書店員コラム

「〇〇な時に読む本」というお題で、書店員の皆様に「推し本」を紹介していただきます。

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週末は書店へ行こう! 目利き書店員のブックガイド 今回の目利きさん うさぎや 矢板店 山田恵理子さん
 この時代、この国に生まれた私達には、当たり前のように文字を教わる学校があり、教室がある。同じ時代を生きていても、地球儀をくるりと回すと、自由に学ぶ機会のない子ども達がいったいどれくらいいるのだろうか? 国際労働機関ILOが4年に一度発表している2021年の児童労働データによると、世界の児童労働者(5〜17歳)数は1億
週末は書店へ行こう! 目利き書店員のブックガイド 今回の目利きさん うなぎBOOKS 本間悠さん
高校生の頃から、摂食障害を患っていた。食べ物を美味しいと思う正常な味覚は持ち合わせていると信じたいが、一定量を超えた「それ」は私にとって吐くために詰め込んでいる物質で、美味しいとか美味しくないとか心を込めて作られているとかいないとか、そんなことは二の次だった。食べることは嫌いではない。嫌いではないが、食べている自分は間違いなく
週末は書店へ行こう! 目利き書店員のブックガイド 今回の目利きさん 成田本店 みなと高台店 櫻井美怜さん
 音は光よりも遅い。頭ではわかっていても、花火が打ち上げられたドーンという音が背後から聞こえると、振り返らずにはいられない。そこにはもう、火花の気配すらないというのに。出版社で働く橘は、美麗なグラフィックの世界観の中でモンスター討伐をする“リンドグランド”というアプリゲームにはまっている。昼は社会人としてきちんと働き、
週末は書店へ行こう! 目利き書店員のブックガイド 今回の目利きさん TSUTAYA 中万々店 山中由貴さん
 もうなにも読まなくていい。すべてが霞む。しばらくはそっとしておいて。本書を閉じたあとの率直な気持ちは、ただ、そうとしか言いあらわせない。「あたしは無法者のダッチェス・デイ・ラドリー」。彼女の震える声がきこえる。怖気づいて、さびしくて、不安で、怒って──、それでも守るものがあるから、13歳のダッチェスは逃げない。30年
週末は書店へ行こう! 目利き書店員のブックガイド 今回の目利きさん 啓文社 西条店 三島政幸さん
「科学は嘘をつかない。嘘をつくのは、いつだって人間です」警察に協力する民間の鑑定人、土門誠の台詞だ(「遺された痕」より)。ややぶっきらぼうに見えるが、科学捜査には真摯に取り組む。自らの鑑定結果には絶対的な自信を持ち、裁判での証言も積極的に行う。土門にとって、事件の内容や真相は二の次で、科学鑑定の結果が絶対なのだ。科学第
週末は書店へ行こう! 目利き書店員のブックガイド 今回の目利きさん うさぎや 矢板店 山田恵理子さん
 ウクライナの4歳の女の子が空爆で命を落としたと自宅でつけているテレビのニュースから流れてきた。亡くなる1時間前に母親と笑顔で歩いていた映像に涙が出てくる。幼い子どもの被害に耐えられない。もうやめてと世界中から願っても止められない。もっと現代には秩序があると思っていたが、幻想だった。『モノクロの夏に帰る』を執筆するにあ
週末は書店へ行こう! 目利き書店員のブックガイド 今回の目利きさん うなぎBOOKS 本間悠さん
 書店員をやっていると「一番好きな本(または作家)」を聞かれることがある。とても絞りきれないので、その手の質問には「選べません」と答えているが、その代わり、一番好きな映画なら即答できる。1973年に公開された、悪魔祓いを描いた作品『エクソシスト』だ。という流れで、芦花公園さんの最新刊『とらすの子』を紹介したい。物語は、
週末は書店へ行こう! 目利き書店員のブックガイド 今回の目利きさん 成田本店 みなと高台店 櫻井美怜さん
 あんな女いなければいいのに、と思ったことはないだろうか。私はある。一番仲がいいと思っていた友達が、自分以外の子と仲良くしているのを見た時。彼氏の携帯に元カノの連絡先が残っているのを知った時。自分が大切にしている人や場所が奪われそうになった時、私の中に潜んでいたどろりとした感情が鎌首をもたげてくる。今村夏子の最新作には
週末は書店へ行こう! 目利き書店員のブックガイド 今回の目利きさん TSUTAYA 中万々店 山中由貴さん
 並んでいる本に目がいって、なんだこれ!と思わず声をあげてしまうことがある。本の厚さやデザイン、表紙や帯が異彩を放っているもの。人によって釣られるポイントはちがっても、なんだこれ!と一度立ち止まったらその本のことが気になって気になって、つい買ってしまっていた…なんていう経験、本好きなら日常茶飯事ではないだろうか。わたし
