J・グリシャムの新作小説は裁判官汚職の内部告発がテーマ・今アメリカで一番売れている本は?|ブックレビューfromNY【第14回】

NY在住のジャーナリスト・佐藤則男が紹介する、アメリカのベストセラー事情と、注目の一作をピックアップするコラムの14回目。今回は、ヒットメーカー、ジョン・グリシャムによる新作小説に注目します。

<第14回>裁判官汚職の内部告発がテーマのジョン・グリシャムの新作小説

Jグリシャム書影
The Whistler/ by John Grisham
Doubleday, 2016. 384ページ. US$

今月のベストセラー事情

2017年最初の「ニューヨーク・タイムズ ベストセラー事情」は、ハードカバー・フィクション部門のトップ10 (2017年1月1日の週)[1] を紹介する。

1.The Whistler

By John Grisham
Doubleday

フロリダのBoard on Judicial Conduct(裁判官品行審議会)の捜査官レイシー・シュトルツは、ネイティブアメリカン居留地に建設されたカジノを巡り、マフィアから多額の賄賂が裁判官に流れているという訴えを捜査することになった。
(ベストセラー8週目)


2.Cross the Line

By James Patterson
Little, Brown
ある早朝、ワシントンD.C.の郊外の家で警察幹部が射殺された。市長からの要請で、刑事アレックス・クロスが事件解決に乗り出そうとした時、次々と殺人事件が起こって市は混乱状態になった。殺されたのはすべて犯罪人で、どうやら殺人犯は、正義は自分の側にあると思っている節があった。クロスは法に基づいた秩序を取り戻す必要に迫られた。アレックス・クロス・シリーズ24作目。
(ベストセラー4週目)


3.Two by Two

By Nicholas Sparks
Grand Central

32歳でラッセル・グリーンはすべてを手に入れていた。美しい妻、可愛い6歳の娘、広告マンとしての輝かしいキャリア、そして広大な自宅。しかしある日、すべてがひっくり返ってしまった。妻と職をなくし、娘と2人きりになってしまったのだ……。 
(ベストセラー11週目)


4.The Underground Railroad

By Colson Whitehead
Doubleday

南北戦争前の米国南部ジョージア州のプランテーションで過酷な運命を強いられていた奴隷の少女コラは、奴隷解放を目的とする《地下鉄道》の存在を知った。そして《地下鉄道》に乗って未知の自由へ踏みだした。アメリカ黒人史上、実際に存在した奴隷解放のための市民ネットワーク《地下鉄道》をテーマにした小説。
(ベストセラー19週目)


5.Tom Clancy: True Faith and Allegiance

By Mark Greaney
Putman

ジャック・ライアン(シニア)は米国大統領として、国際的脅威に直面する日々を過ごしている。一方、息子のジャック・ライアン(ジュニア)は情報のハッキングが原因のテロ攻撃からアメリカを守るべく、秘密情報組織“The Campus” のメンバーとして奮闘している。2013年のトム・クランシーの死後もジャック・ライアン・ユニバース・シリーズは続き、シリーズ22作目。
(ベストセラー2週目)


6.No Man’s Land

By David Baldacci
Grand Central

陸軍の特別捜査官ジョン・プラー・シリーズ4作目。 30年前に失踪したプラーの母親に関する真実が明らかになっていく。
(ベストセラー5週目)


7.Small Great Things

By Jodi Picoult
Ballantine

コネティカット州の病院のベテラン看護師ルースは病院における新生児の死を巡り殺人と過失致死の疑いで逮捕され裁判にかけられた。病院で唯一の黒人看護師だったルースの裁判が進むにつれ、次第に明らかになっていく人種格差・差別の問題。
(ベストセラー10週目)


8.Night School

By Lee Child
Delacorte

ジャック・リーチャー・シリーズ21作目。1996年、陸軍憲兵のリーチャーは名誉ある勲章を受章した直後、学校に入るように命令された。学校に行くと、すでにFBIとCIAのエージェントがいた。そしてアメリカ大統領からの秘密任務がリーチャーを含む3人に課せられたのだった。
(ベストセラー6週目)


9.Turbo Twenty-Three

By Janet Evanovich
Bantam

ニュージャージー州トレントンが舞台。ステファニー・プラム・シリーズ3作目。賞金稼ぎのステファニーはアイスクリーム工場での殺人事件に巻き込まれた。
(ベストセラー5週目)


10.All the Light We Cannot See

By Anthony Doerr
Scribner
盲目のフランス人少女マリー・ロールと機械マニアのヒトラー青年隊の少年ウェルナーが第2次大戦中にサン・マロで遭遇する。作者アンソニー・ドーアはピューリッツァー賞作家。
(ベストセラー132週目)

[1] “A version of this list appears in the January 1, 2017 issue of The New York Times Book Review. Rankings reflect sales for the week ending December 17, 2016. Lists are published early online.”(このベストセラー・リストは2017年1月1日のニューヨーク・タイムズ紙ブックレビュー欄に掲載されたもの。リストは12月17日で終わる週の売り上げをもとに作成されている)

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