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採れたて本!【評論】
 本書は、現在の文化産業におけるコンテンツの「発信側」と「受信側」の認識落差の深みを可視化したことで大反響を呼んだウェブコラム記事を大幅加筆したものだ。ファスト映画に象徴される「粗筋と見所まとめ」じみたマニュアル的存在の優先的受容を「情報過多時代に観客が生き抜くための一種の必然であり、そこに旧来の本来的な、というか低効
「推してけ! 推してけ!」第23回 ◆『レッドゾーン』(夏川草介・著)
評者=池上 彰(ジャーナリスト) あのとき何が起きていたのか コロナに脅える病院の医師たちの奮闘 これは医療の世界を目指す人、必読の書だ。新型コロナウイルス対応のワクチン接種が進み、新型コロナがどういうものか理解と研究が進んだ現在では、恐怖心を抱く人も少なくなったが、いまから二年前の二月は、そうではなかった。当時、医療
週末は書店へ行こう! 目利き書店員のブックガイド 今回の目利きさん 丸善 お茶の水店 沢田史郎さん
 1998年3月13日。東大の後期試験の数学で、受験史に残る難問が出た。その難易度といったら、試験当日に解答速報を出すのが通例となっている一流大手予備校でさえ、一日では解けなかったというレベル。当然、完答できた受験生はゼロ。という設定は、実は本当にあった話だそうだ。その伝説の難問事件に材を取り、多彩なキャラクターとユー
むちゃぶり御免!書店員リレーコラム*第1回
 旅行がめんどくさい。交通機関を調べたり、宿を予約したり、地図でいきたい場所と場所の位置関係を見て唸ったり、天気の心配をしたり、荷づくりにそわそわしたり、靴はどうしようか悩んだり。出発前の考えることリストを考えるのがめんどくさい。わたしはあまり旅に向いた人間ではない。そんなわたしが旅を夢見てうっとりしてしまった、とって
採れたて本!【海外ミステリ】
 きみの言葉で聞かせてほしい。ゆっくりで構わないから。謎、推理、冒険。その全てが詰まったロンドンでの日々を。きみの言葉で語ってほしい。そう呼びかけてページを開けば、十二歳の少年、テッドはユーモラスに語り始める。シヴォーン・ダウド『ロンドン・アイの謎』(東京創元社)は、子供の視線から見た瑞々しい景色と、家族についての悩み
週末は書店へ行こう! 目利き書店員のブックガイド 今回の目利きさん 八重洲ブックセンター京急百貨店上大岡店 平井真実さん
 デビュー時から読み続けている作家さんが何人かいる。しかし書店員といえどもこの世に出ている全てを読んでいるわけではなく、苦手なジャンルもあり、最初はすっと身体になじんでいたものが、作品を追うごとになかなか咀嚼できなくなってしまい、読み続けることを挫折してしまうこともある。そんな中、デビューから15年たった今も唯一無二の
採れたて本!【エンタメ】
 鉄を生み出すために必要なものは、鉄鉱石だけではない。石炭を1000℃以上の高温炉で蒸し焼きにした原料も必要なのである。そうやって石炭を強固にした原料の名を、コークス、という。本書の主人公であるひの子は、炭鉱町の出身で、現在は東京で校閲の仕事をしている。非正規雇用で働く彼女は、仕事の合間に小説を書く。ひの子の両親は既に
田島芽瑠の読メル幸せ
8⽉になりました 暑い⽇が続いていますね。皆さん体調は⼤丈夫でしょうか?先⽇ファンクラブを開設して初の対⾯でのイベントを⾏いました オンラインでのイベントはしていたのですが卒業後、皆さんと会える初めてのイベントだったのですっごくワクワクしていました!みんなと久しぶりに対⾯で会えてお話しして笑ってこの空間がとても懐かしく
週末は書店へ行こう! 目利き書店員のブックガイド 今回の目利きさん うさぎや 矢板店 山田恵理子さん
 ウクライナの4歳の女の子が空爆で命を落としたと自宅でつけているテレビのニュースから流れてきた。亡くなる1時間前に母親と笑顔で歩いていた映像に涙が出てくる。幼い子どもの被害に耐えられない。もうやめてと世界中から願っても止められない。もっと現代には秩序があると思っていたが、幻想だった。『モノクロの夏に帰る』を執筆するにあ
