書店員コラム

「〇〇な時に読む本」というお題で、書店員の皆様に「推し本」を紹介していただきます。

週末は書店へ行こう! 目利き書店員のブックガイド 今回の目利きさん TSUTAYA 中万々店 山中由貴さん
小説は不思議な媒体だ。そこにある情景を一瞬で見ることはできない。読むという行為を通して文字が降り積もり、じぶんがそれを読むスピードで、光景やできごとが地面からにょきにょき生えてくる。3Dプリンタで使われる素材が「言葉」だったら、物語が脳内で組み立てられていく過程は、きっとそんなかんじだ。
週末は書店へ行こう! 目利き書店員のブックガイド 今回の目利きさん 啓文社 西条店 三島政幸さん
《スターリングラードにおけるソ連軍の勝利。この一語を得るために失った人命は、ソ連軍が一一〇万人、市民二〇万人。(中略)
枢軸軍は七二万人を失った。総勢二〇〇万人超の死。これは第一次世界大戦で最大の要塞攻防戦、ヴェルダンの戦いを遥かにしのぐものだった。》「第四章 ヴォルガの向こうに我らの土地なし」より
週末は書店へ行こう! 目利き書店員のブックガイド 今回の目利きさん 三省堂書店 成城店 大塚真祐子さん
 ウイルスの感染拡大を抑止するため、人との身体的距離を空けることを推奨する「ソーシャル・ディスタンス」は、その耳慣れなさも相まって急速に定着したが、本来は親密性の程度を表す社会学用語であり、つながりは保つべきという意味で、「フィジカル・ディスタンシング」への言い換えをはかる動きがある。
週末は書店へ行こう! 目利き書店員のブックガイド 今回の目利きさん うさぎや 矢板店 山田恵理子さん
《無戸籍》について、今まで耳にしたことはあっても、深く考えたことがなかった。この小説の中でテーマとなり掘りさげられ、現実問題として考えさせられる。なんらかの事情で出世届が提出されず、戸籍のないまま生きている人たちがいる。
週末は書店へ行こう! 目利き書店員のブックガイド 今回の目利きさん うなぎBOOKS 本間悠さん
もう15年も前の話。当時私は2歳になる息子の手を引いていた。転ばず、余計なものに気をとられず、出来るだけまっすぐ歩けるように。私を頼りに歩くその小さな手を握りながら、彼の未来が明るいものであるようにと願ったものだ。
週末は書店へ行こう! 目利き書店員のブックガイド 今回の目利きさん 成田本店 みなと高台店 櫻井美怜さん
 小学生のとき、クラス全員が朝食になにを食べてきたのか順番に言わされたことがあった。模範的な朝食のメニューが次々と披露されるなかで、決して裕福な家庭で育ったわけではない私は自分が食べたものを正直に答えられずに前の席の子とまったく同じ味噌汁と魚というメニューを答えた。
週末は書店へ行こう! 目利き書店員のブックガイド 今回の目利きさん TSUTAYA 中万々店 山中由貴さん
本を閉じたあと身体がじーーーんと響いているような、なんともいえない感動を味わうことがごくまれにある。その余韻が全身に沁みわたり、ひたひたに包み込まれ、なんならすこし地面から浮かんでしまってないか?と感じることが。『テムズ川の娘』を読んでじっさいそうなった人物(私)がいうのだから間違いないです。
週末は書店へ行こう! 目利き書店員のブックガイド 今回の目利きさん 啓文社 西条店 三島政幸さん
 神生島(かみおじま)は日本の本土から離れた島である。本土(本書では「くが」と呼ばれる)では「ゴイッシン」が起きたという噂だが、島の人々には関わりのないことだ。そこに、「くが」から一ノ屋松造、通称イチマツが帰ってきた。5年前に島を出ていき、一ノ屋の家系は滅びると言われていたところに帰還してきたのだ。
週末は書店へ行こう! 目利き書店員のブックガイド 今回の目利きさん 三省堂書店 成城店 大塚真祐子さん
 社会科の選択科目は「政治・経済」だった私にとって、歴史の授業は主に内職または睡眠に充てられた。本を読み、その登場人物を愛し、ストーリーを追いかけるのは何よりも好きだった少女が「歴史」にハマらなかったのは、ひたすら「点」を暗記するだけの作業に楽しさを見いだせなかったからだろう。
週末は書店へ行こう! 目利き書店員のブックガイド 今回の目利きさん うさぎや 矢板店 山田恵理子さん
 この世の男社会を、くるっと男女反転させてしまった小説が誕生した。なるほど、男女格差を正面から斬り込んでいくよりも、見えてくるものがクリアになる。
週末は書店へ行こう! 目利き書店員のブックガイド 今回の目利きさん うなぎBOOKS 本間悠さん
社会科の選択科目は「政治・経済」だった私にとって、歴史の授業は主に内職または睡眠に充てられた。本を読み、その登場人物を愛し、ストーリーを追いかけるのは何よりも好きだった少女が「歴史」にハマらなかったのは、ひたすら「点」を暗記するだけの作業に楽しさを見いだせなかったからだろう。
週末は書店へ行こう! 目利き書店員のブックガイド 今回の目利きさん 吉見書店 竜南店 柳下博幸さん
 堂場瞬一作家デビュー20周年を記念したサイトにアンケートを提出したのは今年の春でした。その中で〝Q・こんな作品を読んでみたい〟との設問があり〝A・高校野球モノ。ありきたりかもしれませんが、堂場さんが書く高校野球はちょっとワクワクします〟と書いたところすぐに編集さんから返信があり「高校野球モノ、出しますよ」と。
週末は書店へ行こう! 目利き書店員のブックガイド 今回の目利きさん 成田本店 みなと高台店 櫻井美怜さん
 不幸の香りがする男性が好きだ。どことなく影のある人に惹かれるのだ。品行方正、清廉潔白というよりも、少し悪そうなほうがいい。シャツのボタンを一番上まできっちりとめている優等生よりも、学ランの下から赤いトレーナーが見えている不良っぽい子を。
週末は書店へ行こう! 目利き書店員のブックガイド 今回の目利きさん TSUTAYA 中万々店 山中由貴さん
人生でいちどくらい、壮大な陰謀の渦に巻き込まれて、「この国の危機を救えるのは俺だけ…だと…!?」とか「ああっ!黒幕はお前か…!」とか死にそうになりながらいってみたい。ジェームズ・ボンドやイーサン・ハントを栄養分にすくすく想像力を育ててきた私は、よくそんなふうに夢想する。
週末は書店へ行こう! 目利き書店員のブックガイド 今回の目利きさん 啓文社 西条店 三島政幸さん
『生命科学での名声など、私にはまったく意味のないものだったんだ。ノーベル賞にも興味ない。ワトソンやクリックではなく、私は綾辻行人になりたかったんだ』(『硝子の塔の殺人』より、神津島太郎の発言)「館もの」――ミステリファン、とりわけ本格ミステリファンにとっては、何か特別な響きのある言葉だ。
週末は書店へ行こう! 目利き書店員のブックガイド 今回の目利きさん 丸善 お茶の水店 沢田史郎さん
 いやはや、この人の手にかかると、馴染みの物語がまるで違った顔を覗かせる。「あっ! そういう事だったのか!」という驚嘆は、ありふれたミステリー小説の比ではない。行間に秘された意味を掘り起こし、噛み砕いて案内する手腕は、一頭地を抜いている。