読みきり小説

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  「カラーッ」 「カラーーッ」 「カラーーーッ」  甲高い声と床の振動で目を覚ますと、ぼやけた視界に赤茶けた天井が染みこむように広がった。ナミブ砂漠の灼熱を思わせる赤茶。その下を、同じ顔をした三人の
▽▷△超短編!大どんでん返し▼▶︎▲ 長岡弘樹『教場0.5 刑事指導官・風間公親』番外編「最後の指導」
 風間公親は、同じ県警捜査一課の織部匡章とともにその死体の前へと歩み寄った。 「わたしがきみに刑事としての指導をするのも、これが最後になる。そこで、もう一度だけ変死体を調べるときの基本を、簡単におさら
▽▷△超短編!大どんでん返し▼▶︎▲ 曽根圭介「尋問」
 市内在住の落合美由紀さん(23)が行方不明になっている事件で、落合さんの婚約者とも連絡が取れなくなっていることがわかった。警察は何らかの事情を知っているとみて、三十代男性から話を聞いている。男性は過
▽▷△超短編!大どんでん返し▼▶︎▲ 門井慶喜「消費の対象としての尊王」
 元治元年(一八六四)五月中旬というから、京洛中を震撼させた池田屋事件の一か月ほど前のこと。  松山幾之介という新選組隊士が岡山に潜入した。岡山は三十二万石の大藩であるが、おもてむきは新選組に、という
▽▷△超短編!大どんでん返し▼▶︎▲
 電話が滑るー! 生きてるみたいに手から逃げるー!  私の電話は、いわゆるスマホで、板状の外観をしている。そいつで電話をかけようとするのだが、何故だかつるりと滑って逃げてしまう。床に落下する前に、バレ
▽▷△超短編!大どんでん返し▼▶︎▲ 夏川草介「不運な患者」
 広い廊下をいくつもの白衣が足早に通り過ぎていく。壮年の男性、若い女医、明らかに研修医らしき青年……、次々と吸い込まれていく先は、廊下の突き当りにある大きなドアだ。頭上の「手術中」と書かれた表示灯は、
▽▷△超短編!大どんでん返し▼▶︎▲ 北村 薫「激しい雨」
 Kさん。貴女からのお葉書が届いたのは、丁度、秋の大雨のあとでした。 《さて、かねてよりご依頼申し上げておりました、弊誌のショートストーリー「大どんでん返し」の締切が近づいてまいりました》──と書かれ
▽▷△超短編!大どんでん返し▼▶︎▲ 柳 広司「阿蘭陀幽霊」
「このお屋敷に日本人の幽霊が出ると聞いて来たのですが?」  橘彰は屋敷の主人だという老人に名刺を差し出した。名刺には「ゴースト・ライター」の肩書が印刷されている。ニヤリと笑い、「違います。代作者ではな
▽▷△超短編!大どんでん返し▼▶︎▲ 伽古屋圭市「籠城  オブ・ザ・デッド」
「ふぅ……。これだけ出入口を塞げば、やつらもしばらく入ってこられないですよね」 「せやな。まあ、根本的な解決にはならんけどな」 「……とにかく、いまは生き延びることを考えましょう」 「わこぉてる。とり
▽▷△超短編!大どんでん返し▼▶︎▲ 青柳碧人「掌編・西遊記」
 窓から差し込む月明かりが、やけに明るい夜である。床に堆く積まれた書物の間に寝転がり、孫悟空は瓢箪の徳利から酒を飲んでいた。明日はついに、求めていた水商人と会うことができる。──ほら、やっぱり俺ひとり
▽▷△超短編!大どんでん返し▼▶︎▲ 青崎有吾「your name」
 現れた男は、見事な禿げ頭だった。  その頭が旅館のレトロな照明を反射し、てかてかと眩しかった。おそらく剃っているのだろう。顔立ちはまだ若い。Tシャツには〈諸行無常〉の四文字が大きくプリントされている
▽▷△超短編!大どんでん返し▼▶︎▲ 大山誠一郎「硬く冷たく」
 ドアが開いて、ボスとマイケルが入ってくる。ドアの向こうでは、闇の中、粉雪が舞い狂っているのが見える。凍てつくような真冬の夜だ。分厚いコートを脱ぎながらボスが言う。 「ヴィト、お前に殺ってほしいやつが
▽▷△超短編!大どんでん返し▼▶︎▲ 深緑野分「どんでんがかえる」
 世間じゃ、お話の終わりで「えっ」と読者を驚かせるようなことを「どんでん返し」なんぞと申すようですが、あたしの知ってるどんでんはちょっと違います。いえ、歌舞伎が語源だなどと言いたいんじゃありません。
▽▷△超短編!大どんでん返し▼▶︎▲ 恩田 陸「トワイライト」
 扉の向こう側で、遠くをざわざわと風が吹き抜け、どこまでも渡ってゆく音が地響きのように続いていた。  ここに閉じこもってからいったいどれほどの時間が過ぎたのだろう。  目の奥が痛む。こめかみを揉んでみ
西澤保彦「ちゃんと聞いてる?」
「ねえ、あなた。あなたってば。ちょっと。聞いてる? ちゃんと聞いてちょうだい」 「ああ。うん。聞いてるよ。なんだっけ」  受話器を持ちなおすおれの股間をアンジーが鉤鼻をひくつかせ、覗き込んできた。両掌
白井智之「首の皮一枚」
「やあ木偶の坊。気分はどうだ?」  パーシーが重たい目蓋を開けると、社長のアンドルーが嬉しそうにカメラを構えていた。  アロヨ工務店の倉庫棟の一角。金属製の椅子に胸と腰を縛り付けられているせいで身動き
▽▷△超短編!大どんでん返し▼▶︎▲ 上田早夕里「白い腕」
 私が子供時代を過ごした実家の庭先には土蔵がひとつあった。土壁に漆喰を塗って瓦を葺くタイプの古風な蔵だ。その外観は眩しいほどに白く、遠くからでもよく目をひいた。  七歳の夏休み、私は蔵のそばでバッタを
▽▷△超短編!大どんでん返し▼▶︎▲ 下村敦史「人を憎んで罪を憎まず」
「公共の場から出て行け!」  張詠晴は、突然浴びせかけられた罵倒に絶句した。 「お前らみたいな男が気持ち悪いんだよ! 犯罪者予備軍め!」  誰かや何かを攻撃したこともなく、今まで誰とでも平和に仲良くし