもあり、最初はすっと身体になじんでいたものが、作品を追うごとになかなか咀嚼できなくなってしまい、読み続けることを挫折してしまうこともある。そんな中、デビューから15年たった今も唯一無二の
週末は書店へ行こう! 目利き書店員のブックガイド 今回の目利きさん うさぎや 矢板店 山田恵理子さん
 ウクライナの4歳の女の子が空爆で命を落としたと自宅でつけているテレビのニュースから流れてきた。亡くなる1時間前に母親と笑顔で歩いていた映像に涙が出てくる。幼い子どもの被害に耐えられない。もうやめてと世界中から願っても止められない。もっと現代には秩序があると思っていたが、幻想だった。『モノクロの夏に帰る』を執筆するにあ
週末は書店へ行こう! 目利き書店員のブックガイド 今回の目利きさん うなぎBOOKS 本間悠さん
 書店員をやっていると「一番好きな本(または作家)」を聞かれることがある。とても絞りきれないので、その手の質問には「選べません」と答えているが、その代わり、一番好きな映画なら即答できる。1973年に公開された、悪魔祓いを描いた作品『エクソシスト』だ。という流れで、芦花公園さんの最新刊『とらすの子』を紹介したい。物語は、
週末は書店へ行こう! 目利き書店員のブックガイド 今回の目利きさん 吉見書店 竜南店 柳下博幸さん
「終活」それは、人生の終わりを迎えるための活動である。自らが死を意識して、その最期をどう迎えるか。様々な準備やそこに向けたそれぞれの人生の総括を意味する。死を意識するのが数十年先の人もいれば、残り数日の人もいる。人間の数だけ違うそれぞれの人生を顧みる大事な期間。今はまだそのときが訪れていないあなたも、本作を読んでその瞬
週末は書店へ行こう! 目利き書店員のブックガイド 今回の目利きさん 成田本店 みなと高台店 櫻井美怜さん
 あんな女いなければいいのに、と思ったことはないだろうか。私はある。一番仲がいいと思っていた友達が、自分以外の子と仲良くしているのを見た時。彼氏の携帯に元カノの連絡先が残っているのを知った時。自分が大切にしている人や場所が奪われそうになった時、私の中に潜んでいたどろりとした感情が鎌首をもたげてくる。今村夏子の最新作には
週末は書店へ行こう! 目利き書店員のブックガイド 今回の目利きさん 啓文社 西条店 三島政幸さん
 ミステリ小説では事件の顛末が描かれるのが普通だが、その場合の最大の焦点(読みどころ)はなんだろうか? もちろん、「この事件の犯人は誰なのか?」であろう。犯人は誰なのか? の謎は、俗に「フーダニット」と呼ばれている。ミステリによっては、犯人の意外性よりも「動機」の特殊性に主眼を置いた作品も多く存在する。それらは「ホワイ
週末は書店へ行こう! 目利き書店員のブックガイド 今回の目利きさん 丸善 お茶の水店 沢田史郎さん
 全日本音楽著作権連盟、通称・全著連は、音楽教室でレッスン中に演奏される音楽にも著作権使用料が発生するとして、その徴収に乗り出した。しかし、全国大小の音楽教室で組織される音楽教室友の会は、「レッスンは〝公衆に対する演奏〟には当たらない」として、提訴する構えを見せる。という枠組みは、モデルになった裁判が現実に存在するのだ
週末は書店へ行こう! 目利き書店員のブックガイド 今回の目利きさん 三省堂書店 成城店 大塚真祐子さん
 手話通訳士を主人公に、ろう者と手話をめぐる現実を描いた『デフ・ヴォイス』シリーズ、居住の実態が把握できない「居所不明児童」の問題から、親とは、家族とは何かを問う『漂う子』、在宅介護、特別養子縁組制度、障害者差別など、人間の尊厳に関わる題材に正面から切り込み、四つの物語を鮮やかに交差させた『ワンダフル・ライフ』と、目ま
週末は書店へ行こう! 目利き書店員のブックガイド 今回の目利きさん うさぎや 矢板店 山田恵理子さん
 11の文学賞を受賞し話題となり、文庫化されてなお売れ続けている『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』は、中学に入学したブレイディみかこさんの11歳の息子さんの視点が新鮮で、人種差別・貧困・ジェンダーなどが、ともに悩み考える親子の生の声から伝わってくるノンフィクション作品だ。そして今作ではノンフィクションという
週末は書店へ行こう! 目利き書店員のブックガイド 今回の目利きさん うなぎBOOKS 本間悠さん
 以前、とある営業をしていた。まだ若く、私は溌溂として、そういうところが「明るい」「感じが良い」とされ、取引先との関係も良好だった(と信じたい)。「今度プライベートで飲みに行こう」と腰に手を回されれば、「何言ってるんですかー!」と声を張り上げて、笑顔を返した。明るく、感じが良く、取引先との関係も良好な私は、こんな風に振
週末は書店へ行こう! 目利き書店員のブックガイド 今回の目利きさん 吉見書店 竜南店 柳下博幸さん
 ドン・ウィンズロウによる3部作『犬の力』『ザ・カルテル』『ザ・ボーダー』。いずれの作品も、暴力と硝煙うずまくメキシコ麻薬戦争のフィクションを凌駕した現実をベースに、麻薬王国の興亡を魅力あるサブキャラクターたちが極彩色に彩った強烈にハードで非情なノワール小説の傑作だ。そしてドン・ウィンズロウが新たな3部作の始まりに選ん
週末は書店へ行こう! 目利き書店員のブックガイド 今回の目利きさん 成田本店 みなと高台店 櫻井美怜さん
 捨てられないものがたくさんある。昔の写真。旅先で買ったポストカード。ちょっと綺麗な包装紙。段ボールひと箱分のそれらは、いつでも捨てられそうなものばかりなのに、見えない糸で繋がれているかのように、何度引っ越しを重ねても私にずるずるとついてくる。だが、それよりも捨てにくいのは目に見えないものだ。親子の縁を、兄弟の絆を、家
週末は書店へ行こう! 目利き書店員のブックガイド 今回の目利きさん 啓文社 西条店 三島政幸さん
 全寮制の男子高・霧森学院。生徒の大半は新寮にいるが、旧寮「あすなろ館」の住人は6人だけ。入寮希望者がいないのは、施設がボロだからというのもあるが、昨年、「ある事件」が発生したため敬遠されるようになったから、というのが大きい。その「あすなろ館」に新たな転入生・鷹宮絵愛(エチカ)が入寮してきた。以前からの住人、兎川雛太
週末は書店へ行こう! 目利き書店員のブックガイド 今回の目利きさん 丸善 お茶の水店 沢田史郎さん
 都会でもなく田舎でもない、どこにでもありそうな地方都市。その街でほんの一瞬袖振り合うのは、一見フツーの老若男女。6つの短編の6人の主人公たちを善人か悪人かで分ければ、悪人は一人もいないだろう。けれど皆々不器用で、自分の気持ちを上手く相手に伝えられない。だから、不満や反論をつい飲み込んでしまう。自然、我慢したり譲歩した