読みもの

◇長編小説◇里見 蘭「漂白」連載第10回
「漂白」目次      3  初回接見が時間との戦いとなるのは、弁護士の到着が遅れる間に違法な取調べが行われ、それによって自白調書が取られてしまうおそれがあるからだ。  報道に
滞米こじらせ日記~愛しきダメな隣人たち~--02
 第2話 星に願いを  首都ワシントンに住んでいたときの友人のジュリアとは、ナショナル・プレス・ビルディングのオフィスが隣同士だったことから知り合った。彼女は、名門ジョージタウン大学でアラビア語を
◇長編小説◇里見 蘭「漂白」連載第9回
「漂白」目次  画面が切り替わって、ヘリコプターからの空撮映像になった。荒川とおぼしき河川敷の上空。青い制服に帽子をかぶった警視庁の鑑識課員たちが、一部をブルーシートで覆い、さらに周辺をロープで囲っ
◇長編小説◇里見 蘭「漂白」連載第8回
「漂白」目次  犯罪心理学者は、フリップボードを新しいものと入れ替えた。 『まず、FBIが性的殺人犯の分類に用いる、「秩序型」、「無秩序型」というモデルを適用すると、この犯人は秩序型
◇長編小説◇里見 蘭「漂白」連載第7回
「漂白」目次      2 「志鶴、あなたまたそれだけ? せめておかずくらい食べたら?」  冷蔵庫から出した牛乳をグラスに注いでテーブルに座った志鶴に、母親が声をかけた。
滞米こじらせ日記~愛しきダメな隣人たち~
 それでも、スジョンが夫の元から去らなかったのは、スジョンにはほかに行くところがなかったからだ。息子を連れてソウルの小さな貧しい実家に戻っても、行く末は楽観できないし、それなら、アメリカにいたほうが
◇長編小説◇里見 蘭「漂白」連載第6回
   第一章──自白      1 「どうした。全然食べてないじゃん」  三浦俊也(みうらしゅんや)が言った。  職場近くのワインバル。夕食を誘われ、仕事に区切
滞米こじらせ日記~愛しきダメな隣人たち~
 時々、ポールは、大学時代に付き合っていたスーザンみたいな女性と結婚していたら、と思うことがある。子供を四人作って、わいわいとにぎやかな一家団欒(だんらん)のある、明るく開放的で楽しいアメリカン・ホ
思い出の味 ◈ 友井 羊
 デビュー前に激務の会社で働いていた。終電で帰路につき、自宅最寄り駅に到着したときは大抵深夜一時を過ぎていた。  寒い冬の時期、ふらふらとした状態で家の近くにある某牛丼チェーンに立ち寄った。二十四時間
◇長編小説◇里見 蘭「漂白」連載第5回
「漂白」目次 「……私は、栗原学さんを殺すつもりなんて、ありませんでした。あのときは、ただ、自分の身を守ろうと無我夢中で……」  嗚咽(おえつ)で、彼女の言葉は途切れた。 「すみません……私からは、
滞米こじらせ日記~愛しきダメな隣人たち~
 たとえことばがうまく操れなくても、おしゃべり好きなラテンの人たちは、ブロークン・イングリッシュでにぎやかにしゃべりまくるのだけれど、スジョンは、何をどう話したらいいのか、会話のつむぎ方の見当もつか
◇長編小説◇里見 蘭「漂白」連載第4回
「漂白」目次  志鶴は、司法解剖を担当した医師による鑑定書を書画カメラで提示した。 「検察側は、栗原氏の死因を、腹部の傷口からの出血による、出血性ショックとしています。救急手術を担当した医師による死
本の妖精 夫久山徳三郎 Book.51
                                〈「きらら」2018年10月号掲載〉
滞米こじらせ日記~愛しきダメな隣人たち~
 まさかこんなことになろうとは夢にも思っていなかったポールは動揺したけれど、ことばも通じない外国に来たばかりで、傍らには自分の両親もいる。両親は、周りで起こっている騒動に戸惑っている。当惑した両親と
◇長編小説◇里見 蘭「漂白」連載第3回
「漂白」目次  志鶴は、検察側が証拠として請求した、栗原学の死体の損傷状況をイラストにした書面を書画カメラで提示した。 「栗原氏の体には、腹部の傷の他、もう一つ、爪やすりによる傷があ
◇長編小説◇里見 蘭「漂白」連載第2回
「漂白」目次  ──呑(の)まれるな。  胸の中で、ひるみそうな自分を叱咤(しった)し、もはやこの世にはいない相手に声をかける。  ──やるよ。見てて、尊(たける)。
滞米こじらせ日記~愛しきダメな隣人たち~--01
 第1話 25年目の離婚  知り合いの一人に、ポールという名前のイタリア系アメリカ人がいて、ポールは、気分が冴(さ)えないときとか、車が渋滞に巻き込まれたときとか、出張中、手すきになったときとかに
◇長編小説◇里見 蘭「漂白」連載第1回
「漂白」目次    序章──予震  「弁護人、最終弁論をどうぞ」  静まりかえった法廷に裁判長の声が響く。 「はい」  答えた川村志鶴(かわむらしづる)は、弁