阿津川辰海

採れたて本!【海外ミステリ】
 シャーロック・ホームズ。かの名探偵に憧れを捧げた作品は数多い。しかし、それだけにハードルの高い分野だ。今また、香港とインド、二つの場所から時を同じくして、ホームズへの新たなるラブレターが届いた。前者は莫理斯『辮髪のシャーロック・ホームズ 神探福邇の事件簿』、ホームズの事件と香港の時代性をクロスさせて、原典を一風変わっ
採れたて本!【海外ミステリ】
 これは一介のノワール読みからの忠告だが、「最後の仕事」なんて言葉を信頼してはいけない。理由は二つある。一つ、そいつは大抵、「最後」にはならない。二つ、本当に最後だったとしても、最悪の不幸ってやつは、必ず「最後」めがけてやってくる。ノワール読み必読の新刊、S・A・コスビーの『黒き荒野の果て』(ハーパーコリンズ・ジャパン
採れたて本!【海外ミステリ】
 お前と、お前の愛する者全てを殺す。殺人鬼の冷徹な脅迫から幕を開けるロバート・ベイリー『最後の審判』(小学館文庫)は、老弁護士トムを描く四部作の完結編にして、胸が張り裂けるような犯罪小説だ。ベイリーはこの四部作で、法廷ミステリーの中心街道を爆走してきた。一作目『ザ・プロフェッサー』では、仕事・私生活ともに追い詰められる
大どんでん返しspecial第2回
阿津川辰海「黒い雲」 高枝切り鋏を雲に差し込んで、素早く両腕を動かす。今日は曇り空で、高所作業でも汗をだらだらかかなくて済む。ぼくの近くには空にぷかぷか浮かんだゴンドラが二つあり、片方には霧吹きを持った男が、もう片方には袋を構えた男が立っている。二人とも仕事仲間だ。