新刊エッセイ

hodonaku_2
悲しみの場所で強く生きる  私は霊感があるわけでも〝気〟に敏感なわけでもない。しかし〝悲しみの気配〟というものを確かに感じたことがある。  大学生の頃、私は葬儀場でアルバイトをしていた。告別式では、
nanadowaraeba
 普通のジジイ  第一回日本おいしい小説大賞受賞作『七度笑えば、恋の味』を出版するにあたり、初めに上がった議題が「七十二歳と二十八歳の間に恋は生まれるのか」だった。小学館での初めての打ち合わせで、担
LossNekoNikki
いない猫の代わりに  我が家から猫がいなくなって十六年、未だに「死んだ猫の年を数え」て暮らしているようなところがある。猫は十九歳で死んだので、生きていれば現在三十五歳だ。三十五歳といえば立派な大人で
sangaku
捨てる神あれば拾う神あり  こういう場所で死ぬのも悪くないな──。抜けるような青空と降り注ぐ陽光。頭上にそびえるハイマツと残雪のコントラストが美しい稜線。そんな風景のなかで、とくに切実なものもなく、
shinkan_mattaku
「あの頃」に捧ぐ  私は旅が好きで、以前はよく、ふらりと旅に出ていた。仕事はシフト勤務のサービス業だったので、客の少ない平日なら三連休の希望を出せた。午前勤務、休み、休み、休み、午後勤務、という形が
GAP_colum
東海道線の天使  選者である相場英雄さんが選評に「編集者と行う厳しく辛い研磨の作業」としての改稿があると書いてらっしゃったし、編集の幾野克哉さんも募集時に「私が編集します」と改稿する気満々のコメント
kazama_colum
まるで中学生のノリ  山形県山形市。わたしが生まれ育ったところだ。大学時代の四年間を茨城県つくば市で過ごしたほかは、ずっとこの土地で暮らしている。 『教場』シリーズを書いているおかげで、何人かの警察
analogdiary
私はきちんとそこにいた  忙しいと言う大人にはなるまいと決めていたのに、三十代の半ばすぎから、忙しいと言うことも思いつかないほど忙しくなってしまった。もっとも忙しかった時期、一か月に締め切りは小説と
tasukimeshi_hakone
物語が現実を追いかける──箱根駅伝予選会を終えて  今しがた、箱根駅伝の予選会が終わった。興奮冷めやらぬ中、このエッセイを書いている。  4年前の2015年秋。作家デビューしてまだ5ヶ月という頃に、
threesome
 わかり合えない最強の三人組  悪党を追い詰める「賞金稼ぎ」という職業は世離れしたものであると同時に、これほど幅広い世代に認知されているものもないと思っている。昔から西部劇の多くは賞金稼ぎがテーマで
taiyo
どんなに痛めつけられても、生きるしかない。 「太陽は、いつもひとりぼっちだ」  この台詞は、小さい頃から耳にしていた。 「えーっ、ひとりで行くのいやだなあ」「ひとりだったら、どうしよう?」  そんな
tiba_satsujin
バーチーのダーマー  本作の、書き始める前の仮題は『それは誰のせい』だった。 同じ事件でも、同じ事実でも、同じ人物でも、照らす角度で見方がまったく変わる。 私自身、この物語がサスペンスなのかミステリ
kimihadareka_
同じ景色を、違う目で(または聞けなかった声に寄せて)  子供の頃、親戚に連れられミュージカル「エリザベート」を見に行った。有名な作品なので詳細は割愛するが、タイトルロールであるオーストリア皇后の前に
soraha_nigenai
置いてきたものと持ってきたもの  私は未だに空を飛ぶ夢を見ます。うまく飛べることもあれば、今にも落っこちそうで苦しいときもあります。しかしいずれにも日常生活では得られない浮遊感があって、夢ながらお得
inochi_bana
彼女にフラれて気づいた友情の素晴らしさ!  はじめまして。安倍雄太郎と申します。名前だけでも憶えて頂ければ幸いです。  本作「いのち短し、踊れよ男子」は、若者男子の友情をテーマに、日本舞踊の世界を描
totyugesha_b
北の大地で、常に人々と共にあった駅  かつて北海道には、多くの鉄道路線が走っていた。オホーツクの海辺を行く路線、牧場と原野の中をひたすら走る路線、本線から炭鉱町へ延びる短い路線など、様々な特徴と味わ
hinata_bana
気弱で冴えない中年男が見せた永倉新八イズム  歴史好きの知人と飲んでいて何となく新撰組の話になり、十代の頃からずっと永倉新八のファンだと私が言うと、その知人は「え?」と意外そうな顔をした後、「そうい
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 革命の機運が高まる18世紀末のストックホルムを舞台に、戦場帰りの荒くれ者と、結核患者のインテリ法律家という正反対な二人の男が捜査する殺人事件を描く、大型北欧歴史ミステリー『1793』(ニクラス・ナッ