連載小説

辛酸なめ子「電車のおじさん」第22回
 会社で「祖父活」疑惑をかけられた玉恵。パパ活よりもさらにディープな語感です。社内でどのくらい広まっているのかわかりませんが、不思議と60代以上のおじさん社員が優しくなったような気がします。彼女は、結
◇長編小説◇里見 蘭「漂白」連載第117回
 さて。  後始末をしなくては。  殺人となると淫行とはわけが違ってくる。捕まって有罪にでもなればだいぶ不自由になるだろう。だが大丈夫。暴行や傷害以外にも、たんにスリルを味わうため、窃盗や器物損壊を幼
◇長編小説◇里見 蘭「漂白」連載第116回
「大丈夫」 「え。だって……」 「妊娠したら産んでいい」 「──え」萌愛の顔が固まった。信じられないという目で鴇田を凝視した。 「マジで言ってる。お前と母親と生まれた子の生活の面倒をみてやる。萌愛が十
(前編のあらすじ)深明寺坂で交通事故が起きた。運転手は焼き鳥の串を喉に刺し死亡。唯一の目撃者は小学生の良太で、事故直後、車の屋根越しに人影を見たという。良太の様子に不審を覚えた兄の福太と学太は、事故の
◇長編小説◇藤谷 治「ニコデモ 風は思いのままに吹く」連載第6回
 それを聞くとアンティヌッティの唇が、頰の上で大きく広がった。瞳がじっとニコデモを見た。まるで催眠術をかけようとしているみたいに。ニコデモは動じなかった。 「いいじゃない」アンティヌッティは言った。「
◇長編小説◇里見 蘭「漂白」連載第115回
      3  鴇田がLINEで会おうと連絡すると、既読がついてからいつもより長い時間が経(た)って萌愛から返答があった。 『いやです。お金くれないなら、もう会いません。友達にも相談しました。あんま
◇長編小説◇里見 蘭「漂白」連載第114回
「雇い主は俺だ。インスタブックだとセックスかサーフィンしかしてないみたいに見えるだろうが、俺はビジネスも持ってる」 「お母さんが、トキオさんの……?」うつむいて考える。強く首を振った。 「何でだ? お
◇長編小説◇藤谷 治「ニコデモ 風は思いのままに吹く」連載第5回
   ピリエ国での生活は修道僧の如(ごと)しで苦行を重ねておりますが、世間の風に曝(さら)されることもなく純粋なる学究の世界に埋没できるのは幸甚であります。また勉学に次ぐ勉学で息が詰まるということもな
◇長編小説◇里見 蘭「漂白」連載第113回
 鴇田は萌愛に、金を払うから会おうとメッセージを送った。彼女は応じた。同じ公園で待ち合わせ、荒川河川敷の同じ場所に車を停めた。萌愛はずっと固い表情で黙り込んでいたが、「先にお金ください」と言った。  
 2  天井のスピーカーから、午後五時を告げるチャイムが流れた。みひろは抱えていた段ボール箱を別の段ボール箱の上に載せた。息をついて手の埃(ほこり)を払い、室内を見回す。  今朝「今後のことは、また知
辛酸なめ子「電車のおじさん」第21回
 休日の昼下がり、カフェでお茶を飲んでいたら、隣の席で若い男女がスイーツを食べながら、小声で何か話していました。「パパがね……」と女子が声をひそめて話すのが玉恵の耳に入り、なんとなく気になって耳を傾け
◇長編小説◇里見 蘭「漂白」連載第112回
「中でもイケたじゃん」顔を近づけて声をかけると、恥ずかしそうに真っ赤な顔を手で覆って何度もまばたきしながら「うん」と熱っぽい声で認めた。ペニスを挿入した。萌愛の反応を見、痛みがないか確認し、挿入角度を
   1 「電話を切って部屋に戻って下さい。五分後に人が来ます」  機械的にゆっくりと、中森翼(なかもりつばさ)は告げた。阿久津慎(あくつしん)は訊(たず)ねた。 「どういう意味だ?」 「すみません。
◇長編小説◇藤谷 治「ニコデモ 風は思いのままに吹く」連載第4回
「かよ」市兵衛(いちべえ)は赤ん坊をおぶった女の人に声をかけた。「せがれだ」  かよは「判(わか)ってる」と頷き、正太郎(しょうたろう)に「疲れてるでしょう。荷物をおろして、ひと休みしたらいいよ」と言
深明寺商店街
  「なんだ、この唐揚げ。めちゃくちゃ旨え」  弁当箱の蓋を開けるなり、貴重な唐揚げの一つが横からかっ攫われた。  声を上げる間もなかった。それどころか、盗っ人が放った一言に、格技場で昼飯中だった剣道
◇長編小説◇里見 蘭「漂白」連載第111回
 鴇田は萌愛を仰向けにさせると、キスをした。さっきは感じなかった体温を感じた。萌愛の唇が柔らかくなっている。鴇田が唇に力を加えると自分から口を開いた。チャンネルが開いて精神と肉体がつながったのだ。  
    14 「どういうことですか!?」  声を上げ、みひろが席を立つと豆田は眉を寄せて背中を向けた。その前に回り込み、みひろはさらに訊ねた。 「室長に何があったんですか? 教えて下さい」 「僕にも、
◇長編小説◇里見 蘭「漂白」連載第110回
「萌愛ちゃんか。いい名前じゃん。トラウマを乗り越える方法、教えよっか?」 「……できるんですか?」 「できるよ」 「どうやって……?」食いついてきた。 「さっき言ったよな。嫌なこと思い出すと、その頃の