池上彰・総理の秘密<11>

トランプ大統領の就任以後、その独自路線を行く外交戦略から、日米首脳会談に一層の注目が集まっています。安倍政権としても、対アメリカへの毅然とした対応が求められる中、その展開やいかに?さて、大好評の連載第11回目は、そんな総理大臣の「給与」に着目。適正額は幾らと考えられるのか?池上彰氏がわかりやすく解説します。知っているとニュースがより面白くなり、他の人に自慢したくなるコラム。

総理の給与は高いか?

シンガポール政府は、2012年1月、首相の年収を約307万シンガポールドル(2016年の平均レートで1億9600万円)から28%削減しました。高すぎると国民の批判が集まったからです。とはいえ、それでもまだ220万シンガポールドル(約1億7300万円)もあり、世界のトップクラスです。

ではわが国の総理はどうでしょう。日本の総理大臣の給与は、「特別職の職員の給与に関する法律」で決まっています。それによると、2016年の月収は205万円で、これに18%の地域手当と年2回のボーナスがあり、年収は約4013万円です。

さて、この金額は高いのでしょうか。それとも当然の金額なのでしょうか。ただし、東日本大震災の復興のための臨時増税に国民の理解を得るためとして、2011年(平成23年)11月から2014年3月まで、特例法により総理は30%、閣僚は20%の給与削減が実施され、安倍内閣ではそれ以降も同率の自主返納を行っています。ですから実際の総理の年収は、約2809万円となります。

いっぽう、アメリカの大統領の年収は40万ドル(日本円で約4600万円)です。2016年12月現在の1ドル=約116円の計算ではこの金額ですが、為替レートの変動によって大きく変わるので、日本の総理の給与と比較するのは難しいですね。ただ、世界の大国のトップとしては、案外高くないという印象を受ける人もいるかも知れません。ただし、大統領として使える経費は他にもあるので、総額としては結構な額になります。

ロシアのプーチン大統領の年収は約889万ルーブル(約1470万円)と、2016年4月に公表されました。低い印象を受けますが、ロシア国民の年収は約65万円ですから、相対的には高額所得です。さて、日本の総理の適正額は?

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シンガポールのリー・シェンロン首相
初代首相リー・クワンユーの長男で、2004年8月に首相に就任した。写真/ロイター、アフロ

池上彰 プロフイール

いけがみ・あきら
ジャーナリスト。1950年、長野県生まれ。慶應義塾大学卒業後、NHKに入局。報道記者として事件や事故、教育問題などを取材。「週刊こどもニュース」キャスターを経て、2005年に独立。著書に『そうだったのか! 現代史』『伝える力』『1テーマ5分でわかる世界のニュースの基礎知識』ほか多数。2012年、東京工業大学教授に就任。16年より名城大学教授、東京工業大学特命教授。

(『池上彰と学ぶ日本の総理11』小学館より)

初出:P+D MAGAZINE(2017/02/10)

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