エッセイ

滞米こじらせ日記~愛しきダメな隣人たち~--02
 幸太の説明するところだと、肉体は滅びても、電気信号である脳のはたらきは残って、空中のある層を移動するのだそうで、それを幸太は認知できるということだ。電車の中の乗客の半分が幽霊だ、などと言われても説得
思い出の味 ◈ 小川 哲
 妹とよく、母が作っていたトーストの話をする。僕の家では毎日の朝食はトーストと決まっていて、八枚切りの食パンに、塗られるものが毎朝変わるシステムだった。バター、ママレード、イチゴジャム、ピーナッツバタ
本の妖精 夫久山徳三郎 Book.52
                             
滞米こじらせ日記~愛しきダメな隣人たち~--02
 が、3年前にのっぴきならない事情がジュリアに生じて、そのきれいな正三角形が崩れていった。そののっぴきならない事情というのは、ジュリアの彼氏の幸太(こうた)に関することで、幸太のことを最初に教えてくれ
滞米こじらせ日記~愛しきダメな隣人たち~--02
 第2話 星に願いを  首都ワシントンに住んでいたときの友人のジュリアとは、ナショナル・プレス・ビルディングのオフィスが隣同士だったことから知り合った。彼女は、名門ジョージタウン大学でアラビア語を専
滞米こじらせ日記~愛しきダメな隣人たち~
 それでも、スジョンが夫の元から去らなかったのは、スジョンにはほかに行くところがなかったからだ。息子を連れてソウルの小さな貧しい実家に戻っても、行く末は楽観できないし、それなら、アメリカにいたほうがい
滞米こじらせ日記~愛しきダメな隣人たち~
 時々、ポールは、大学時代に付き合っていたスーザンみたいな女性と結婚していたら、と思うことがある。子供を四人作って、わいわいとにぎやかな一家団欒(だんらん)のある、明るく開放的で楽しいアメリカン・ホー
思い出の味 ◈ 友井 羊
 デビュー前に激務の会社で働いていた。終電で帰路につき、自宅最寄り駅に到着したときは大抵深夜一時を過ぎていた。  寒い冬の時期、ふらふらとした状態で家の近くにある某牛丼チェーンに立ち寄った。二十四時間
滞米こじらせ日記~愛しきダメな隣人たち~
 たとえことばがうまく操れなくても、おしゃべり好きなラテンの人たちは、ブロークン・イングリッシュでにぎやかにしゃべりまくるのだけれど、スジョンは、何をどう話したらいいのか、会話のつむぎ方の見当もつかな
本の妖精 夫久山徳三郎 Book.51
                               
滞米こじらせ日記~愛しきダメな隣人たち~
 まさかこんなことになろうとは夢にも思っていなかったポールは動揺したけれど、ことばも通じない外国に来たばかりで、傍らには自分の両親もいる。両親は、周りで起こっている騒動に戸惑っている。当惑した両親と浮
滞米こじらせ日記~愛しきダメな隣人たち~--01
 第1話 25年目の離婚  知り合いの一人に、ポールという名前のイタリア系アメリカ人がいて、ポールは、気分が冴(さ)えないときとか、車が渋滞に巻き込まれたときとか、出張中、手すきになったときとかに電
思い出の味 ◈ 彩瀬まる
 理不尽だなあ、と思うことがある。  私は今、三歳の子供を育てている。今のところ概ね子育ては楽しい。  楽しいのだけどストレスはある。うちの場合は食事だ。  硬すぎず、噛みちぎりやすく、味がはっきりし
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omoide
 小学五年生の頃、同級生が興奮気味に、親戚がトンカツに醤油をかけて食べていたと語りました。カツに醤油はおかしいというのです。彼女の言葉に深くうなずき、私は同じぐらいの熱量で答えました。 「そうだよね、
omoide
 今から二十年以上前の話である。当時、父は入院していた。咳がなかなか治らないと言って検査に行き、そこで肺がんが見つかったのだった。  すでに手術が出来る状態ではなく、担当医師からは余命半年です、と言わ