書店員コラム

「〇〇な時に読む本」というお題で、書店員の皆様に「推し本」を紹介していただきます。

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目利き書店員のブックガイド 今週の担当 未来屋書店石巻店 恵比志奈緒さん
 何もかもが心を迂回していくようだった。言葉はすべて本心を避けて通った。 なけなしの社会性はとうに擦り切れ、もう何の気力も残っていないというのに、立ち止まる術が無い。 夕暮れが懲りもせず私を急き立てる。靴の埃を払う事さえ出来ないような日々に、幾度となく自分を恥じた。やがて冬が訪れても、豪雪ののち翳りの中にいつまでも溶け
目利き書店員のブックガイド 今週の担当 ときわ書房志津ステーションビル店 日野剛広さん
 竹田ダニエル。その存在を知ったのは Twitter だった。そこで披露されている論考のクールさと熱さの融和が絶妙で、今私が最も注目し、信頼する書き手の1人だ。著者はいわゆる「Z世代」に身を置く人物として、アメリカの音楽を中心とした文化を題材に、研ぎ澄まされた思考や生き方の提示を世界へ向けて発信し続けている。Z世代とは
目利き書店員のブックガイド 今週の担当 広島 蔦屋書店 江藤宏樹さん
 本を読む意味ってなんだろうと考えることがあります。娯楽のため、必要な知識を得るため、仕事に役立てるため、などなどいろいろありますが、私が特に大事だと思っているのは「本を読むことで、私ではない他の人のことを知り、理解しようとすること」ではないかと思っています。私は、私以外の他の人が何を考えているのかわかりません。その人
目利き書店員のブックガイド 今週の担当 文信堂書店長岡店 實山美穂さん
 小説を読むとき、大事にしているポイントはありますか? 泣けること。新たな知識を身につけられること。現実にはできない体験をすること。思いつくだけでも、いろいろありますね。私は文章から色や音、風、匂いなど、五感を刺激されるものが好きです。だからSFや歴史ものが苦手なのかもしれません…。さて今回は、そんな作品から一冊を紹介
目利き書店員のブックガイド 今週の担当 大盛堂書店 山本亮さん
 ちょっとしたタイミングで運命的に出会ってしまった人の存在、普段意識をしていなくても、もしかしたら誰でも心当たりがあるのではないだろうか。恋愛や友情を通じて掛け替えのない人、もしくは自分にとって都合の良い人、羅針盤のようにこれからの生き方を示してくれる人。色々いるだろうけど、その人が自分の大切な心の中へ踏み込んできたと
週末は書店へ行こう! 目利き書店員のブックガイド 今回の目利きさん うさぎや 矢板店 山田恵理子さん
 ユーミンは50周年なのだ。気づいたら当たり前のように暮らしの中にはユーミンの曲が流れていた。昭和も、平成も、令和も。街中でも、スキー場でも、ビーチでも。懐かしくも新しく、時や空間を超えて輝き続けている。近年でユーミンの人柄に魅了されたのは、2021年紅白のステージだった。一瞬にして会場の空気をつかむ笑顔のトークと天性
週末は書店へ行こう! 目利き書店員のブックガイド 今回の目利きさん うなぎBOOKS 本間悠さん
 8人の書店員が週替わりでその時々のおススメの本を三冊紹介する『週末は書店へ行こう!』。「他の書店員さんが紹介する本と被らない」「メインで紹介するのは新刊」という制約があったため、私が書きたかったものを既に他の書店員さんが紹介したり、その時々で何を紹介しようか悩んだりするかもと思ったが、不思議と被ることも悩むことも無く
週末は書店へ行こう! 目利き書店員のブックガイド 今回の目利きさん 成田本店 みなと高台店 櫻井美怜さん
 10月のある日、そろそろ眠ろうかと寝室の明かりを消すと、外のあまりの明るさに驚いて飛び起きたことがあった。外から懐中電灯で照らされているかのような丸い光がカーテンの隙間から届いていたのだ。すわ、泥棒か!? とおそるおそる外を覗くと、そこには信じられない明るさの月が佇んでいた。私が見たのは、アメリカの先住民が動物の狩猟
週末は書店へ行こう! 目利き書店員のブックガイド 今回の目利きさん TSUTAYA 中万々店 山中由貴さん
 姉が行方不明になった。それから一年経って、姉の不在はあたりまえになった。姉宛てに届く年賀状、それを伝える口実で姉のスマホに送るメッセージ。ずっと既読はつかない。それでも送りつづけ、いつか電源が入る瞬間を待つ家族。その、淡々としていながらどこかが裂けて空気の漏れつづける日常が、淡々としているからこそなまなましい。あれ、
