推してけ!推してけ!

各界著名人が、発売間もない単行本をオススメする書評コーナーです。

「推してけ! 推してけ!」第23回 ◆『レッドゾーン』(夏川草介・著)
評者=池上 彰(ジャーナリスト) あのとき何が起きていたのか コロナに脅える病院の医師たちの奮闘 これは医療の世界を目指す人、必読の書だ。新型コロナウイルス対応のワクチン接種が進み、新型コロナがどういうものか理解と研究が進んだ現在では、恐怖心を抱く人も少なくなったが、いまから二年前の二月は、そうではなかった。当時、医療
推してけ! 推してけ!」第22回 ◆『さんず』(降田天・著)
評者=石井光太(ノンフィクション作家) 自死が織りなす残酷で滑稽な人間劇場 もしあなたが自ら命を絶つとするならば、いかなる理由によるものだろうか。耐え難い苦痛から逃れたいから? わが身に起きた不条理を世に知らしめたいから? 誰かに復讐を果たしたいから? 人間は命を授かった時から生きることへの本能を身につけている。だが、
評者=辻 真先(推理作家・脚本家) 読者も作者とおなじ土俵に立って 日本昔話のミステリ化でヒットを放った作者の新作です。あの有名なお話をどうひねってつないで殺人や密室がからむ話に変奏するのかと、さぞ読者のみなさん(ぼくを含む)は思案しながらお読みになったことでしょう。それに比べれば、今度の趣向はいくらかハードルが低そう
「推してけ! 推してけ!」第20回 ◆『宙ごはん』(町田そのこ・著)
評者=堀井美香(フリーアナウンサー) その一皿に、自分の心までほどかれていく。 最近の私は料理に無頓着だ。今日のポトフも適当な材料を鍋に放り込んだだけ。いや、最近に限った話ではない。仕事と子育てで忙しかった頃は、母として手作りの料理を食べさせているという既成事実が大事だった。いつもせわしなく済ませる食事の中で、手作りと
「推してけ! 推してけ!」第19回 ◆『夏が破れる』(新庄 耕・著)
評者=橘 玲(作家) 「いやな感じ」に魅せられて 冒頭のバンコクの場面から、新庄作品に独特の「いやな感じ」が漂ってくる。今回の主人公・進は三十代半ばの厚生労働省の官僚で、タイの日本大使館に赴任している。タイは中進国に経済成長したが、依然、少年・少女の売買春などのトラフィッキング(人身取引)が国際問題になっている。その被
「推してけ! 推してけ!」第18回 ◆『百年厨房』(村崎なぎこ・著)
評者=植野広生(「dancyu」編集長) 時代を超えて、食がみんなを笑顔にする 栃木県宇都宮市の北部に位置する大谷という町が舞台だ。市役所職員である主人公の大輔は、過去のトラウマから人と食事をすることを避け、一人で静かに暮らしていた。しかし、宝塚系の派手やかな友人の篠原、隣家のヨシエ婆、さらには大正時代からタイムスリッ
「推してけ! 推してけ!」第17回 ◆『コスメの王様』(高殿 円・著)
評者=中江有里(俳優・作家) 二匹の「子狸」が大化けした物語 コスメティックスの語源はコスモス=宇宙であると著名な画家から聞いたことがある。人間はこの地球上で自分たちが異質の存在であると知り、化粧(コスメ)をすることで宇宙との同化を試みたという。日常的な化粧を壮大な宇宙と絡めて考えることはないが、化粧は単に身だしなみと
評者=安藤桃子(映画監督) パラレルで、ミルフィーユ 「銀座四丁目交差点の角にある和光。その大時計の針が十時十分を指している。映画はそこから始まる。」という文章から、『ミニシアターの六人』は始まる。小説の舞台は銀座のミニシアター。2年前に他界した、末永静男という映画監督の追悼上映作品『夜、街の隙間』を観に来た6人の
「推してけ! 推してけ!」第15回 ◆『かすがい食堂 あしたの色』(伽古屋圭市・著)
評者=内田剛(ブックジャーナリスト) 共に食べれば心も未来も色づく! 駄菓子屋は誰でも安らげる心の故郷だ。そして親子二代三代にわたって親しまれてきた懐かしき日本の原風景でもある。通い慣れた学校の近くにあって安心なイメージ。ちょっと古びた店先であっても、店主が見つめるのは街の変化と子どもたちの成長。おまけを楽しんだりゲー
