文学的「今日は何の日?」【11/9~11/15】
あの名作が世に出た日。
憧れのヒロインの誕生日。
かの大作家の失恋記念日。
……そう、毎日が何かの記念日です。さて、今日は何の日でしょうか。
11月9日から始まる1週間を見てみましょう。
11月9日
ドリアン・グレイ、画家バジルに肖像画の秘密を明かす――『ドリアン・グレイの肖像』
オスカー・ワイルドの耽美主義が存分に発揮された傑作『ドリアン・グレイの肖像』。美しい容姿と純粋な心を持った青年ドリアン・グレイは、友人の画家バジルの絵のモデルを務めていました。バジルが完成させた自身の肖像画を前に、思わず「いつまでも若さを失わずにいるのがぼく自身で、老いこんでいくのがこの絵だったなら!」と呟きます。そして、それは現実となりました。肖像画のようにいつまでも若く美しいドリアンは、次第に享楽的な生き方をするようになり、一方で彼の堕落を映すように肖像画は醜悪になっていきました。ドリアンの38回目の誕生日の前日である11月9日深夜、バジルがドリアンを訪ねてきました。ドリアンをめぐる悪い噂の真偽を糺しにきたのです。バジルに責められ、激昂したドリアンは、醜悪に変化した自身の肖像画を見せつけ……。
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11月10日
さいたま市内で自転車と自動車の衝突事故が発生――中山七里『ヒポクラテスの誓い』
浦和医大法医学教室を舞台に、研修医・
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11月11日
レマルク『凱旋門』において第一次世界大戦休戦の20周年祝賀行事が行われる
りんごから作られる蒸留酒「カルヴァドス」を世界的に有名にしたのが、ドイツの作家エーリヒ・マリア・レマルクの『凱旋門』です。パリでもぐりの外科医をしているドイツ人ラヴィックは、ある晩、今にも倒れそうなジョアンを助けました。ラヴィックは彼女を酒場に連れて行き、カルヴァドスを飲ませます。強い酒が体を温め、心を落ち着かせるのでした。ジョアンが恋人の突然死に取り乱して部屋を飛び出していたことを知り、ラヴィックはその部屋に出向いて死亡証明書や遺体の片付けを手配します。エトワール広場で第一次世界大戦休戦20周年の祝賀行事が行われた1938年11月11日のことでした。第二次世界大戦前夜のパリを舞台に、狂おしく燃え上がる愛を描く『凱旋門』。カルヴァドスをお供に読んでみてはいかがでしょうか。
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文学的「今日は何の日?」【1/27~2/2】
11月12日
主人公・弓子が論説委員を務める『新日報』の創刊記念日――丸谷才一『女ざかり』
モダニズム文学の影響を強く受け、イギリス風の風俗性とユーモア、知的な味わいを重視した作家・丸谷才一。1993年発表の長編小説『女ざかり』において、明治39年11月12日、今では六大新聞のひとつに数えられる『新日報』が創刊されました。南弓子は46歳の若さで、この『新日報』で論説委員に抜擢されます。しかし、妊娠中絶をめぐる元首相の発言に触れた彼女のコラムが問題となり、政府からの圧力で論説委員を外されそうに……。長年の恋人である大学教授、大学院生の娘、元女優の伯母、弓子に岡惚れの同僚、かつて取材した銀座の親分など、持てる人脈のすべてを駆使して、弓子の反撃が始まります。
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11月13日
映画『地獄の黙示録』の原案、ジョセフ・コンラッドの傑作『闇の奥』が刊行される
1979年のカンヌ国際映画祭のパルム・ドール受賞作『地獄の黙示録』(フランシス・F・コッポラ)の原案となったのが、ジョセフ・コンラッドの小説『闇の奥』です。1902年11月13日、「青春」、「万策尽きて」と併せて『青春――ほか2篇』としてイギリスで刊行されました。コンラッドはポーランド出身。16歳でフランスに渡り船員となりますが、20歳のときにイギリス船の船員になったのを機に英語を覚え、イギリス国籍を取得後、英語で著作活動を行うようになりました。『ロード・ジム』、『ナーシサス号の黒人』などの海洋小説が有名です。T.S.エリオットから村上春樹まで、近現代の作家に多大な影響を与えた作家です。
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11月14日
ロンドン警視庁のアーチャー警視、親衛隊情報部の補佐を命じられる――レン・デイトン『SS-GB』
タイトルの『SS-GB』は「駐英親衛隊」の意味。第二次世界大戦で敗れてドイツに支配され、ウィンストン・チャーチルは銃殺刑、国王ジョージ6世はロンドン塔に幽閉されているイギリスを描く歴史改変小説です。管内で起きた殺人事件を捜査していたロンドン警視庁の警視ダグラス・アーチャーは、1941年11月14日、警察庁長官のフリッツ・ケラーマン将軍から親衛隊情報部の責任者がこの事件の調査にやって来ることを聞かされ、その補佐を命じられました。軍用品の横流しをめぐる、ありきたりな殺人事件と考えていたアーチャーは、わざわざベルリンから捜査に来ることに驚きます。いったい事件の裏に何があるのでしょうか? 殺された男の正体とは?
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11月15日
怪人二十面相が美術収集家・日下部左門に犯行を予告
名探偵・明智小五郎と、助手・小林少年のコンビが怪盗を追い詰める「怪人二十面相」シリーズ。子供時代には同じ年ごろの小林少年の活躍に胸をわくわくさせながら読んだ人も多いでしょう。羽柴壮太郎所有のロマノフ家ゆかりのダイヤモンドと観世音像をめぐって小林少年と死闘を演じ、まんまと逃げおおせた二十面相が、次に狙ったのは伊豆の美術収集家・日下部左門所蔵の絵画でした。「来る十一月十五日、必ず参上致します」との手紙を受け取った日下部は色を失いますが、一昨日の『伊豆日報』に名探偵・明智小五郎が修善寺の富士屋旅館に投宿、4~5日滞在の予定と出ていたことを思い出します。はたして明智は二十面相の企みをくじくことができるのでしょうか?
出典:https://www.shogakukan.co.jp/digital/09D036570000d0000000
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初出:P+D MAGAZINE(2020/11/09)