作家のおすすめどんでん返し

 フェアか、後出しか、それが問題だ。いや、問題じゃないかもしれないけど。何の話かと言えば、どんでん返しの仕掛けの話だ。フェアつまり公正などんでん返しとは、きっちり伏線が張られており、種明かしされたときに「なるほど!」と膝を打てるようなどんでん返し。後出しは、その逆で伏線なしの意外な展開で驚かせるどんでん返し。
「どんでん返し」に欠かせないものといえば、やはりフィニッシング・ストローク――最後の一行で物語をひっくり返すのが一番の妙味でしょう。おすすめ作品を挙げるなら、テリー・ビッスンの「マックたち」(中村融訳)。文庫本で20ページ足らずの短編ですが、ラストの一行(正確には一語)できれいに落ちる。
『ロートレック荘事件』筒井康隆。「どんでん返し」をコンセプトにしたストーリーを考える際、もっとも大事なのは「派手にどんでん返すこと」ではなかったりします。派手に返すのは当たり前でして、返しただけでは「いまいち」以上の水準にならないからです。問題なのは「返したあとにどんな景色が広がるか」。
 どんでん返しの一定型に、ある男(女)が実は女(男)だったと最後に判明するパターンがある。こういう性別誤認のトリックを映画で上手くやっている作品と言えば、まず思い出されるのが『クライング・ゲーム』(1992)だ。それより少し後に公開された『薔薇の素顔』(1994)も(世評は芳しくないようだが)個人的には好きである。
 山田風太郎の小説は、デビュー作から多くをリアルタイムで読みつづけた。ミステリ作家だからドンデン返しの妙に唸らされたものも数多いが、読後しばし茫然としたドンデン返しなら「外道忍法帖」がある。シリーズ中では忍者の登場人数が最大級で.三つ巴の乱戦模様を呈する。
 ショートショートという短くて不思議な小説に特化したショートショート作家として活動している。ショートショートといえば、どんでん返し。そんなイメージもあるけれど、現代ショートショートとは「アイデアがあり、それを活かした印象的な結末のある物語」。
 どんでん返しといえば、やっぱりミステリー。しかも、腰を抜かすほど驚いたやつがいい。となれば、私の場合、まちがいなくこれ! 映画『プラスティック・ナイトメア/仮面の情事』。リチャード・ニーリーの原作は読んでいないけど、視覚的なトリックなので、映画で見たほうがいいと思います。
 どんでん返しのある作品を人に薦めるのは難しい。どんでん返しがあると知った時点で、トリックを警戒し、伏線や手掛かりを探してしまうからだ。優れた作品はそれと知っていても楽しめるものだが、不意打ちを食らうに越したことはない。その点、『バーニング 劇場版』にどんでん返しはない。
 失恋の痛手は、誰もが経験するものだろう。トーマス・H・クックの小説「夏草の記憶」は、白人少年ベン・ウェイドの、謎めいた少女ケリー・トロイへの熱烈な思慕と、その想いが潰えさる顛末を物語って、痛切な共感を呼び覚まさずにおかない。
 双葉文庫から『自薦 THE どんでん返し』という本が出ています。六人の作者が自ら選んだ作品集です。表題から明らかなように、作品選択の基準は《意外性》です。これが当たりました。次々と続刊が出、さらには書き下ろしの『新鮮 THE どんでん返し』まで刊行されているのですから、そういっていいでしょう。
 アニメが好きだ。小説も好きだがアニメも好きだ。衝撃を受けたどんでん返し小説は枚挙に暇がないが、屈指のアニメ好きとしては(毎季、週十五本近くを見ている)やはりアニメから選びたい。アニメでもどんでん返しが盛り込まれた作品は数多くあるが、今回全力で推したいのは、こちら。『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』
 パスカル・ロジェという監督は変態だと思う。たぶん今の所、最高傑作は2007年の映画『マーターズ』にちがいない。『マーターズ』にもどんでん返し風味の展開はあったが、今回は映画『トールマン』を推薦したい。『マーターズ』は傑作だけど、『トールマン』の方が大どんでん返しの一点突破感があるからだ。
どんでん返しのオススメ……というとそれ自体ややネタバレになってしまうのが心苦しいところですが、自分の中では(いわゆるミステリでいう「叙述トリック」的なひっくり返しだけではなく)、単純に「ストーリーが意外な方向に進む」というのも広義のどんでん返しだと思っていますので、今回はそのタイプを中心に紹介していきたいと思います。
 実話怪談が好きで、YouTube やサブスクリプションでよく見ている。お気に入りの怪談師も何人かいて、そのうちの一人が村上ロック氏だ。新宿歌舞伎町の怪談バー「スリラーナイト」の専属怪談師であるロック氏はメディア出演も多いが、最近、エンタメ〜テレの『怪談のシーハナ聞かせてよ。』で披露された短い話にゾッとさせられた。