連載小説

◇長編小説◇里見 蘭「漂白」連載第8回
 犯罪心理学者は、フリップボードを新しいものと入れ替えた。 『まず、FBIが性的殺人犯の分類に用いる、「秩序型」、「無秩序型」というモデルを適用すると、この犯人は秩序型と言えるかと思います。これを前提
◇長編小説◇里見 蘭「漂白」連載第7回
     2 「志鶴、あなたまたそれだけ? せめておかずくらい食べたら?」  冷蔵庫から出した牛乳をグラスに注いでテーブルに座った志鶴に、母親が声をかけた。 「ううん、いい」志鶴は答え、グラスに口をつ
◇長編小説◇里見 蘭「漂白」連載第6回
       1 「どうした。全然食べてないじゃん」  三浦俊也(みうらしゅんや)が言った。  職場近くのワインバル。夕食を誘われ、仕事に区切りをつけてやって来た。  テーブルには、料理が盛られた皿が
◇長編小説◇里見 蘭「漂白」連載第5回
「……私は、栗原学さんを殺すつもりなんて、ありませんでした。あのときは、ただ、自分の身を守ろうと無我夢中で……」  嗚咽(おえつ)で、彼女の言葉は途切れた。 「すみません……私からは、以上です」  彼
◇長編小説◇里見 蘭「漂白」連載第4回
 志鶴は、司法解剖を担当した医師による鑑定書を書画カメラで提示した。 「検察側は、栗原氏の死因を、腹部の傷口からの出血による、出血性ショックとしています。救急手術を担当した医師による死亡診断書にも死因
◇長編小説◇里見 蘭「漂白」連載第3回
 志鶴は、検察側が証拠として請求した、栗原学の死体の損傷状況をイラストにした書面を書画カメラで提示した。 「栗原氏の体には、腹部の傷の他、もう一つ、爪やすりによる傷がありました。左上腕部の内側に。検察
◇長編小説◇里見 蘭「漂白」連載第2回
 ──呑(の)まれるな。  胸の中で、ひるみそうな自分を叱咤(しった)し、もはやこの世にはいない相手に声をかける。  ──やるよ。見てて、尊(たける)。  志鶴のスーツの上着のポケットにはお守り代わり
◇長編小説◇里見 蘭「漂白」連載第1回
   「弁護人、最終弁論をどうぞ」  静まりかえった法廷に裁判長の声が響く。 「はい」  答えた川村志鶴(かわむらしづる)は、弁護人席の正面の検察官席の背後に置かれた椅子に座る、自分と同い年の女性の視