採れたて本!【ライトノベル】
 周囲の人間がほとんどそのまま地元で就職するような東北の地方都市に生まれ、「分相応を心がけ」「身の程をわきまえ」て生きることを自分に課してきた高校三年生の真嶋正太。そんな彼が忍び込んだ夜の教室でクラスメイトの月森灯と遭遇するところから本書は始まる。こういう導入の場合、ヒロインの正体が吸血鬼だったり人外の化け物で、日常の
◎編集者コラム◎ 『あの日に亡くなるあなたへ』藤ノ木 優
 小学館文庫2022年8月刊『あの日に亡くなるあなたへ』の編集者コラムをご覧いただきありがとうございます。本作の編集業務を担当させていただきましたA田と申します。本コラムを執筆している7月末現在、関東では急に猛烈な雨が降るなど天気が安定しない日々が続いていますが、実は本作、偶然にもこの「雨」が重要なキーワードになってい
◉話題作、読んで観る?◉ 第52回「TANG タング」
 2016年のベルリン国際映画祭にて「映画化したい一冊」として紹介された、英国の作家デボラ・インストールの処女作『ロボット・イン・ザ・ガーデン』の映画化。池井戸潤原作の映画『アキラとあきら』が8月26日(金)から公開される三木孝浩監督が、大人になりきれずにいる30代の男性とポンコツロボットとのおかしなロードムービーとし
◎編集者コラム◎ 『恋文横丁 八祥亭』立川談四楼
 今回の作品の企画がスタートしたのは、6年ほど前のことでした。私が担当する作家さんの単行本を、談四楼師匠が週刊誌の書評で取り上げてくれたのがきっかけです。師匠は立川談志さんの一番弟子として知られる人気落語家であると同時に、「石油ポンプの女」『ファイティング寿限無』などの著作も持つ作家としても著名です。書評のお礼かたがた
◎編集者コラム◎ 『聖週間』アンドレアス・フェーア 訳/酒寄進一
 昨年1月の『咆哮』、7月『羊の頭』に続き、〈ヴァルナー&クロイトナー〉シリーズ第3弾となる『聖週間』が刊行となりました。前作から1年、楽しみに待ってくださった方もいらっしゃるでしょうか。凍った湖の氷の下から金襴緞子のドレスを身に着けた少女の死体発見(『咆哮』)。山頂で男の頭部が銃で吹き飛ばされる(『羊の頭』)。ショッ
週末は書店へ行こう! 目利き書店員のブックガイド 今回の目利きさん うなぎBOOKS 本間悠さん
 書店員をやっていると「一番好きな本(または作家)」を聞かれることがある。とても絞りきれないので、その手の質問には「選べません」と答えているが、その代わり、一番好きな映画なら即答できる。1973年に公開された、悪魔祓いを描いた作品『エクソシスト』だ。という流れで、芦花公園さんの最新刊『とらすの子』を紹介したい。物語は、
◎編集者コラム◎ 『江戸寺子屋薫風庵』篠 綾子
 かねがね、篠綾子さんに書いてもらいたいジャンルがあった。堅苦しくいえば教育問題、平たくいえば、寺子屋の師匠と子どもたちの物語である。カバーの著者略歴にもあるとおり、篠さんは東京学芸大学のご出身である。現在は教育学部の中に学校教育系と教育支援系課程を置いて、教職だけでなく各界に有用な人材を送り出しているが、そもそも同大
採れたて本!【国内ミステリ】
 例えば芦沢央の『許されようとは思いません』や『汚れた手をそこで拭かない』、阿津川辰海の『透明人間は密室に潜む』、曽根圭介の『腸詰小僧 曽根圭介短編集』、矢樹純の『夫の骨』や『妻は忘れない』等々、ミステリ界ではここ数年、高水準なノン・シリーズ短篇集が幾つも上梓されている。中でも、どんでん返しの冴えという点で白眉なのが結
週末は書店へ行こう! 目利き書店員のブックガイド 今回の目利きさん 吉見書店 竜南店 柳下博幸さん
「終活」それは、人生の終わりを迎えるための活動である。自らが死を意識して、その最期をどう迎えるか。様々な準備やそこに向けたそれぞれの人生の総括を意味する。死を意識するのが数十年先の人もいれば、残り数日の人もいる。人間の数だけ違うそれぞれの人生を顧みる大事な期間。今はまだそのときが訪れていないあなたも、本作を読んでその瞬