週末は書店へ行こう! 目利き書店員のブックガイド 今回の目利きさん 啓文社 西条店 三島政幸さん
 ミステリ小説では事件の顛末が描かれるのが普通だが、その場合の最大の焦点(読みどころ)はなんだろうか? もちろん、「この事件の犯人は誰なのか?」であろう。犯人は誰なのか? の謎は、俗に「フーダニット」と呼ばれている。ミステリによっては、犯人の意外性よりも「動機」の特殊性に主眼を置いた作品も多く存在する。それらは「ホワイ
週末は書店へ行こう! 目利き書店員のブックガイド 今回の目利きさん 三省堂書店 成城店 大塚真祐子さん
 手話通訳士を主人公に、ろう者と手話をめぐる現実を描いた『デフ・ヴォイス』シリーズ、居住の実態が把握できない「居所不明児童」の問題から、親とは、家族とは何かを問う『漂う子』、在宅介護、特別養子縁組制度、障害者差別など、人間の尊厳に関わる題材に正面から切り込み、四つの物語を鮮やかに交差させた『ワンダフル・ライフ』と、目ま
週末は書店へ行こう! 目利き書店員のブックガイド 今回の目利きさん うさぎや 矢板店 山田恵理子さん
 11の文学賞を受賞し話題となり、文庫化されてなお売れ続けている『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』は、中学に入学したブレイディみかこさんの11歳の息子さんの視点が新鮮で、人種差別・貧困・ジェンダーなどが、ともに悩み考える親子の生の声から伝わってくるノンフィクション作品だ。そして今作ではノンフィクションという
週末は書店へ行こう! 目利き書店員のブックガイド 今回の目利きさん うなぎBOOKS 本間悠さん
 以前、とある営業をしていた。まだ若く、私は溌溂として、そういうところが「明るい」「感じが良い」とされ、取引先との関係も良好だった(と信じたい)。「今度プライベートで飲みに行こう」と腰に手を回されれば、「何言ってるんですかー!」と声を張り上げて、笑顔を返した。明るく、感じが良く、取引先との関係も良好な私は、こんな風に振
週末は書店へ行こう! 目利き書店員のブックガイド 今回の目利きさん 成田本店 みなと高台店 櫻井美怜さん
 捨てられないものがたくさんある。昔の写真。旅先で買ったポストカード。ちょっと綺麗な包装紙。段ボールひと箱分のそれらは、いつでも捨てられそうなものばかりなのに、見えない糸で繋がれているかのように、何度引っ越しを重ねても私にずるずるとついてくる。だが、それよりも捨てにくいのは目に見えないものだ。親子の縁を、兄弟の絆を、家
週末は書店へ行こう! 目利き書店員のブックガイド 今回の目利きさん TSUTAYA 中万々店 山中由貴さん
 いま、わたしたちは戦争を目の当たりにしている。もちろん紛争や内戦はこれまでも常にどこかで起こり、犠牲者は絶えない。だけど、崩れて住むことのできなくなった誰かの家や、公園や、遺体が無造作に転がる道路や、そこで戸惑い、打ちひしがれる人々の声や表情が、こんなにも膨大な情報量で報道されると、あらためて戦争はいま、すぐそこにあ
週末は書店へ行こう! 目利き書店員のブックガイド 今回の目利きさん 啓文社 西条店 三島政幸さん
 全寮制の男子高・霧森学院。生徒の大半は新寮にいるが、旧寮「あすなろ館」の住人は6人だけ。入寮希望者がいないのは、施設がボロだからというのもあるが、昨年、「ある事件」が発生したため敬遠されるようになったから、というのが大きい。その「あすなろ館」に新たな転入生・鷹宮絵愛(エチカ)が入寮してきた。以前からの住人、兎川雛太
週末は書店へ行こう! 目利き書店員のブックガイド 今回の目利きさん 三省堂書店 成城店 大塚真祐子さん
 自分はどのような死に方をするのだろう、とときおり考える。「わたしもいつか死ぬ」と気づいたときのことを覚えている。小学2年の夏、TVドラマで子どもの闘病シーンを観たとき、「あの子は自分かもしれない」ととつぜん思った。あれからずっと「死ぬ」ということがわかるようで、わからない。熊本で「橙書店」と併設の喫茶店「オレンジ」を
週末は書店へ行こう! 目利き書店員のブックガイド 今回の目利きさん うさぎや 矢板店 山田恵理子さん
空港は特別な場所である。仕事、旅行、家族や友人に会いに、見送りに、飛行機マニアとして、さまざまな理由で訪れ、空を見上げながら人生の1ページが刻まれていく。著者の《空港》への愛が込められた本作のタイトル『風の港』の3文字からは、たくさんの人々が行き交うターミナルの賑わいと、華やかな雑踏に、笑顔や涙がドラマチックに浮かび上