週末は書店へ行こう! 目利き書店員のブックガイド 今回の目利きさん 啓文社 西条店 三島政幸さん
 クイズプレイヤーの三島玲央は、第一回『Q-1グランプリ』のファイナリストとして、スタジオの解答席に立っていた。優勝賞金は破格の一千万円。決勝は一対一で七問先取の早押しクイズ、対戦相手は圧倒的な記憶力で頭角を現してきた本庄絆だ。決勝戦でもお互いに一進一退の攻防を続けていた。スコアは本庄が追い付いて6-6のイーブン。次が
週末は書店へ行こう! 目利き書店員のブックガイド 今回の目利きさん うさぎや 矢板店 山田恵理子さん
 この時代、この国に生まれた私達には、当たり前のように文字を教わる学校があり、教室がある。同じ時代を生きていても、地球儀をくるりと回すと、自由に学ぶ機会のない子ども達がいったいどれくらいいるのだろうか? 国際労働機関ILOが4年に一度発表している2021年の児童労働データによると、世界の児童労働者(5〜17歳)数は1億
週末は書店へ行こう! 目利き書店員のブックガイド 今回の目利きさん うなぎBOOKS 本間悠さん
 高校生の頃から、摂食障害を患っていた。食べ物を美味しいと思う正常な味覚は持ち合わせていると信じたいが、一定量を超えた「それ」は私にとって吐くために詰め込んでいる物質で、美味しいとか美味しくないとか心を込めて作られているとかいないとか、そんなことは二の次だった。食べることは嫌いではない。嫌いではないが、食べている自分は
週末は書店へ行こう! 目利き書店員のブックガイド 今回の目利きさん 成田本店 みなと高台店 櫻井美怜さん
 音は光よりも遅い。頭ではわかっていても、花火が打ち上げられたドーンという音が背後から聞こえると、振り返らずにはいられない。そこにはもう、火花の気配すらないというのに。出版社で働く橘は、美麗なグラフィックの世界観の中でモンスター討伐をする“リンドグランド”というアプリゲームにはまっている。昼は社会人としてきちんと働き、
週末は書店へ行こう! 目利き書店員のブックガイド 今回の目利きさん TSUTAYA 中万々店 山中由貴さん
 もうなにも読まなくていい。すべてが霞む。しばらくはそっとしておいて。本書を閉じたあとの率直な気持ちは、ただ、そうとしか言いあらわせない。「あたしは無法者のダッチェス・デイ・ラドリー」。彼女の震える声がきこえる。怖気づいて、さびしくて、不安で、怒って──、それでも守るものがあるから、13歳のダッチェスは逃げない。30年
週末は書店へ行こう! 目利き書店員のブックガイド 今回の目利きさん 啓文社 西条店 三島政幸さん
「科学は嘘をつかない。嘘をつくのは、いつだって人間です」警察に協力する民間の鑑定人、土門誠の台詞だ(「遺された痕」より)。ややぶっきらぼうに見えるが、科学捜査には真摯に取り組む。自らの鑑定結果には絶対的な自信を持ち、裁判での証言も積極的に行う。土門にとって、事件の内容や真相は二の次で、科学鑑定の結果が絶対なのだ。科学第
週末は書店へ行こう! 目利き書店員のブックガイド 今回の目利きさん うさぎや 矢板店 山田恵理子さん
 ウクライナの4歳の女の子が空爆で命を落としたと自宅でつけているテレビのニュースから流れてきた。亡くなる1時間前に母親と笑顔で歩いていた映像に涙が出てくる。幼い子どもの被害に耐えられない。もうやめてと世界中から願っても止められない。もっと現代には秩序があると思っていたが、幻想だった。『モノクロの夏に帰る』を執筆するにあ
週末は書店へ行こう! 目利き書店員のブックガイド 今回の目利きさん うなぎBOOKS 本間悠さん
 書店員をやっていると「一番好きな本(または作家)」を聞かれることがある。とても絞りきれないので、その手の質問には「選べません」と答えているが、その代わり、一番好きな映画なら即答できる。1973年に公開された、悪魔祓いを描いた作品『エクソシスト』だ。という流れで、芦花公園さんの最新刊『とらすの子』を紹介したい。物語は、
週末は書店へ行こう! 目利き書店員のブックガイド 今回の目利きさん 成田本店 みなと高台店 櫻井美怜さん
 あんな女いなければいいのに、と思ったことはないだろうか。私はある。一番仲がいいと思っていた友達が、自分以外の子と仲良くしているのを見た時。彼氏の携帯に元カノの連絡先が残っているのを知った時。自分が大切にしている人や場所が奪われそうになった時、私の中に潜んでいたどろりとした感情が鎌首をもたげてくる。今村夏子の最新作には