作家を作った言葉

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作家を作った言葉〔第5回〕李 琴峰
 文学を志し始めた十代、様々な作家を読み漁った。中でも張愛玲に惹かれた。正直、彼女の小説は当時の自分には難しかったが、いくつかの名言が印象に残った。「有名になるのは早いに越したことはない」。中国語圏を代表する女性作家もそう言っているのだ。その言葉は十代の自分に深く刺さった。実際、張愛玲はかなり早くから文名を揚げた。十八
作家を作った言葉〔第4回〕宮内悠介
 商業ベースに乗っていようがいまいが、作家は作家だしそうでない者は違う。少なくともぼくはそう考えてきた。また、こうも思う。「言葉一つに左右されちゃうのは、それは作家なの?」と。が、当然のことながら、人間はこんなふうに一貫できないし、確信は明日の迷いとなる。流れていた音楽は気づけば消える。ぼくの場合は、十年にわたって新人
作家を作った言葉〔第3回〕綿矢りさ
 世間とか常識とか醜聞への恐怖が見えない壁となって行く手を阻んでいると、いかん、自分の殻を破らねばと焦るけれど、なかなか勇気が出ない。普段ガチガチに〝わきまえた人〟を装っていると、ポロッとわきまえてない本性が周りにバレたときギャップが大きい。人間らしさを周囲に見せていれば世の中の人もそれほどギャップに驚かなくても済んだ
作家を作った言葉〔第2回〕道尾秀介
 小学校時代、同じクラスだったT君が放課後にカメレオンの話をした。「飼ってるから見に来てよ」ランドセルを背負ったままT君の家に向かいつつ、僕は気が重たかった。それまでも彼は、狂犬病の犬がよだれを垂らして走っているのを見たと言ったり、ツチノコを捕まえたと自慢したり、自転車の前輪と後輪が同時にパンクして死にかけたと話したり
作家を作った言葉〔第1回〕佐藤 究
 私の場合、純文学でデビューしたのち、まったく売れない時期が十年以上つづいた。その大半は売れないどころか、原稿依頼すらなかった。そういう状況で何ができるのかといえば、誰にも頼まれていない小説を書くしかない。生活費を稼ぎながら、できそこないの長編を書き、できそこないの短編を書く。プロとは名ばかりの自称作家だ。