「推してけ! 推してけ!」第14回 ◆『彼女が最後に見たものは』(まさきとしか・著)
評者・黒木 瞳(女優) 見えているものだけが真実ではない。 『あの日、君は何をした』の『君』の謎を、ひとつひとつ丁寧に解いていく刑事、三ツ矢が再登場の、『彼女が最後に見たものは』を読んだ。まさきとしかなる作家の底力は半端なく、未知なる可能性は果てしなく拡がっていることを改めて実感する。読書好きにはたまらない一冊、『彼女
評者・相場英雄(作家) 盛り盛りの毒が全開! 超法規的捜査! 佐野晶という作家は不思議な人物だ。私を含め、作家を生業とするような人間は大概世間に順応できない変わり者、捻くれ者が多いが、その中でも同氏はかなり異質な存在だといえよう(褒めてます、念のため)。約二〇年前の見習い時代、勝手に師匠と仰ぐ大先輩作家からこんな言葉を
「推してけ! 推してけ!」第12回 ◆『アルテミスの涙』(下村敦史・著)
評者・今村昌弘(作家)この病室で、何かが起きた。それが最大の問題だった。 書評は、毎度のようにジレンマに陥る仕事だ。できることなら何も知らぬまま本を手にとってほしいと願いつつ、多少の内容を明かさないことには魅力が伝わらない。この物語はある私立病院に勤める産婦人科医、真理亜の視点で幕を開ける。ある夜当直についていた真理亜
「推してけ! 推してけ!」第11回 ◆『ヴァイタル・サイン』(南 杏子・著)
評者・西川史子(医師・タレント)あまりに無常で、どうにもやるせない現実との闘い 一言でいうと、医療現場の日常を当事者の目線でリアルに描いた小説。私にとっては身近に感じられる出来事の連続で、気が付くと、一気に読み終えている自分がいました。看護師さんからの目線で、多くの患者さんに感じること、そこから自分の人生について考える
「推してけ! 推してけ!」第10回 ◆『シンデレラ城の殺人』(紺野天龍・著)
評者・千街晶之(ミステリ評論家) ああ言えばこう言うシンデレラの法廷推理戦術 近年、パラレルワールドを舞台にしたり、幽霊やゾンビなどの実在を謎解きの前提にしたり……といったタイプのミステリが「特殊設定ミステリ」と呼ばれている。二○一八年に『ゼロの戦術師』でデビューし、科学の代わりに錬金術が文明を形成している架空世界を舞
「推してけ! 推してけ!」第9回 ◆『シンデレラ城の殺人』(紺野天龍・著)
評者・杉江松恋(書評家) もしかすると世界で一番好きなシンデレラ あ、このシンデレラいいじゃない。素敵。主人公の魅力でまず、ばっちり心を掴まれたのだ。紺野天龍『シンデレラ城の殺人』は、有名すぎるほどに有名なあの童話を下敷きにした、読みどころ満載のミステリーである。物語の舞台となるのは、架空の王国イルシオンだ。現国王の跡
「推してけ! 推してけ!」第8回 ◆『超短編! 大どんでん返し』(小学館文庫編集部・編)
評者・竹本健治(作家) この作家博覧会を見逃す手はない 乾くるみ、蘇部健一、似鳥鶏、米澤穂信、日明恩、田丸雅智、辻真先、井上真偽、東川篤哉、葉真中顕、法月綸太郎、呉勝浩、翔田寛、下村敦史、上田早夕里、白井智之、西澤保彦、恩田陸、深緑野分、大山誠一郎、青崎有吾、青柳碧人、伽古屋圭市、柳広司、北村薫、夏川草介、乙一、
「推してけ! 推してけ!」第7回 ◆『緑陰深きところ』(遠田潤子・著)
評者・北上次郎(文芸評論家) 諦観と哀しみと力強い決意が心に残る 冒頭は一枚の絵葉書だ。雛人形の写真が印刷されている。正面から撮った男雛と女雛だ。通信欄には達者な筆でこう記されている。 花開萬人集 花盡一人無 但見雙黄鳥 緑陰深處呼 ──花開けば万人集まり 花尽くれば一人なし ただ見る双黄鳥 緑陰深き処に呼ぶを
「推してけ! 推してけ!」第6回 ◆『かすがい食堂』(伽古屋圭市・著)
評者・瀧井朝世(ライター) 美味しい料理の先に希望を見出す とても丁寧に、真摯に書かれた小説。それが、伽古屋圭市『かすがい食堂』を読んで真っ先に抱いた印象だ。駄菓子屋の奥にある、とても小さな子ども食堂の物語である。憧れていた映像制作の会社に入ったものの激務で倒れ、3年勤めて退職した春日井楓子は、80歳になる祖母が営んで