小学館文庫
毎月6日発売。新刊を紹介します。
365日全身冷え性である。手を洗えば手先が紫色。気温が下がる朝晩は顔面蒼白。特に冬の夜は、寝る前の準備が大変だ。ヒートテックを数枚重ね着からのカイロと靴下。湯たんぽをセットし、毛布は2枚重ね。毛糸の帽子とマスクを着用しいざ就寝となる。冷えとは戦いである。そんな私にある驚きの作品が目にとまった。史上初!? の冷え性小説
私は独身で子どももいない。よく独身者に対して所帯や子どもを持たないと「人として一人前ではない」「親の気持ちは分からない」と言う人がいる。私もよく言われたもんですよ。私自身親の気持ちが理解出来ているとは言い難いし、褒められた人間でないことは自覚しているが、結婚しない事情、子どもがいない事情は人それぞれだ。逆に既婚者や家
亡くなってから40年近く経つ今も、新たな読者を獲得し続けている大作家の復刊である。有吉佐和子作品のすべてを読み尽くしたとまでは言えないものの、タイトルくらいは全部知っているはず……と思っていたのだが、この本については完全にノーマークだった。長年のファンとしてそのことがちょっと悔しく、早速発売日に入手した。紀行エッセイ
この本は、102歳の哲代おばあちゃんの一人暮らしの日常を描いたものです。中国新聞の記者がおばあちゃんのもとに通い、その日々の出来事を一人語りで日記風にまとめて連載していたのですが、広島では大人気です。というのも、おばあちゃんの言葉が本当に前向きで若い私達にも、ものすごく刺さるのです。中でも一番私の心に刺さった言葉があ
前回、小説を読むときの自分のポイントについて触れましたが、私は「小説なんて必要ない」と言われたことがあります。小説丸をチェックし、私のつたない文を読んでくださる親切な人にとっては、驚きの(もしくは、同じ経験があるかもしれない)言葉です。その時の私が、笑顔で何をしたかはさておき、今回の作品を読み終わったとき、これが、小
2021年頃から Twitter のツイートにてツリー形式で創作される「 Twitter 文学」が話題になっている。誰でも投稿ができて気軽に人の眼に触れられるのもあってか、たくさんの作品を閲覧することができる。内容も色々で仕事に関係したものや投稿者のプライベートに題材を得たものもあって興味は尽きない。そのなかでも注目
家から30分ほどの距離に鎌倉がある。出身どこ? と聞かれると「横浜です」と答えてきた私だが、実際は横須賀市、逗子市の境目のぎりぎりハマっこである。だからなのか桜木町やみなとみらいなどのザ・横浜よりも実は鎌倉の方が行きやすく居心地がいい。神社仏閣を訪ねるのが好きなのも、より鎌倉の居心地の良さにつながっているのかもしれな
何もかもが心を迂回していくようだった。言葉はすべて本心を避けて通った。 なけなしの社会性はとうに擦り切れ、もう何の気力も残っていないというのに、立ち止まる術が無い。 夕暮れが懲りもせず私を急き立てる。靴の埃を払う事さえ出来ないような日々に、幾度となく自分を恥じた。やがて冬が訪れても、豪雪ののち翳りの中にいつまでも溶け
時代小説は、いつも緊張してドキドキしてしまう。私自身が歴史に詳しくないので、どうしてもハードルが上がってしまうのだ。そのため読む機会も少なく、自分の力不足に毎回打ちひしがれている。ただ、今回ご紹介する『木挽町のあだ討ち』は、「時代小説が得意でない」という自分を打ち消したいほど驚きの物語だった。時代は江戸時代。ある雪の
竹田ダニエル。その存在を知ったのは Twitter だった。そこで披露されている論考のクールさと熱さの融和が絶妙で、今私が最も注目し、信頼する書き手の1人だ。著者はいわゆる「Z世代」に身を置く人物として、アメリカの音楽を中心とした文化を題材に、研ぎ澄まされた思考や生き方の提示を世界へ向けて発信し続けている。Z世代とは
女性が自立して生きることや表現者であることに、まだ世の中が寛容でなかった時代に、作家となることを選んだ9人の生涯に、父と娘という視点から鋭く迫ったノンフィクションである。『この父ありて』という題名から、さぞ立派なお父様たちに育てられた女性たちなのだろうと思われる方が多いのではないだろうか。もちろん、そのような父も登場
本を読む意味ってなんだろうと考えることがあります。娯楽のため、必要な知識を得るため、仕事に役立てるため、などなどいろいろありますが、私が特に大事だと思っているのは「本を読むことで、私ではない他の人のことを知り、理解しようとすること」ではないかと思っています。私は、私以外の他の人が何を考えているのかわかりません。その人
小説を読むとき、大事にしているポイントはありますか? 泣けること。新たな知識を身につけられること。現実にはできない体験をすること。思いつくだけでも、いろいろありますね。私は文章から色や音、風、匂いなど、五感を刺激されるものが好きです。だからSFや歴史ものが苦手なのかもしれません…。さて今回は、そんな作品から一冊を紹介
書店員になり、新刊を出したりフェアを考えたりする仕事だけではなく、作品のおすすめなど文章を提出する仕事も増えた。学生時代から国語の授業は得意だったし、話すことも大好きだったが読書感想文や日記など、頭にぐるぐるとたくさん浮かんでいることを文章として構築することが苦手であることにいつしか気づいた。そのため詩や短歌など、文
ちょっとしたタイミングで運命的に出会ってしまった人の存在、普段意識をしていなくても、もしかしたら誰でも心当たりがあるのではないだろうか。恋愛や友情を通じて掛け替えのない人、もしくは自分にとって都合の良い人、羅針盤のようにこれからの生き方を示してくれる人。色々いるだろうけど、その人が自分の大切な心の中へ踏み込んできたと
ユーミンは50周年なのだ。気づいたら当たり前のように暮らしの中にはユーミンの曲が流れていた。昭和も、平成も、令和も。街中でも、スキー場でも、ビーチでも。懐かしくも新しく、時や空間を超えて輝き続けている。近年でユーミンの人柄に魅了されたのは、2021年紅白のステージだった。一瞬にして会場の空気をつかむ笑顔のトークと天性
8人の書店員が週替わりでその時々のおススメの本を三冊紹介する『週末は書店へ行こう!』。「他の書店員さんが紹介する本と被らない」「メインで紹介するのは新刊」という制約があったため、私が書きたかったものを既に他の書店員さんが紹介したり、その時々で何を紹介しようか悩んだりするかもと思ったが、不思議と被ることも悩むことも無く
『リバー』! まずはこの分厚さに驚く。ずっしりとくる重さは電子書籍では絶対に味わえない紙の本での読書の魅力だろう。渡良瀬川は群馬県桐生市と栃木県足利市に流れる大きな川。数々の支流を飲み込み利根川支流では最大の流域面積を誇る。その渡良瀬川の河川敷に若い女性の絞殺死体が見つかる。現場に向かう捜査員の頭に10年前にこの地で起