夏川草介

夏川草介『臨床の砦』
コロナ最前線の砦から 本書『臨床の砦』は、コロナ診療の最前線を描いた小説である。最前線といっても、人工呼吸器やECMO(体外式膜型人工肺)が登場するような高度医療機関ではない。呼吸器内科医も感染症専門医もいない、地方都市の小さな感染症指定医療機関が舞台である。
「推してけ! 推してけ!」特別編 ◆『臨床の砦』(夏川草介・著)
評者・知念実希人(作家・医師) 現役医師がコロナ禍の地域医療をリアルに描いたドキュメント小説 二〇二〇年の初め、数か月後に予定されているオリンピックを待ち望んでいた日本の「日常」は誰も気づかないうちにゆっくりと、しかし確実に侵食されはじめていた。中国の武漢で報告された原因不明の肺炎の原因は、一月には新型のコロナウイルスによる感染症であると判明し、
『コロナ』第1話読み切り
一、 青空 まっすぐな農道を疾走していた救急車が、ふいに速度を落とし始めた。 後部座席に座っていた敷島寛治は、わずかに前のめりになりかけて、慌てて壁の手すりに手を伸ばした。ほとんど同時に、運転席から、歯切れの良い声が飛び込んでくる。
◎編集者コラム◎ 『新章 神様のカルテ』夏川草介
◎編集者コラム◎ 『新章 神様のカルテ』夏川草介  累計330万部を超えるベストセラーシリーズ『神様のカルテ』が、2021年1月クールのドラマとして主演に福士蒼汰さん、
始まりの木
「諸君、旅の準備をしたまえ」  我ながら、少し不思議な物語を書いた。変わり者の民俗学者とその教え子が日本各地を旅する物語である。格別奇をてらったわけではない。コロナ騒ぎでほとん
夏川草介の新刊『始まりの木』 第1話まるごとためし読み!
第一話 寄り道  九月の弘前は、いまだ夏の名残りを濃厚に残していた。  時候はすでに秋の入り口だというのに、照りつける日差しはまるっきり真夏のそれで、駅のホームに光と影の濃厚な陰影を刻み
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人は生死の境界線をも越えた無数の繋がりの中で生きている  長野県で地域医療に従事する医師である夏川草介は、2009年に様々な患者と向き合う内科医の姿を描いた『神様のカルテ』で第10回小学館文庫小説賞
思い出の味 ◈ 夏川草介
 その老人は、一言で言えば、大変な患者であった。薬は勝手にやめる。肝臓が悪いのに大酒を飲む。外来は連絡なしで休むし、電話をすると「うるせえ」と怒鳴り声を上げる。私とて医師である前に人間であるから、時と
◇自著を語る◇  夏川草介『新章  神様のカルテ』
 十年が過ぎた。  それが、本書を書き上げたときの最初の感慨であった。十年前『神様のカルテ』第一巻を上梓して以来、2巻、3巻、0巻の順に進んで、いつのまにやらずいぶんな月日を勘定したことになるのだが、
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 民俗学を学ぶ大学院生の藤崎千佳と、その師・古屋神寺郎が日本各地を巡りながら出会う"物語"を小誌で発表している夏川草介さん。「寄り道」「七色」「始まりの木」「同行二人」と四話が完成し、現在は来年発表