夏川草介
◎編集者コラム◎ 累計330万部を超えるベストセラーシリーズ『神様のカルテ』が、2021年1月クールのドラマとして主演に福士蒼汰さん、清野菜名さんをお迎えし、2時間×4話の計8時間という大型スペシャ
「諸君、旅の準備をしたまえ」 我ながら、少し不思議な物語を書いた。変わり者の民俗学者とその教え子が日本各地を旅する物語である。格別奇をてらったわけではない。コロナ騒ぎでほとんど病院を離れられない腹い
第一話 寄り道 九月の弘前は、いまだ夏の名残りを濃厚に残していた。 時候はすでに秋の入り口だというのに、照りつける日差しはまるっきり真夏のそれで、駅のホームに光と影の濃厚な陰影を刻みつけていた。
人は生死の境界線をも越えた無数の繋がりの中で生きている
長野県で地域医療に従事する医師である夏川草介は、2009年に様々な患者と向き合う内科医の姿を描いた『神様のカルテ』で第10回小学
その老人は、一言で言えば、大変な患者であった。薬は勝手にやめる。肝臓が悪いのに大酒を飲む。外来は連絡なしで休むし、電話をすると「うるせえ」と怒鳴り声を上げる。私とて医師である前に人間であるから、時と
十年が過ぎた。 それが、本書を書き上げたときの最初の感慨であった。十年前『神様のカルテ』第一巻を上梓して以来、2巻、3巻、0巻の順に進んで、いつのまにやらずいぶんな月日を勘定したことになるのだが、
民俗学を学ぶ大学院生の藤崎千佳と、その師・古屋神寺郎が日本各地を巡りながら出会う"物語"を小誌で発表している夏川草介さん。「寄り道」「七色」「始まりの木」「同行二人」と四話が完成し、現在は来年発表予