文学的「今日は何の日?」【5/18~5/24】

あの名作が世に出た日。
憧れのヒロインの誕生日。
かの大作家の失恋記念日。
……そう、毎日が何かの記念日です。さて、今日は何の日でしょうか。
5月18日から始まる1週間を見てみましょう。

5月18日

P・K・ディックの『高い城の男』で、枢軸国勝利後の米国で古美術品を買いあさる日本人を狙い、模造品が納入される

歴史改変SFの傑作として名高い『高い城の男』フィリップ・K・ディック作)。第二次世界大戦で枢軸国が勝利し、日本とドイツが分割統治するアメリカが舞台です。古美術商ロバート・チルダンは、大口取引をもちかけてきた日本人将校の代理人から、商品が偽物だと指摘されてしまいます。大手卸売業者から入手した間違いのない品のはずでしたが、当の卸売業者は5月18日付けで模造品工場から商品を仕入れていました。模造品工場の腕利き職人たち、「連合国が勝っていた」という歴史改変小説を書く「高い城の男」とその命を狙うナチ工作員などが入り乱れ……。果たして歴史の真実はどこにあるのでしょうか?


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5月19日

石田衣良『うつくしい子ども』で、行方不明女児の遺体が発見される

北関東の常陸県東野市で、行方不明で警察による公開捜査が行われていた女児が、5月19日に遺体で発見されました。遺体は損壊され、現場には「夜の王子」のサインと「これが最後ではない」の文字が残されており、静かな学園都市・東野は騒然となります。やがて逮捕――ではなく、補導をされたのは、同市の夢見丘中学1年生の三村和枝かずしでした。和枝の1つ上の兄・幹生は、「なぜ弟があんなことをやったのか、その理由を探そう」と決意。周囲の抵抗や妨害にもくじけず、同級生2人の協力を得て調査を続け、思いがけない真実にたどり着きますが――。14歳の少年の苦悩と成長を描く、魂の物語です。


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5月20日

武田泰淳『審判』で、二郎が初めて自ら人を殺める

第一次戦後派作家・武田泰淳による、自身が一兵卒として赴いた中国の戦場での体験を告白した『審判』。終戦後の上海で、借り物の聖書を読みつつ日を送っていた私は、現地復員してきた二郎と親しくなり、敗戦や原爆、罪と罰など、さまざまな思いを語り合います。その二郎には婚約者がいましたが、なぜか突然、婚約を破棄すると上海から去っていきました。後日「私」に届いた手紙には、5月20日に二郎が犯した、あまりに重い罪の告白が……。罪と罰に向き合おうとする青年を通し、戦争の狂気を淡々と描いた佳作です。


出典:https://www.shogakukan.co.jp/books/09352280

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5月21日

飛行家チャールズ・リンドバーグが太平洋単独無着陸飛行でパリに到着する

1927年5月20日、スピリット・オブ・セント・ルイス号でニューヨークのルーズベルト飛行場を飛び立ったチャールズ・リンドバーグは、翌21日、パリ郊外のル・ブルジェ空港に着陸、人類史上初めての大西洋単独無着陸横断飛行に成功しました。着陸するなり、熱狂のあまり空港になだれ込んできた人々によって、彼と愛機はもみくちゃにされ、大歓迎を受けます。この偉業の企画から資金集め、機体購入、そして実際の飛行までを綴った自伝『翼よ、あれがパリの灯だ』は、1954年にピュリッツァー賞伝記部門を受賞。名匠ビリー・ワイルダーにより、ジェームズ・スチュアート主演で映画化もされました。


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5月22日

H・マンケルの『イタリアン・シューズ』で、37年前のこの日に予定を偽ってふり捨てた恋人が現れて……

「刑事ヴァランダーシリーズ」で人気の、スウェーデンの推理作家ヘニング・マンケルが、1人の男の贖罪と再生を描く異色作『イタリアン・シューズ』。医療事故を起こして以来、離れ小島で隠棲する元外科医フレドリックのもとに、かつての恋人ハリエットが訪ねてきます。37年前の5月22日にアメリカ留学に発った彼は、出発日をわざと1日遅く彼女に伝え、そのまま連絡を断ったのです。別離後、初めて会うハリエットは、昔の約束――森の中の黒い湖に連れていく――を守ってほしいというのでした。不治の病に侵された彼女を伴い、少年時代の記憶をたどり湖に向かうフレドリックでしたが、事態は思わぬ方向に……。


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5月23日

川端康成不朽の名作『雪国』で島村と駒子が出会う

日本近代文学屈指の名作としてあまりにも有名な『雪国』は、「文筆家の端くれ」である島村と雪国の芸者・駒子のふれあいの物語です。2人は若葉の季節に出会い結ばれますが、その日のうちに島村は東京に帰っていきました。12月の初めに再び雪国を訪れた島村に、「五月の二十三日ね」と言った駒子は指を折って数えると、その日が出会いから199日目であると告げるのです。ひたむきな情熱を島村に捧げる駒子でしたが、東京に妻子のある島村にはゆきずりの愛以上のものではなく……。雪国の温泉町を舞台に、研ぎ澄まされた美しい文章で人の世の哀しさを描いた、川端文学の傑作です。


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5月24日

長岡弘樹『教場』で風間公親が初任科第98期短期過程の教官となる

警察学校を舞台に、鬼教官と恐れられる風間公親と警察官をめざす若者たちの葛藤を描く、長岡弘樹『教場』。「警察官としての資質に欠ける学生を、早い段階ではじきだすためのふるい」である警察学校の、初任科第98期短期過程の教官として風間が赴任するのが5月24日です。前任者の病気療養のため、年度途中での着任となりました。2013年「週刊文春ミステリーベスト10」第1位に選ばれるなど、警察小説の新たなジャンルを拓いた作品として人気を集めています。


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初出:P+D MAGAZINE(2020/05/18)

真栄平房昭『旅する琉球・沖縄史』/外交のあり方を考えさせる歴史コラム・時評集
【著者インタビュー】原田マハ『風神雷神 Juppiter,Aeolus』(上・下)/謎多き琳派の祖・俵屋宗達に材を取ったアートフィクション